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「いるま?今日も行くの?」
「あゝ、もちろん」
最近俺らのお気に入りの場所。そこが旧校舎の図書室だった。少しおんぼろな場所。けど二人でいるとどんな場所より安心できた。
旧校舎までの道のりを二人で歩く。
いるまとは中学生からの親友で。高校生になった今でも仲良しだ。
そんな彼に恋をしてるのは、まだ誰にも言えていない。
振られてこの関係が壊れるくらいなら、バカやれる「親友」のポジションのままでいい。
旧校舎へ向かう廊下、一歩ごとに上履きの音が重なる。俺の歩幅に合わせるようにゆっくり歩くいるまの横顔を、バレないように盗み見る。ただの親友。そう言い聞かせるたびに、左胸の奥がぎゅっと痛んだ。
図書室の扉を開けて、いるまは当たり前のように俺を先に通した。
「ありがと」
「別に。お前のためならいいよ」
俺はいつもの指定席に座る。
温かい夕日がいい感じにあたる席。いるまは当たり前のように、俺の隣に座る。
「何読むの?とってきてやろうか?」
「ありがと、いるま。じゃあおススメで」
「ん、わかった」
いるまが席を立つ本棚の方へ歩く。
その背中をただただ眺めていた。こんな時間がずっと続けばいいのに。
けどいつかはお別れがくるもの。
高望みしちゃ、ダメだ。
数分後、いるまが本を二冊持ってこちらに帰ってきた。
「ん、気に入るかわからないけど」
「ううん、いるまなら大丈夫でしょ」
受け取った本の表紙からは、いるまの柔軟剤のような、落ち着く匂いがした。
……ただの本なのに、彼の手が触れていたと思うだけで、指先から熱が伝わってくる気がして。俺は慌てて、本を開いて顔を隠した。
「気に入った?」
「え、あ、うん」
「そっか、よかった」
安心するように微笑むいるま。この笑顔が俺のお気に入り。
自分にしか見せない、って今は自惚れてるけど、きっと変わってく。
いるまも自分が持ってきた本を開いた。
俺は持ってきてもらった本の文字よりも、ページをめくるいるまの手を見る。
あの手で頭をなでられて、抱き寄せられて、耳元で大好き、なんて言われたらどんなにうれしいことだろうか。
…って、さすがに俺きもいか…。
自分を律するように本の文字を追いなおす。
……しん、と静まり返った室内で、ページをめくる音だけが不自然に響く。
隣に座るいるまの体温が、冬の夕暮れには少し熱すぎるくらいに伝わってきて、俺は本を持つ手にぎゅっと力を込めた。
「なつ、」
「え、な、なに?」
いるまに優しく声を掛けられ、本から目を離す。いるまの顔が至近距離にあった。
「んっ、ちかっ、」
「お前、さっきからさっきから1ページも進んでねーぞ」
「え、あ、ごめん。ちょっと考え事してて。」
「疲れてるんだろ、どうせ。昨日も遅くまで勉強頑張ってたの?少しは休憩しろっていったよな?」
「…ごめんなさい」
でも、今からでも勉強頑張らないと、いるまと同じ大学行けないから。
どうしてもいるまと同じ高校に行きたくて、わがままいって志望した高校。
先生からも親からも諦めなさい、って言われたけど、死ぬ気で努力して、なんとか取れた合格。
予習復習しないと勉強はついていけないし、夜遅くまで勉強してるのが今の現状。
「いいよ。なつが頑張ってるの知ってるもん。でも倒れられたら困る。俺が見守ってあげるから、少しぐらい寝ろ」
「え、でも..」
せっかくいるまと居れる大切な時間なのに…。
「これは命令。寝ないとキスするから」
「えぇ、」
「だから、ほら」
いるまに抱き寄せられると、張り詰めていた糸がふっと切れた。
