…教会で、静かに鐘が鳴る。
その鐘と同時に、俺のナイフを持った手が彼の首に振り落とされる。
そして、その者の首を落とそうとした。
…が、俺はその瞬間にナイフを投げ捨てる。
「マイキー、顔上げて!」
俺がそう言うと、マイキーは顔を上げた。
「どうしたんだ、タケミっち?」
俺はマイキーが謎に包まれている間に、マイキーを担ぎ上げた。
「うわっ!ちょ、ちょっと!タケミっち!?」
「マイキー、超わがまま言っていい?」
マイキーは「…うん。」と不思議そうに言ったのを聞いて、言った。
「俺、やっぱまだまだマイキーと生きていたい!」
俺は何気なくマイキーの顔を見ると、マイキーは「…うん!」と目を輝かせて言ってくれた。
――十年後。
「マイキー、早くして!こっちこっち!」
「ちょっと待ってろタケミっち!」
俺らはシャッターに手をかけて、思いっきりシャッターを開けた。
「…やっとできたね、バイク屋。」
「だな。」
俺らはそう言って見合うと、少しはにかんだ。
「あ、そうだ、タケミっち。」
マイキーは思い出したようにそう言うと、俺の手を引いてバイク庫へと行った。
「ちょっとバイク出すぞ。」
俺は「座っとけ」と言われたところに座って待っているのだが、本当に今、こうなってよかったなと心底思っていた。
カクちゃんは保育士やってて、明司家三人とワカくんとベンケイくんを混ぜて5人でチーズケーキ専門店、河田兄弟でラーメン店を営んでいて、パーちんくんとぺーやんくんで不動産屋。灰谷兄弟は世界で活躍するモデルだし、柴家三人も結構大きい衣類店。望月くんは斑目くんを拾って中華料理店をやっているとか。
「みんな出世したなぁ…。」
俺は携帯をスクロールしながらそう思った。
…まあ、俺とマイキーも近々バイク屋を始めるのだが。
「タケミっち、遅れた。」
マイキーはそう言って手を引いていた人の背中を押した。
「ほら、早く言いなって!ヒナちゃん!」
俺は相手が言い出すより先に立ってしまった。
「…ヒナ…!」
俺は無性に名前を呼びたくなってそう呼んだ。
ヒナは微笑んで、俺の名を呼んでくれた。
「…ひさしぶり、タケミチくん。」
「はいはーい!感動の最中すまないけど、もっと驚かせるからな!」
そう言っていろんなところからひょっこり出てきたのは、ドラケンくんに半間くん、溝中五人衆の面々だった。
「俺の人脈の勝ちだ!」
マイキーはそう言って胸を張る。
「…すごいね。」
俺はそういって苦笑いを浮かべる。
ここまでくるともう怖い。
だけど、嬉しいのには変わりなかった。
その後、いろいろ話して分かったのだが、ドラケンくんと半間くんは孤児院を経営しており、マコトと山岸で農家(なぜ農家?)、アッくんはずっと夢だった美容師に、タクヤとヒナが小学校の先生になったそうだ。
「孤児院も楽じゃねえぞ?ま、あのスラム街よりマシだがな。」
半間くんはそう言って少し笑った。
「学校の先生も先生で大変だけどね…。今は二人でおんなじ職場だよ。」
ヒナがそう言って「ね、タクヤ先生!」というと「ここまでは勘弁してくれ…。」とタクヤが呟いた。
ちなみに他四人は予定が立て込んでいるらしく、もう帰ってしまった。
「でも、すごいね。みんな。」
「ま、俺らも明日からバイク屋経営すっけどな~。」
「現実を突きつけるなマイキー!!!!!!」
そう言ってみんなで笑う。
ただこの時間が幸せだった。
何分か経った頃、ヒナが立ち上がって俺の前へと来た。
「どうしたの?ヒナ。」
ヒナは顔を赤らめながら俺に言ってくれた。
「…私と…結婚してください!」
「…ま、これが目的なんだけどさ。」
マイキーがボソッと呟いたので、俺も一気に自覚が湧き、頬が赤くなる。
そして、全力の笑顔で答えた。
「こんな俺で良ければ、よろしくお願いします!」
あの日から数年。
今は嫁さん…ヒナと俺ら公認で住んでるマイキーと子供4人と仲良く過ごしている。
子どもは実子1人、養子3人だ。
ちなみに、男の子3人(実子と養子2人)と女の子一人。
実子が初冬(ういふゆ)で、養子の男子が龍一(りゅういち)と青葉(あおば)、女子が赤梨(あかり)だ。
「初冬!洗濯物被らない!ちょ、タオル返しなさい!」
「よし、龍一、青葉、バイク見に行くか!」
「赤梨、お母さん手伝ってあげよう。」
「お父さん、ごめん、今宿題中。」
「あ、それはごめん。」
俺らの生活はハチャメチャドタバタだが、なかなかに楽しい。
稼ぎは決していいとは言えないかもしれないが、楽しいかと聞かれたら全力で楽しいと答える。
俺はふと空を見る。
空はどこまでも青かった。
「さ、ヒナを手伝いますか…。初冬~!こっちこい!」
「ぱぱ!」
「そうだぞ~!ほら!」
今は、自然と笑みがこぼれた。
HAPPY END 「幸せな生活」