〘 🍵seed 〙
🍵「……はぁ、」
部屋に散々散らばった画材に昔の絵。
怠さもありながらも片付けを始める。いつまでも汚いままでいたら叔母さんバレた時にやばいからね。
元あった所に丁寧に戻し、まるで最初から散らかってませんでしたよ。みたいな感じまでに戻した。
片付けた後、画材等を片付けた本棚から参考書やノート。教科書も手に取り、沢山付箋が貼っている中からページを開き見る。
ノートに書き込んでいると、ガチャりと音がして叔母さんが入ってきた。
叔母さん「ねぇ🍵。」
🍵「なんでしょう、っ?」
叔母さん「貴方の大学なんだけど……」
叔母さんはどれも受かる確率が難しい大学のチラシだった。
今の勉強量。勉強の質じゃきっと間に合わないような……。
本当に勉強に才能がある人しか受からなそうな大学ばかり。
けど、俺にだって行きたい大学があった。
淡々と話し続ける叔母さんに対して、俺は少しぎこちない口を動かして叔母さんに言った。
🍵「ぁ、ぉれ、美術に関する大学に行きたいんだけd__」
*パァッン*
行きたい大学。自分の意見を言った時、叔母さんに頬を殴られた。
朝殴られてまだ痛みもあまり引いていない頬にまた一撃が入ってひりひりする。
叔母さんの顔はとても暗く、狂っていた。
暗い顔をしていた叔母さんは微笑みながら、俺に語り掛けてきた。
叔母さん「ねぇ🍵。ここに行きましょ?」
叔母さん「🍵ならきっと行けるから。ね?」(微笑
🍵「……ぅ、うんっ、」(微笑
🍵「俺、頑張るねッ、」
叔母さん「流石ね🍵っ!!」
叔母さん「じゃあもっと勉強時間を増やして頑張ってね。」
🍵「うん、」
行きたくもない大学に行かせられて何が楽しいんだろうか。
嫌気がさしながらも、止めていたシャーペンを動かし始めた。
俺の頬からはいつの間にか一筋のキラリと光る物が伝っていた。
〘 📢seed 〙
📢「ぃ”ッてて……」
今日も今日とて同級生に殴られ蹴られで疲労困憊。
ってな訳で、同級生につけられた傷を手当してたんだけど………背中は届かないもんだから🍵にやって貰おうと、🍵の部屋まで向かった。
🌸達にはまだ話していないし、むしろ話したくない気持ちの方が段々と膨らんでいた。
歩く度に軋む床の音が静かな廊下に反響する。
真っ暗な空は少し月の光を得て明るく輝いている。その光は、廊下まで広がっている。
🍵の部屋の前につき、ノックする。
📢「🍵ー。入っていいか〜?」
🍵「あッ、うんッ!全然いいよッ!」
📢「………」
明らかに焦ったように思える声色だった。
不審に思いながらも、ドアを開ける。
🍵の机には俺にだって分からないような参考書にノート。教科書が散らかっていた。
よく見ると🍵の目尻はちょっと赤く染まっていて、泣いたのかな。なんて思った。
それに、🍵の指だってそう。絆創膏だらけで、傍から見れば明らかに不自然だった。
それに、頬も何か貼っていて、いつもの🍵とら違う雰囲気を纏っていた。
なんというか………優しい雰囲気が、何処か儚げで寂しくなるような。そんな雰囲気が🍵の周りには漂っているような気がした。
📢「背中の傷が届かんくて………手当して欲しいんだけど、」
🍵「もちろんっ!ほら座って!」
📢「おう、ありがと」(微笑
🍵は俺の背中の服を捲ると、背中の傷の酷さに驚いたのか、声を少し漏らしていた。
いつもの🍵の雰囲気や見た目とは今日は違っていたが、手当の丁寧さや優しさはいつも通りで何処かホッとした。
📢「………なあ🍵。」
🍵「ん〜?なにぃ……?」
📢「泣いた?」
強く行き詰った喉から発せられた言葉はたったの3文字だった。
それでも俺の背中を手当していた🍵の指先が止まった感覚は、背面ながらに分かった。
📢「何があったんだよ……?」
🍵「………」
🍵は何も答えない。それ以前にきっと、話すのが信用ならないんだろう。
俺だってそうだ。最初は🍵のことが信用ならなくて仕方なかった。
