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蜂蜜きな子
16
#犬
ここと🌹🫶 @低浮
203
みみ
49
13章目行きます。
「…..ここは、どこ……?」
かもめ学園の旧校舎。夕暮れの中、気がつくと私は見覚えのない古びた階段の前に立っていた。
いつも私を全方位から守ってくれる花子くんや光くん、寧々ちゃんたちの姿がどこにもない。一人きりの空間。霊力の強い私は、この空間全体から放たれる圧倒的な怪異の気配に、目を覚えた。
「4段目を踏んだら、死者の世界に引きずり込まれる』学園に伝わる、七不思議の二番ーー『ミサキ階段』の噂。
私がそれに気づいた時には、すでに遅かった。足元がぐにゃりと歪み、視界が真っ白な光に包まれる。
次に目を開けた時、そこは無数のハサミが飛び交い、不気味な人形たちが転がる異様な空間だった。階段の頂上、大きな鳥居の前に、和服を纏った美しい狐の怪異ーーヤコが、冷ややかな瞳で私を見下ろしていた。
「あら、また迷い込んできたのね、不躾な人間の子供が。……私のミサキの代わりに、あんたのその綺麗な体、バラバラにして人形のパーツにしてあげる」ヤコは冷酷に微笑み、巨大なハサミをシャキリと鳴らした。
生前、大切な人を失って狂ってしまった彼女にとって、迷い込んできた人間など、ただの人形の材料に過ぎないはずだった。
けれど、私が一歩前に踏み出し、薄青い髪を不安げに揺らしたその瞬間。
黒と白に妖しく、けれどあまりにも美しく輝くオッドアイが、まっすぐにヤコを捉えた。
「……つ!?」
ヤコの手が、ピタリと止まる。ハサミが床に落ちて、甲高いうねりをあげた。
今にも夕暮れの光に溶けて、すうっと消えてしまいそうな私のい輪郭。
霊力の強さゆえに、この世の者ではないような危うさを纏う姿。
ヤコの脳裏に、凄まじい衝撃が走った。
「(な、何…..この子…..。今にも消えちゃいそう…..。私のハサミで触れたら、パーツになる前に、そのまま空気の中に溶けてなくなっちゃう……つ!?)」冷酷だったヤコの心の中のドミノが、音を立てて崩れ落ちていく。
それは、誰よりも「失うことの悲しみ」を知っている彼女だからこそ、今にも消えそうな私の美しさに、一瞬で狂おしいほどの愛着と守護欲を抱いてしまった瞬間だった。
「…..あの、狐さん。…..私を、バラバラにするの?」
少し怯えながら尋ね、左手首の月のブレスレットを愛おしそうに握りしめる。
その声を聞いた瞬間、ヤコは顔を真っ赤にして、慌ててハサミを後ろに隠した。
「ば、バラバラになんてするわけないじゃない、バカッ!!誰がそんな残酷なことするのよ!!!」「え……?」
「あんた、今にも消えそうじゃないの!そんな細い体でこんな物騒な場所に一人で来るなんて、どうかしてるわ!ほら、こっちに来なさい!」
ヤコはツンツンと怒ったような口調を装いながらも、私の元へ駆け寄ると、壊れ物を扱うようにそっと私の体を抱きしめた。狐の怪異である彼女の身体は、驚くほどもふもふとしていて温かい。
「私のミサキの代わりに…..ううん、ミサキ以上に、あんたをここで可愛がってあげる。このミサキ階段(わたしの世界)にいれば、誰もあんたを傷つけられないし、消えさせたりしないわ」
ヤコが私の薄青い髪を優しく梳かし、独占欲に満ちた目で私を見つめる。
「ーー露葉ちゃんツ!!!今助けるぞ!!!』「そこをどきなよ、二番!!露葉を返しなよ!!」
その時、空間を切り裂いて、光くんの霊力の雷と、花子くんの黒い包丁が飛び込んできた。
けれどヤコは、私を自分の和服の袖の中にぎゅっと隠して、男の子たちを鋭い狐の目で睨みつけた。
「うるさいわね、この悪霊にガキ!この子は私の人形=ーううん、私の大切な宝物よ!あんたたちみたいな荒っぽい男どもに、この儚い子を返してあげるわけないじゃないのッ!」
ミサキ階段の世界で、ヤコさんという新たな美しい怪異に溺愛され、囲い込まれそうになる私。
手首の月のブレスレットは、さらに激化していく愛の嵐を予感させるように、シャラリと切なく鳴り響いていたーー。
コメント
1件
うわあ、今回もすごかった…!ヤコさんのあの、一瞬で掌返しする感じ、もう完全に「沼落ち」ってやつだよね(笑)。最初はバラバラにしようとしてたのに、露葉ちゃんの儚い美しさに一発でやられて、しかも「私が守る!」ってなり始めた瞬間のギャップがたまらなかったなあ。花子くんと光くんが駆けつけたところも熱かったけど、ヤコさんの「この子は私の宝物」宣言にはちょっと胸がきゅんとしたよ。これからどうなるんだろう…続きが気になる!