テラーノベル
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ワンルームの狭い部屋。
カーテンは閉め切られ、床には空になった薬のシートが散らばっている。
元貴はベッドの上で膝を抱え、ぼんやりと天井を見つめていた。
頭の中は、先ほど飲み込んだ錠剤のせいで、白く濁った霧がかかっている。
「……ねえ、若井。また音が大きくなってきた。雨の音が、僕の頭を叩くんだ」
隣でリンゴを剥いていた若井が、手を止めて元貴の額に触れる。
その手は少し震えていた。
「大丈夫だよ、元貴。
俺がここにいる。
……ほら、これ飲んだら楽になれるから」
若井が差し出したのは、また新しい錠剤と、少しのアルコール。
元貴はそれを、飴玉でも受け取るように無造作に口に放り込んだ。
「……若井は優しいね。
僕を壊してくれるのは、いつも若井だ」
元貴が虚ろな瞳で笑う。
その笑顔に、若井は歪んだ充足感を感じていた。
元貴が壊れれば壊れるほど、彼は自分なしでは生きられなくなる。それが、若井にとっての救いだった。
その時、ノックもなしにドアが開いた。
「……お邪魔するよ。
今日もひどい匂いだね、ここは」
涼ちゃんが、濡れた傘を立てかけて部屋に入ってくる。彼は若井の刺すような視線を無視して、元貴の枕元に腰を下ろした。
「元貴、顔色が悪いね。
若井に、また変なものを飲まされたの?」
涼ちゃんが元貴の頬を撫でる。
その指先だけが、異常に冷たい。
「……涼ちゃん。……助けて。
……若井が、僕をどこにも行かせてくれないんだ」
元貴が縋り付くように涼ちゃんの腕を掴む。それは、若井を焦らせるための、元貴なりの無意識な「遊び」だった。
若井の手に握られた果物ナイフが、小さく音を立てた。
「涼ちゃん。勝手に触るな。
元貴は今、寝なきゃいけないんだ」
「ふふ、怖いね。……でも元貴、君が本当に欲しいのは、安らぎじゃなくて『もっと深い闇』だろう?」
閉ざされた灰色の部屋の中で、3人の歪な愛が、ゆっくりと、確実に、泥沼のように溶け合い始めていた。
コメント
18件
歪んだ愛情大好きなんでありがとうございます!!!
あ、サイコーな予感しかしません