けど段々と月日が重ねていく事に、🍵のことをいつの間にやら信用できていた。
📢「……話せる時になったら話してくれ」
📢「その時まd__ 」
«その時まで»そう言おうとした時、その言葉を防いだのは🍵の声だった。
🍵「……叔母さんに、✕〇大学行けだって言われてさ、」(微笑
📢「はッ、、?」
🍵が言った大学は、本当に頭のいい人で、毎日のように塾に通い、勉強を費やした人しか行けないような……。
そんな高い倍率で、受かる確率がほとんどないような大学だった。
📢「そんなにその大学行きたいのかよ、」
🍵「……本当は美術に関する大学に行きたかった。」
🍵「でもそれ言ったら叔母さんに頬を殴られてさ」(微笑
🍵は少し乾いたような笑みを浮かべながらも、確実にその声は今にでも泣きそうで震えていた。
📢「……」
それ分かっておきながら、俺はただ口を閉じ、なんて言葉を発せらばいいのかわからないまま沈黙が続いた。
📢「……🍵はッ、泣かねぇのかよ、」
🍵「………泣いたってしょうがないからね、ッ」(微笑
📢「ッ…そうか、」
📢「………泣けばいいのに、 」(小声
そう呟いた声は電球が明かりを灯している静かな部屋に消えていった。
誰の耳にも届かずに──。
結局その後何も言えずに、🍵の部屋を後にした。
🍵の部屋から出てドアを閉めた後も、その場から俺は動けなかった。足が動かなかった。
背中にはまだ少しだけ🍵の温もりが残っているような気がして、その感覚だけを研ぎ澄ませていた。
俺はそんな感覚を後に、既にみんなが就寝した部屋に入って、自分の布団の中に入った。
耳にはただ、心地よい歌声がじんわりと聞こえた。
次の日。
今日も憂鬱な学校で、嫌気がさしながらもその足は確実に学校へ向かっていた。
太陽に覆い被さった雲からぼんやりと太陽の輪郭が見える。
太陽の光は地面まで届かず、俺の周りには冷たく冷えた空気が漂っていた。
*ガラガラッ*
MOB4「あっれ~?w今日も来たの~?w」
MOB5「ほんっと、懲りねぇよな~w」
📢「………」
認識してくれているだけで有難いか、。
嫌な気持ちを誤魔化しながら、胸の痛みを感じないように席に着く。
すると、MOBは少し癪に触ったのだろうか。
1発頬をぶん殴られた。
声を漏らしそうになったが、咄嗟に抑えた。出してしまえば、彼奴らの意欲を湧き出させる行為になるからな。
つまらそうな顔を浮かべながらも、彼奴らは俺に近づいてきて___
MOB4「放課後屋上。な?w」(小声
周りに聞こえないような小さな声でそう言った。
📢「ッ…わぁったよ、」(小声
無論俺は、この命令を受けない訳にはいかない。
俺も小声で、抗えない自分に腹が立ちながらも答えた。
気分が乗らない中、暇で暇で仕方なくて退屈な授業が始まった。
授業の間は特に何もしない。でも、先生にバレないようにこっそりと虐めてくる。
それがどうも鬱陶しい。やるなら正々堂々とやれよ。っていう話なんだけどね。
窓際の席で、意識を上の空にしながら只々冬らしい雲が覆いかぶさった空を見上げる。
太陽の光は地面には届かず、校庭はどんよりとして暗く薄く黒い黄土色の土が一面に拡がっていた。
それを見ていると、気分を害すような。少しネガティブになってしまいそうで、すぐに目を逸らした。
目を逸らした先にあるのは、鮮やかではない緑色に、びっしりと書き込まれていく白い文字。
そして、真剣に、強弱をつけながらも話す先生の声。先生は表情ですら、感情を表す。
心を読めたら、きっと先生に媚び売らなくてもいいし、友達にも接しやすい。なんて思ってしまった。
そんな現実。叶うはずもないのにね(笑)
そんなこんなで、暇な授業は過ぎていき、放課後になった。
俺は彼奴らに呼び出された、指定された屋上に向かっていた。
妙に屋上に続く階段を上る足は重くて気だるい。
乾燥した空気が俺の頬にピリつく。
