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「つまんねぇウソなんか、いらねんだよっ!」
睨みつけてくる目の鋭さに、思わず怯んでしまいそうにもなる。
「カイを移籍させようとか……どういうつもりなんだよ?」
「……カイは、あなたに飼い殺しになんか、させない……!」
問い詰めるシュウを、強くはねつける。
「口のきき方に、気をつけろっ!」
脇腹が蹴り付けられて、痛みに咳き込みながら、
「恐くない…あなたなんか……」
上目にその顔を見据えて口にすると、
「……そんな軽口は、すぐに叩けなくしてやるから……」
シュウは蔑むような下卑《げび》た笑いを浮かべた。
「……あんたの思惑通りになんか、ことが進むと思うなよ…」
倒された椅子が起こされると、
「……話はどこまで進んでるのか、教えてもらおうか……」
シュウが顔を間近に迫らせた。
彼はまだ、移籍の話が本決まりになりつつあることには、気づいてないんだと思う。
だったら、もうこのまま知らないふりをするしかないと、
「知らない何も……」
と、シュウから目を逸らし、横を向いた。
「この俺を、バカにすんなよ!」
シュウが大声で怒鳴り、
「あんたさぁ…黙ってりゃ、なんとかなると思ってんだろ…」
そむけた私の顔を片手に鷲掴んだ。
「縛られて、抵抗もできないくせに、えらそうに俺に逆らうんじゃねぇっ!」
再び罵声が浴びせられる。
その声の大きさに、耳にキーンというような不快な金属音が響く。
「……俺の忠告を、無視しやがって……」
言いながらシュウが、ポケットからおもむろにバタフライナイフを取り出した。
「おもしろくないんだよ……あんたも、カイも……この俺に、逆らいやがって……」
ナイフの切っ先を、私の喉元に突きつけて、
「……俺に、素直に従っていればいいものを……」
低く凄むシュウに、
「……誰でもが、あなたの言いなりになるなんて、思わないでよ……」
カイのためにも逃げるわけにはいかないと、引くことなくシュウを睨み返した──。