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「……。……その時は……」と、口をつぐむ彼女に、「……答えてください」と、詰め寄った。
「……その時には……少しは、感じたけれど……」
「……感じたのなら、」
どうしてだか、溢れそうにもなる涙に言葉を切り、
「愛情が、そこにあったとは思わないのですか?」
感情を抑え込んで、敢えて淡々と訊いた。
「……愛なんかなくても、抱けるはずです、あなたなら……」
「そう…ですか」
抑え込めない昂りを誤魔化すように重ねた唇を、そっと離して、
「君は、私をそんな風に見ていられるのですね……」
目を伏せた。もはや滲み出す涙を抑えられそうにもなかった。
「……いいでしょう。あなたがそう見ているのなら、それも正しい私の姿のはずですから……」
自らの気を逸らそうと、ワイシャツのボタンに手をかけ首元まできっちりと留めて、
「……あなたには、まだ必要なようですね……」
平静を装って口にした。
「必要って……何が、ですか…?」
「……私を、知ること……」
──知ってほしい。女性に対してそんな風に思ったことは、初めてだった。
「……知って、どうするんですか?」
「……どうするのかなど、今はどうでもいいことじゃないですか…」
自身でもよくはわかっていないことを聞き返されて、苛立ちだけが煽られる。
「……私も、まだあなたを、知る必要がありますから……」
こんなにも感情を掻き立てられたようなことはなく、もっと彼女のことも知りたいと感じた。
「知ったって、どうにも……」
彼女は私の何を見て、そして何を知っているんだろうかと……もしかしたら、自分自身でさえも知り得ないことを知っているのではないかと思いつつ、
「……興味、です」
自らに納得を付けようと、一言を吐いた。
「……この私を、なぜ好きにならないのか。……なぜ、身体を開いておいて、心を開かないのか……」
自問自答をするかのようにも話して、
「……私に落ちない女性は、単純に興味対象です……」
額に落ちた髪を片手で掻き上げて、
胸の奥底に訳もわからずに不意に生じた感じたこともない思いを、あくまで興味として片付けてしまおうとした──。