『おっそーい!!』
ユヅキとヒサメはそう言いながら、彼に迫《せま》った。
「ごめんな、二人とも」
白髪ツインテールと金色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『ユヅキ』は、ひまわりの種を入れすぎたハムスターのように頬《ほほ》を膨らませている。
黒髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『ヒサメ』は少し涙目になっている。
「ナオトのバカ! もう知らない!!」
「そ、そんなこと言うなよー。ユヅキー」
「ふんっ!」
そう言いながら、プイッとそっぽを向くユヅキ。
「え、えっと、ヒサメ……」
「女の子を待たせるような人なんて、もう知りません。あと、これ以上近づいたら切り刻みます」
「そ、そんなー。許してくれよー、ヒサメー」
「無理です」
そう言いながら、そっぽを向くヒサメ。
ま、まいったな……。このままだと、気まずい空気のまま、面談が終わってしまう。
さて、どうしたものかな……。
彼が腕を組んで唸《うな》っていると、二人は彼の背後に回り込んだ。
「あれ? あいつら、どこに行ったんだ?」
二人がいなくなったことに気づいた彼は、背後から忍び寄る二人に気づかなかった。
『だーれだ?』
急に視界が真っ暗になったため、彼は目をパチクリさせた。
その後、彼は問いの答えを考えた。
「え? あー、えーっと、ユヅキと……ヒサメかな?」
『大当たりー!!』
二人はそう言うと、彼から離れた。
そして、彼の頬にしたのか、しなかったのか分からないくらい短時間のキスをした。
「……なっ!? お、お前ら! 怒ってたんじゃないのか?」
ユヅキはニコニコ笑いながら、彼の右腕に抱きつく。
「何言ってるの? あれは全部、演技だよー」
「え? そうなのか?」
「はい、そうです。まんまと騙《だま》されましたね」
そう言いながら、彼の左腕に抱きつくヒサメ。
「なんだ、そうだったのか……。まったく、勘弁してくれよー」
彼がほっと胸を撫で下ろすと、二人は顔を見合わせて、コクリと頷《うなず》いた。
『せーの……それー!!』
「うおっ!?」
二人は彼を押し倒すと、ニコニコ笑いながら、彼の黒いパーカーを脱《ぬ》がせた。
「いやああああああああああああああああああ!!」
彼は奇声のような悲鳴をあげると、別に隠さなくてもいい胸部《きょうぶ》を両腕で隠した。
「へえー、ナオトの体って、こんなのなんだー」
「私たちより、強そうですー」
彼の体をマジマジと見る二人。
彼はその場から逃げようとしたが……ここで逃げれば、二人分の自己紹介を聞き逃《のが》すことになるだけでなく、二人の望みも叶えてあげられなくなるため、彼は珍獣を見るかのような二人の視線に耐《た》えることにした。
「ナオトー、両腕《それ》どけてー」
「ダ、ダメだ! これは、お前らに見せられるものじゃない!!」
「まあまあ、そう言わずに……。ほら、バンザーイしてください」
「い、嫌《いや》だ! お前らに見せるくらいなら、引きちぎってやる!!」
彼が怯《おび》えていることに気づいた二人は顔を見合わせると、ニッコリ笑った。
「ねえ、ナオトー。そんなに見せたくないのー?」
「あと三秒後に世界が終わるとしても見せたくない!」
「そうですか。じゃあ、私たちと見せ合いっこしましょう」
「……え? それはどういう意味だ?」
「そのままの意味だよー。私とヒサメちゃんの体を見せる代わりに、ナオトの体を見せてもらうってことだよー」
「お、俺はロリコンじゃないから、そういうのに興味はない」
その時、ヒサメが彼の耳元でこう囁《ささや》いた。
「ナオトさん、嘘《うそ》はダメですよー。本当は見たいですよね? あるのか、ないのか分からない……ちっちゃな胸《むね》とか、本能的にキスしたくなりそうな可愛らしい『おへそ』とか」
「お、俺はそんなこと、これっぽっちも考えてなんか」
彼が最後まで言い終わる前に、ユヅキは彼の耳元でこう囁《ささや》いた。
「ねえ、ナオトー。いい加減、自分がロリコンだって認めちゃいなよー。そうすれば、ナオトが知らない女の子の秘密をいーっぱい教えてあげるよー」
「お、俺が知らない……女の子の秘密……だと」
ヒサメは彼を快楽へと誘《いざな》うかのように、耳元でこう囁《ささや》く。
「どうやら興味があるみたいですね……ナオトさん」
「そ、そんなことはない……はずだ……」
ユヅキは彼の心の中にいる悪魔が勝つように仕向ける。
「自分に正直になりなよー。そうすれば、色々サービスしてあげるよー」
彼はゴクリと生唾《なまつば》を飲むと、こう言った。
「サ……サービス?」
「はい、そうです。私たちのことしか考えられなくなるような気持ちいいこと……ですよー」
ヒサメの人差し指が彼の首筋をなぞる。
「け、けど……俺は……」
ユヅキは彼の首筋に小さな円を描《えが》く。
「どうして躊躇《ためら》うの? ナオトは私たちと気持ちよくなりたくないの? それとも、私たちみたいな幼《おさな》い女の子とそういうことはしたくないの?」
今日の二人は、やけに色っぽいし、積極的だな。
というか、こんなことされ続けれたら、俺は目覚めてはいけないものに目覚めてしまう。
けど、ここから逃げるわけにはいかないし……。
あー、もうー! 俺はいったいどうすればいいんだよー!!
彼の心の叫びは、二人に丸聞こえだったが、二人はあえて、そのことは言わなかった。
※モンスターチルドレンは近くにいる人間の心の声が聞こえる。
「悪魔型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 零《ぜろ》『ヒサメ』は、これよりナオトさんをめちゃくちゃにします」
「……え?」
「天使型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 零《ぜろ》『ユヅキ』も、これよりナオトをめちゃくちゃにしまーす」
「は? お、おい、ちょっと待て。お前ら、いったい何を」
彼が最後まで言い終わる前に、二人は彼の脇腹を人差し指で突《つつ》いた。
「ひゃん!?」
可愛らしい声をあげたナオトは、思わず脇腹に手を伸ばした。
その時、彼は二人の作戦に気づいた。
しかし、もう遅かった。
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