No.0910 【恋衣の魔女】
愛の前には、性別も、ましてや種族もなにもかも些細な壁に過ぎない。
〈説明〉
No.0910は、性別はおろか姿形が全て違っているような生命体でも、若しくは無機物だろうと変わらず恋愛感情を抱きます。
〈補遺1: 発見経緯〉
No.0910は20☓☓年9月22日に発見されました。
彼女の知人が、彼女の異常性を不審に思い『天使の箱庭』に通報したため職員が調査に赴いたところ、No.0910の家から日記と大量の■■を発見し、検証実験を経て異常存在として認定されました。
以下は、彼女の家から発見されたNo.1079のものと見られる日記の一部抜粋です。
20☓☓/03/08
11歳の夏、初めて出会ったあの子は余りにも儚げで、童心の少女に過ぎなかった私には形容しがたい何かを心の真ん中に植え付けた。
月日と共に少しづつ霞んでくる幼少の記憶の中でもあの光景だけは今でも焼き付いている。
あの時あの子に声を掛けなければ、きっとこんなバケモノになりさがり、悩み悶える日々を送らずに済んだだろう。
…確かにあの時、私は願った。今までに無いくらい一心に願った。
____自由に恋をしたい。と_
20☓☓/07/07
今日は七夕。織姫と彦星が再会する日。私のあの子への想いが恋慕だと気付いたのは何時からだっただろうか。
私はあの日、一度死んだ。もうあの子の前に現れることは出来ない。
風の噂で聞いたことがあった“魔女”に、まさか私がなるとは思いもしなかった。
魔女になって悪い事だらけだ。あの子とお喋りも出来ないし、どうやら私は恋愛対象の幅が広がってしまって惚れやすくなったみたいだ。
…私は、こんな結末を望んでいたんじゃない。
20☓☓/09/20
どうして?何で?何で?なんで?なんでなんで?
誰、ソイツ。何、その表情。
どうして私以外のヤツと付き合ってるの?
何で私以外のヤツにそんな表情を見せるの?
…ユルサナイ
20☓☓/09/21
きっと、私が居なくなっちゃって他のヤツに目移りしちゃったんだね。悪い子だなぁ。
でも仕方ないよね。寂しい思いさせちゃったよね。でも大丈夫だよ。アイツはもう私が■してあげたし、もう二度と離れないように、寂しくないように■してあげたから。私のコイビト達に加えてあげるね。
愛してる。
今まで我慢してきたセリフだもん。何回言っても言い足りない。
愛してる。愛してる。あいしてる。アイシテル、アイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル
以下省略します。
〈補遺2:プロフィール〉
No.0910
氏 名 ミア
享 年 11歳
生年月日 20☓☓/09/10
星 座 乙女座
血 液 型 A型
収 容 日 20☓☓/09/22
概 要
この世の万物が恋愛対象となる魔女。
生前に好意を寄せていた少女を殺害。その後に『天使の箱庭』にて保護される。
自宅には彼女が今までに恋心を抱いた人の首だけがホルマリン漬けにされて棚に陳列されていた。
この事から、かなり過激な人物と見受けられる。
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