昼休みになって図書館に行こうと思っていたら
「伊藤くーん」
後ろから声をかけられた
「図書館に行くの?」
「うん。」
「私も着いていっていい?」
「いいけど。」
「やった。おすすめの本教えて」
「うん。」
本当は廊下だって松田さんと歩きたくない。こんな平凡な僕が学校で誰もが知ってる松田さんが歩いてるところ似合わないからだ。
「伊藤くんはなんで図書館好き?」
「静かだから」
「伊藤くん」
「はい」
「なんか、私と喋るの嫌?」
「そんなことない」
「口数少なくない?」
「元からだから」
「そっかぁー」
松田さんと喋ってたら誰でも緊張して口数少なくなるだろ!と言ってやりたかったが、大声を出す訳にも行かないのでやめておいた。松田さんと僕が図書館で喋ってるところを見られてたりしてたら終わりだ。学校中の噂になって学校に居られなくなる。松田さんと喋ってるところを誰かに見られてないことを祈るしかない。
「伊藤くんのおすすめの本ある?」
「……………」
「どしたの?考え事?」
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してて」
「おすすめの本かぁ…これとか面白かったよ」
「わかった!読んでみるね!」
「もうチャイム鳴るし、そろそろ教室戻らないと」
「あっ!ほんとだ。戻ろっか」
授業は全然集中できなかった。図書館に居るところを見られていないかという不安と松田さんはなぜ平凡な僕に話しかけてくるんだろうという疑問が頭の中で渦になって集中することが出来なかった。松田さんは学校の男子全員に告白されてるレベルだし、彼氏の1人くらいは居るだろう。僕なんか教室の隅っこで本を読んでるだけの陰キャだぞ?ただ本を知りたいから話しかけてるだけなのか。ほんとによく分からない変人だ。
静かに音楽を聴きながら、いつもの変わらない景色を見ながらゆっくりと歩いていく。これが僕の日常だ。一緒に帰る人なんていないし、むしろ1人の方が楽だからありがたいと言ってもいいだろう。
「伊藤くーん」
後ろから声をかけられてる気がするが、違う伊藤くんだろう。
「伊藤くんっ!」
「うわぁ!」
「あ、ごめん。びっくりさせちゃった?」
急に後ろから肩を叩かれた。びっくりしない人はいるのだろうか。
「ごめんね。一緒に帰りたいなって思って」
「あ、そうなんだ。」
「一緒に帰っても大丈夫?」
「うん。いいよ」
さすがに断ったら申し訳ないし、断りづらい雰囲気だし、本当は目立つから一緒に帰りたくなかったけどしょうがない。
「いつも一人で帰ってるの?」
「うん」
「そうなんだー。」
「あ、あのさ」
「ん?」
「なんで僕と一緒にいるの?」
「え?それは一緒に居たくないってこと?」
「あ、いや、そうじゃなくて。その…松田さんて学校中の人からモテてるから…僕なんかと一緒にいて大丈夫なのかなって思って」
「全然大丈夫だよー、むしろ私が一緒にいる感じだし」
「その…みんなの噂になっちゃったりしない?」
「大丈夫、大丈夫。私彼氏いないから」
「えっ?いないの?」
「え、もしかして居ると思ってた?」
「そりゃ、一人や二人はいるかと…」
「いないよー、私告白全部断ってるから」
「そうなんだ」
松田さんは彼氏いないんだ。てっきりいるもんだと思ってた。彼氏いないんだ…あんなに告白されてんのに…全部断ってる。なんか理由とかあんのかな…松田さんはすごく綺麗だし、かわいいし、正直惚れない男子はいないと思う。
「それじゃあ、私こっちだから」
「う、うん」
「あ!そうだ。連絡先交換しない?」
「え?」
「連絡先!いつでも連絡できるようにさ」
「わかった。」
松田さんと連絡先交換!?そんなことをしていいのか…僕は学校中の男子から敵に回されるのではないか
「それじゃあね〜」
「また明日…」
コメント
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松田さん不思議な人、、🤔 続き待ってます!!✨