屋上の一歩手前ににつき、扉を開ければ屋上。という所で、扉を開けるドアノブにかけた手が止まる。
最悪な気持ちを押し殺し、扉を思いっ切り開ける。
そこにはやはり、彼奴ら(MOB達)の姿が目に映った。
MOB4「あ、やっと来た~w待ち飽きたじゃん、なあ?」
📢「………ッ」
MOB5「なんか言え”よっ”!!!」
*ドゴッ*
📢「ぉ”ぇ”ッ”」(口 手抑
ガッツリ俺の溝に当たり、思わず戻しそうになった。
が、結局何も出て気はせず、声だけを漏らしてしまった。
MOB4「なあ📢。」(📢 髪掴
📢「ッッ………」
MOB4「お前、🍵っていう弟がこの学校に居んだろ?w」
📢「ッは、……」
MOB4「その間抜け面……やっぱ居んだな!w」
思わぬ名前で、俺は驚きを隠せなかった。
今まで彼奴らの口から俺の兄弟の名前が出たことはない。
彼奴らの口角は口裂け女ぐらいに口を上げ、不気味な顔をしていた。
MOB4「お前にいい事教えてやるよw」
📢「いい事っ……?」
MOB4「その🍵ってやつも……」
MOB4「虐められてるよ?www」
📢「っんだとッ……、!?」
MOB4「兄弟揃って虐められるとか運ないねぇ〜??w」
MOB4「つ〜か〜。お前のさっきの反応的にぃ……w」
MOB4「🍵って奴が、虐められてんの知ってなかっただろw」
📢「ッ……」
🍵が初めて虐められているのを知り、そしてそれを彼奴(🍵)は1人で隠した。
いや……隠し続けたのかもしれない。俺のように、心配させたくないからという理由で。
唇を強く噛む。血が少し自分の口に馴染むのが分かる。
鉄のようなジャリジャリとした食感に嫌気がさす。
MOB4「おめぇ兄として守れてねーじゃんw」
MOB5「頼りなさすぎだろw」
📢「ッッッ…………」
グサグサと、彼奴らの言葉が刃物のように尖らせた物が胸に刺さる感覚がする。
今まで、こいつらの言葉でこんなにも傷ついたことはなかった。
じゃあなぜ今。こんなにも傷ついているのか。
俺はうっすらわかった気がした。
彼奴らは🍵の事を話した。そして俺はそれの関することで傷ついた。
つまり俺は、彼奴を、🍵を____
〝弟〟として見ていたんだ。
彼奴らはその後、散々俺に暴言や、🍵のことを悪く言ったり、俺の表情を見て楽しんでいた。
この………苦しみにもがくような顔を見て。
本当にあいつらは、救いようのないゴミ。地底辺のような物。
けど、そんな考えに至る前に、俺の心はズタボロで、もう限界だった。
唐突に死にたくなった。もう嫌だった。
もう頑張ったよね、俺、。
もう……いいよね、俺ッ。
声に出そうとしても出せないこの辛さ。痛みから、俺はもう解放されたかった。
覆いかぶさっていた雲が退き、隙間からは赤く煌めく夕日。
紅く染まる空は、とても綺麗。
オレンジ色や紅いのに、何処か紫色やピンク色が混じっていて、そんな空が俺を包み込んだ。
屋上の端に立つ。
一歩踏み出せば、そこには地面はなく、空気という。何も無いものが待っていた。
きっとここから飛び降りれば、俺の命は助からない。
冬の冷たい風が俺の頬をひんやりと冷やす。
紫色をした髪は風になびかれ、少し俺の視界の邪魔をする。
📢「………さよなら。」
そう呟いた声は赤色の空に呑まれ、消えていく。
そして俺すらも────
一歩踏み出そうとした。その時だった。
屋上の扉が強く開き、息を切らしながらも俺の後ろに現れたのは__。
その姿は俺にとって、救いでもあり、悪魔でもあった。
📢「なんで来たんだよッ、!!」
📢「🍵ッッッ!!!!」(泣き目
🍵「………ッ」(泣き目
2人を赤く照らしていた夕日はいつの間にか沈んでいき、暗い夜が訪れ、2人を連れ込んでいく。
19話 俺と君の選択 _ 𝐟𝐢𝐧𝐢𝐬𝐡
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一気見したらやべぇ(⌒-⌒; )