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#ハッピーエンド
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叫んだ後、慌てて岩窟の中へと戻っていくアスタロト。
レイブは言い付かった通り、揃って顔面周辺から血を流している豚とトカゲ、いやペトラとギレスラを岩窟の入り口から引き摺り、少し離れた岩陰に安置、いや静かに横たえたのである。
自分より数段大きな仲間達の顔を覗き込んだレイブは直ぐに異常に気が付いた。
ギレスラ、ペトラともに特徴となっている角、ギレスラは額から縦に伸びた二本の尖角、ペトラは本来猪には生えない筈の即頭部から覗いた巨大な巻き角が、揃って根元から忽然と消え去っており、それらが元々有った筈の場所の肉が抉れ両者の顔面を血で濡らしていたのである。
少し観察しただけで重症に見える二頭であったが、痛がったりする素振りも無くじっとしたまま身動ぎ一つしていない。
それだけでなく、耳を済ませても呼吸音すら聞こえない様はまるで死んでしまっているかのようだ。
レイブは二頭の角が有った場所に手を伸ばすと、誰に言うでもなく心中で祈るのであった。
――――死なないで……
と……
レイブにはペトラやラマスの様な回復系のスキルは無い。
それは先程まで何度も繰り返していた魔石への詠唱でも明らかな筈であった。
しかし、祈りと呼応するように二頭の体は光に包まれ、流れていた血もピタリと止まったのである。
止まったままに見えた呼吸も通常の物に戻り、スヤスヤと寝息を立て始めたではないか。
「え、嘘…… あれでも…… 確か昔もこんな事が有ったような? いつだったか? あの時もここ、岩山の岩窟で…… えっと……」
『我が君! もう持ちませんっ! レイブ殿たちを連れてお逃げ下さいっ!』
『馬鹿を言うなっ! 我に任せてお前こそ逃げよっ!』
「っ!」
遥か昔、子供の頃に経験した事に思いを馳せた瞬間、岩窟の入り口から聞こえた怒声。
反射的にそちらに駆けつけたレイブの目には、目に見えるほど濃密に張られた『反射』の結界と、アスタロトを守るように洞窟の奥に向けて何かの波動を放出し続けるテューポーンの姿が映るのであった。
「なっ! 一体なんでこんなっ!」
思いもしない景色に漏れたレイブの声に返したのはテューポーンである。
『レイブ殿! この洞窟の奥にいる何者かが魔力を吸収しているのです! 私が押さえている間に我が君を、アスタロト様を連れてお逃げ下さいっ!』
「え! いや一緒に逃げようよ、テューポーンさんも一緒にっ!」
『私はどうやらここまでのようです、なに後悔はありません、尊い我が君の盾となって逝けるのですからね、満足ですよ』
『馬鹿を言うな! お前ほどの魔王が消え去る事など有りはしない! 真核が再びお前を再生させてくれるわ!』
『ふふふ、すみません…… 今放出しているのが私の真核を使ってのエネルギーでして、ふふ……』
『なっ!』
言っている間にもテューポーンの姿は時折半透明に透け、傍目にも魔力が枯渇して弱っている事が窺い知れるのであった。