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別邸の静寂に包まれた寝室。
窓の外では、運命の満月が空の頂へと昇り、銀色の光がシーツの上に冷たく降り注いでいた。
けれど、今の私にはその光さえ恐ろしいものではなかった。
隣には、私のすべてを受け入れ、この世界に繋ぎ止めてくれる人がいる。
「ラム、まだ震えているね」
シエルがベッドの上で私を後ろから抱き寄せ、耳元で優しく囁いた。
彼の大きな手が、私の細い指先を包み込み、薬指の真珠が月光を跳ね返して白く輝く。
その指先の温もりだけで、心臓の奥が熱く疼いた。
「怖くないわ。……ただ、あなたの熱があまりにも心地よくて」
私は寝衣の肩を滑らせ、彼の方を振り返った。
視線が絡み合う。
彼の蒼い瞳には、バイオリンを弾いていた時のような深い情熱ととろけるような慈愛が混ざり合っていた。
シエルは私の頬に手を添え、壊れ物を扱うような手つきで、ゆっくりと唇を重ねてきた。
テラスでのあの誓いのキスよりも、ずっと深く、甘く、身体の芯まで痺れるような口づけ。
呼吸が乱れ、互いの心臓の音が一つに重なっていく。
「ラム…愛している。君を、もう誰にも渡さない」
彼が私の体を押し倒すようにして、ベッドに沈める。
絡み合う手。
指と指が、10年前のあの夏の日よりもずっと強く、深く絡め取られる。
私はそっと、自分の足を彼の足に絡ませた。
かつては尾びれだった、この不完全な二本の足。
歩くたびに痛み、水に濡れれば鱗が剥き出しになる、この脆い体。
けれど、シエルは私の足の甲
そして、足首にまで熱い唇を落としていく。
「あ……シエル……っ」
彼の唇が触れるたび、そこから「人間」としての実感が注ぎ込まれていくようだった。
彼の舌先が私の耳を舐め上げた瞬間、背筋に電流が走った。
「ひゃ…っ!」
「ラム…もっと僕を感じて」
指の間にぬるりとした感触。
シエルが私の耳たぶを丹念に舐めてくる。
「ひぁ…やだ……そんなところ……!」
「君のすべてを感じたいんだ。……君の味も、声も、匂いも」
(…シ、シエルってばこんなに大胆だったの……?!こ、これが普通なのかな…っ)
「んぅっ! や……耳はダメって言ったじゃない!」
「ごめん。でもラムがあまりにも可愛いから……」
私は彼の頭をそっと掴んで引き離そうとしたけど……
シエルは私の腰に回した腕に力を込めてきた。
「待って…わたしたち、これからなに、するの?」
「ん?これから何をするのかって……?」
シエルが低くかすれた声で囁く。
その声には、いつもの優しさの中に確かな熱が潜んでいた。
#ロマンスファンタジー