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#夢主
そら
255
みゅう

68
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リヴァイ、十六歳。
気づけば、〇〇と出会って一年以上が経っていた。
調査兵団の中で、〇〇は有名人だった。
東洋系の珍しい容姿。
光を受けると艶やかに見える黒髪。
よく笑う明るい性格。
そして何より――強い。
訓練成績も上位。
誰とでも分け隔てなく接する。
だから男女問わず人気があった。
食堂へ行けば誰かが隣に座りたがる。
廊下を歩けば声を掛けられる。
休日には訓練仲間に囲まれている。
最初の頃は気にならなかった。
正確には。
気にしないようにしていた。
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「〇〇!」
若い兵士が手を振る。
「おーい!」
〇〇も笑顔で手を振り返した。
その様子を遠くから見ていたリヴァイは眉をひそめる。
別に普通だ。
何もおかしくない。
〇〇は元々そういう奴だ。
誰にでも優しい。
なのに。
胸の奥が妙にざわつく。
面白くない。
理由は分からない。
分かりたくもなかった。
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「リヴァイ!」
聞き慣れた声。
振り向く。
〇〇が駆け寄ってくる。
それだけで機嫌が少し戻る。
そんな自分に気付いてさらに腹が立つ。
「見て見て!」
差し出された紙。
訓練評価だった。
「今回、剣術一位だった!」
嬉しそうな顔。
リヴァイは紙を見る。
そして小さく鼻を鳴らした。
「当然だろ」
「え?」
「お前、毎日誰よりも訓練してる」
一瞬きょとんとして。
〇〇は照れたように笑った。
「ありがとう」
その笑顔に。
心臓が変な音を立てた。
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十七歳になる頃には。
もう誤魔化せなくなっていた。
〇〇が好きだった。
好きで好きで仕方なかった。
会いたい。
話したい。
笑っていてほしい。
無事でいてほしい。
そして。
自分だけを見てほしい。
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その感情を自覚したのは。
ある休日だった。
中庭で休憩していた時。
〇〇が若い男性兵士と話していた。
楽しそうに。
笑いながら。
その兵士が何かを言う。
〇〇が肩を叩く。
二人で笑う。
それだけ。
それだけなのに。
胸の奥が黒く濁った。
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なんで笑ってる。
なんでそんな近い。
なんでお前なんだ。
なんで俺じゃない。
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そこで初めて理解した。
嫉妬だった。
醜い感情。
独占欲。
そして恋心。
仲間だからじゃない。
友人だからじゃない。
女として見ている。
特別な存在として。
誰よりも。
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「……くそ」
自分でも驚くほど低い声が漏れた。
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そして。
十八歳になる年の春。
事件は起きた。
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相手は有名な先輩兵士だった。
十八歳。
討伐数も多い。
実力者。
容姿も良い。
兵団内で人気がある男だった。
〇〇は以前から憧れていた。
「強くて格好いい先輩なんだよ」
そう笑っていたことを覚えている。
リヴァイはその時から気に入らなかった。
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ある日の夕方。
偶然見てしまった。
兵舎裏。
先輩兵士と〇〇。
二人きり。
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嫌な予感がした。
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「ずっと好きだった」
先輩の声。
リヴァイの体が固まる。
「付き合ってほしい」
世界が静かになった。
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〇〇は驚いていた。
顔を赤くしていた。
戸惑っていた。
そして。
少し照れながら笑った。
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「私でいいなら……」
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リヴァイの思考が止まった。
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「よろしくお願いします」
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終わった。
その一言で。
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二人が去った後も。
リヴァイはその場から動けなかった。
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何も言えなかった。
言えるわけがなかった。
告白なんてしていない。
想いを伝えたこともない。
ただ勝手に好きになって。
勝手に隣にいることに満足して。
勝手に特別だと思っていただけだ。
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権利なんてなかった。
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その夜。
兵舎の屋根に座る。
いつもの場所。
昔はここに〇〇が来た。
一緒に星を見た。
笑い合った。
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なのに。
今日は来ない。
当たり前だ。
恋人ができたのだから。
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胸が痛かった。
切り傷を受けたことも。
打撲をしたこともある。
だがこんな痛みは知らない。
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「……馬鹿か」
自嘲する。
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もっと早く言えばよかった。
もっと早く伝えればよかった。
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だが。
もう遅い。
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風が吹く。
目を閉じる。
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好きだった。
出会った頃から。
少しずつ。
気付けばどうしようもないほど。
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「……幸せになれ」
誰にも聞こえない声。
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その言葉だけは本心だった。
たとえ相手が自分じゃなくても。
〇〇が笑っているなら。
それでいい。
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そう思おうとした。
けれど。
胸の奥の独占欲は消えてくれなかった。
あの男に触れられる〇〇を想像するだけで。
吐き気がするほど苦しかった。
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初恋は。
あまりにも遅く。
そして残酷に終わった。
……はずだった。
リヴァイ自身がまだ知らないだけで。
〇〇もまた、この恋に迷い始めることを。
そして彼女の心の中に、いつからかリヴァイという存在が深く根付いていることを。
それはまだ、誰も知らない。
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