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十二章目
「おいおい…。放課後の校舎で何をガタガタ騒いでやがる、クソガキども」
廊下の向こうから、白衣を翻し、気だるそうにパイプをくわえた男が歩いてきた。
高等部の教師であり、その正体は七不思議の五番「16時の書庫』一ー土籠先生だった。
耳の尖った異形の影をちらつかせながら、土籠先生は眉をひそめて私たちの集団を睨みつける。
「生徒会長に着井、源の弟、それに八尋に赤根。おまけにそこの七番(花子ん)まで….・。揃いも揃って、女子トイレの次は教室で大乱闘か?」「あ、土籠先生!」「五番、タイミング悪いよー」
生徒たちや花子くんがそれぞれの反応を見せる中、土籠先生はハア、と深いため息をついた。
「いいからさっさと解散しやがれ。じゃないと全員書庫に引きずり込んで……」そこまで言って、土籠先生の言葉がピタリと止まった。
先生の鋭い切れ味が自慢の瞳が、寧々ちゃんと葵ちゃんの後ろから、おずおずと顔を出した私の姿を捉えたからだ。
夕日の残光に照らされて、ぼんやりと透き通るような薄青の髪。
黒、左目が白という、この世の理(ことわり)から外れた妖しくも美しいオッドアイ。
今にも目の前で消えてしまいそうな、この世の者とは思えないほどい私の姿。
「……つ」
土籠先生の口から、パイプがポロリと床に落ちて乾いた音を立てた。
蜘蛛の怪異として、そして『16時の庫』の管理人として、誰よりも「人間の生と死の記録(未来)」を見てきたはずの彼の脳内に、凄まじい衝撃が走る。
彼の心臓が、人間の教師を演じている時には決して鳴らないはずのテンポで、ドクン、と大きく跳ね上がった。
「(なんだ、このガキは……。今にも消えちまいそうなのに、目が離せねえ……。俺の書庫のどこを探したって、こんなに綺麗な未来(きろく)は載っていやしねえ…….つ)」一目見た瞬間に、土籠先生の心の中の何かが音を立てて、一気に崩れ落ちていく。
それは、何百年も生きてきた大人の怪異が、たった一人の少女に、理屈抜きで完全に狂わされてしまった瞬間だった。
「…..あの、先生……?」
私が不思談そうに首を傾げ、薄青い髪を揺らす。手の月のブレスレットがシャラリと切なく鳴った。
その音でハッと我に返った土籠先生は、顔に手を当ててわさとらしく顔を背けた。けれど、尖った耳の先まで、真っ赤に染まっているのは隠せていない。
「…..チッ。なんだ、そのツラは…..反則だる」
土籠先生はボソッと毒づくと、白衣をバサリと翻し、難先輩や花子くんの間に割り込んで、私の前に大きな身体で立ちはだかった。
「おい、お前ら。この子は霊力が強すぎて、今にも彼岸(あっち)に引っ張られそうじゃねえか。そんなに大人数で囲んで、これ以上怯えさせるんじゃねえよ」
土籠先生は私を自分の背中にすっぽりと隠すと、背中から生えた味の腕を威嚇するように小さく動かした。
「この子は俺が、五番の境界(書庫)で預かる。誰の未来(ほん)にも触れさせねえし、誰の手にも渡さねえよ。俺のそばが、一番安全だ」「ちょっと五番!!先生の職権乱用だよ!!」花子くんが包丁を構えて怒鳴り声をあげる。
「先生だろうが悪霊の味方なら容赦しねえ!」と光くんが雷を纏わせ、輝先輩も「怪異の分際で、僕の獲物に手を出さないでくれますか?」と笑顔のまままじい霊力を放つ。
茜くんも「葵ちゃん以外に鼻の下伸ばすな!」と怒り、寧々ちゃんと葵ちゃんも「先生、不純異性
交遊です!」と大抗議。
蜂蜜きな子
16
#犬
ここと🌹🫶 @低浮
203
みみ
49
生前からの双子、現世の仲間たち、そしてついに大人の怪異・土籠先生まで巻き込んだ、泡沫路薬ちゃんを巡る「全員からの激しすぎる愛のドミノ倒し」。
手首の三日月は、愛されすぎて逃げ場のない私の運命を祝福するように、夕闇の学園の中で、いつまでも甘く、切なく鳴り響いていたーー。
コメント
1件
おおっ、五番・土籠先生がまさかの一目惚れ……! ヤバい、あの「反則だ」は反則級に好き。しかも「この子は俺が預かる」宣言で一気に大人の怪異まで巻き込む全面戦争突入って、主人公ちゃんの愛されパワーがえぐいわ。月光のブレスレットの描写で雰囲気もちゃんと出てて、コメディとシリアスの塩梅が絶妙すぎる。次が待ち遠しい🔥