……悔しい。頑張らなきゃいけないのに、彼の腕の中があんまりにも温かくて、心地よくて。俺は小さく鼻をすすって、彼のブレザーに顔を埋めた。
「んんっ、」
あれ、俺どうして..、あ、いるまに寝かしてもらったんだった。
重い瞼を開ける。そこには、
「お、起きた?ぐっすり寝てたな。おはよ、なつ」
いるまの顔が真上にあった。頭は少し硬いけど温かいなにかの上に載っている。
体にはいるまのブレザーがかけられていた。 少し左側を見ると机の裏。
状況を察するに、俺、いるまに膝枕されてる⁉︎
「わ、ごめん、重かっただろ!?」
俺は顔が火を噴くほど熱くなるのを感じて、慌てて起き上がろうとした。けれど、肩を大きな手でグッと抑えられ、再び膝の上に戻される。
「大丈夫。かわいい寝顔間近でみれて、役得だったよ」
「え、なにそれ、ばかなの?」
「バカなのはどっちかな?男の前で無防備に寝て。俺じゃなかったら襲われてたかもな。」
「だって、それは、」
「はいはい。俺のこと信頼してるから、だろ?でも他にもあるんじゃね?」
いるまの瞳が、夕闇の中でいつもより深く、熱く俺を射抜いている。逃げたいのに、離れたくない。心臓の音が図書室の静寂を壊しそうで、俺は震える声で精一杯の強がりを絞り出した。
「…いい加減にしろよ。お前、ほんと、そういう冗談きついから。」
俺の気持ちも知らないくせに。なに期待させるようなことばっか言うの?
「冗談なわけないんだけど。」
「え?」
「本気だから。てか普通の親友なら俺の膝の上にのせたりしない。お前だからしたんだよ。」
「…っ、」
「お前が勉強頑張ってるのは、俺と同じ大学行きたいからだろ」
心臓が跳ねた。見透かされていた。
「……だったら、何。」
「……可愛いなって思ってただけ。お前をそこまで必死にさせるのが、俺でよかった。」
「そうかよ」
「うん。だからさ、大学もその先もずっと、俺の隣にいて。」
「考えてやる」
「もう、素直じゃないんだから。でも、そういうとこが好きだよ。」
「黙れよ、」
……そう言って、俺はいるまのブレザーを突き返した。
でも、立ち上がろうとした腰が、再び強引に引き戻される。
「……離せよ、いるま」
「離さない。お前が俺のものになるって言うまで、一生離してやんねーよ」
真剣な瞳に見つめられ、恥ずかしくなって顔をそらす。
「わかったよ。仕方ないから一緒にいてやる」
「ん、今はそれでいいかな。及第点」
「うるさい」
「ほら、下校時刻すぎたし、帰ろ」
いるまから差し出された手を取る。その手は自然と恋人繋ぎになった。
読んでいた本を片付け電気を消し、図書室を後にする。
校舎をバックに、家に帰る。隣にいるいるまは、別にいつもと変わらないのに、恥ずかしくてみれなかった。
「きょ、今日さ、親いないの。うちくる?映画とかみたい、かも」
「ん、いいよ。最初からその気。」
繋いでる手にぎゅっと力が込められた。
きっとこれから一生こいつの檻から出られない。
けど、それでいいと思った。
こいつの隣にいることが俺の幸せだから。
~end~
リマレンス
↪︎恋に落ちて貴方のことで頭がいっぱい
コメント
2件
もうっ…!読んでる間ずっとニヤニヤが止まらなかったんだけど!?😭💕 旧校舎の図書室、夕日、本の匂い…全部がエモすぎるし、いるまの「寝ないとキスするから」からの膝枕展開は反則だよ!!「お前のためならいいよ」って自然に言えるのズルすぎる…。でもなつの「親友のままがいい」って切ない気持ちもめっちゃわかる…。最後の「一生檻から出られない」が最高にしびれたよ…!続きも絶対読むね!🌟