おれってなにしてたんだっけ
しんだんだよな
『おいっ!』
「え…」
(だれ?
「意識は戻ってるだろ、無視してるんじゃないよな?」
ガバッと勢いよく身体を起こし周りを見渡す。何も無く薄暗く所々にひびが入っている空間にいた、寝転んでいた碧は自身を見下ろす青年の姿に見覚えがあった。
何度も絵で見たその姿
「もしかして…シャルロット・ウィル・メルーデル…?」
「ふーん、わかってるじゃん。」
ぼんやりとしか見えていない姿に、まさか本当に当たっていたのかと驚いた。
(でも、シャルロットは俺が見てた小説のキャラで…
「…いいか、1度しか言わないからよく聞け」
「う、うん」
シャル「おれを、たすけてっ…」
碧の肩を掴み、ギロリと睨みながら聞けと言ったシャルロットは泣きそうな顔になりながら唇を噛み締め言った。
______シャルロット・ウィル・メルーデル。物語の主人公であるロイ、聖人をいじめていた悪役令息。
だがシャルロットは何回も同じ世界を繰り返している逆行者であり、何度もロイに好きな人を奪われ。レイート王国の王になったルイスの、妃となったロイを虐げていたことが分かり処刑された。貴族とはいえ、メルーデル家に嫌われていたシャルロットを処刑するのは難しく無かった
シャルロットはもう限界だった。抜けられないループに、何回も好きな人を取られ、処刑され、何をしてもその運命は変わらない。いじめをしなくともしたことにされ処刑される、無罪を訴えても偽の証拠が溢れ出すだけ。
処刑された時、死ぬ瞬間に魔法を展開し、碧をこの空間に呼んだ。
もう耐えられなかったから
「魔法、とかは分からないけど、いいよ」
「あとは俺に任せて」
シャルロットの両手を握り、笑顔で答える。その瞬間、シャルロットの表情が少し、緩んだ気がした
「…ふん、おれがなんどやっても無理だったんだ、簡単には行かないからな。」
「せいぜい頑張れよ」
「……それと…ありがとう」
お礼を最後にシャルロットは光となって消えた。碧は突然眠気に襲われ、目をつぶり意識を手放した。
(本当に悪役様は素直じゃないなぁ
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「う…」
目をうっすら開け、辺りを見渡す。
起き上がったシャルロットを見てシャルロットの母、メルーデル王国の王女のロート・メルーデルがシャルロットを抱きしめた。
「痛いところは無いですか!貴方崖から落ちたのですよ!?」
ロートがシャルロットの頬をむにむにと手で挟んだ
__シャルロットは兄には嫌われていたが父にも母にも愛されていた。だが父の様子が変わったのは数年後だ。
本当はシャルロットの兄は1人、養子として迎え入れたロイの才能に気づいた父はロイを溺愛した。その後だった、母が病で倒れ兄とロイに父を取られシャルロットは一切相手にして貰えなくなったのは。
「…だ、大丈夫ですお母様」
「今すぐ医師を呼びます、安静にしててくださいね」
ロートはシャルロットを寝かせ布団をかけ頬に口付けをし部屋を後にした。
(大丈夫、シャルロットが主人公の番外小説は沢山読んだじゃないか
深呼吸をして先程から跳ね上がっている胸を落ち着かせる
ふと、視線の先に姿見鏡を見つけ、ベッドから降りて前に立った
(ヤッパリ小説通り、少し長い黒の髪に白い肌、綺麗な顔立ち。あれ?
本来シャルロットの目は赤色、黒い髪に赤い眼を気味悪がられていた。はずだが今のシャルロットは黒い髪に青い目をしていた。[[rb:前世 > 碧]]に引っ張られているのか…?
前世である碧は、ハーフであっため眼が青かったがそれがシャルロットにまで影響したらしい。
(シャルロットはまだ10歳、ロイが来るのは学園に行く数ヶ月前だから後5年か…
コンコンコン、と3回のノックが鳴った。
先程言っていた医師だと分かり、返事をした。
「どうぞ!」
白衣を着、バックを持つ男性が入ってきた
「シャルロット様、ご無事に目覚めたようで良かったです。」
ゆるりと胸に手を置き軽く頭を下げ会釈する医師にシャルロットも会釈を返した
「どこが痛いところはありませんか?」
「大丈夫です」
「良かったです、ですがまだ傷は塞がっていないのでお薬は飲んでください。」
頭に巻かれた包帯を医師は手際よく巻き直し、最後に薬を手渡された
「分かりました。」
医師は部屋を後にする。そして、入れ違うようにして母、ロートが部屋に入る。
「昼食の時間になったら呼びに来ますね」
「はい、お母様」
本来食事に呼ぶのはメイドや執事の役目であるが、避けられているシャルロットは基本ロートが呼びに来てくれる。
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(誰もいない部屋、やるべきことは1つ!
「ステータスオープン!」
「や、やっぱでないか…恥ずかしい…」
異世界転生物で、よくあるステータス、自身も出来るのでは無いかとやってみたが、でないととてつもない恥ずかしさが襲ってくる
うぃんと機械音を立て目の前に現れた透明の薄い青色の板。時間差だったようだ。
「色んな意味で恥ずかしいっ!」
《ステータス》
シャルロット・ウィル・メルーデル
(御宮 碧)
年齢 10 性別 男
闇属性
?属性
?属性 解放には??????
御宮 碧というもう1人の魂がある為+二属性を獲得可能
「?何も書いてない属性?解放には?」
ステータスを裏から見てみたり、横から見て見たり、逆から見てみたりするが、一切読めなかった。
「うーん、どの角度で見ても読めない…」
「…え!?二属性獲得出来るの!?」
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謎の喜びで暴れていたら傷が痛んだのでベッドで休憩中___
時計の針が昼の時間に近づいて来たのに気づき、着替えようとクローゼットの服に手を伸ばす。 あまり着慣れない服なはずなのにスルスルと着れたのは、シャルロットの身体だからだろうか。
「うーん、小説の描写でもあったけど、やっぱり少しひらひらが多いい…」
普通の男性服よりヒラヒラが多めとなっているシャツだ。
コンコンコンと扉からノックが聴こえた。
「シャルロット、お昼の時間ですよ、一緒に行きましょう。」
「はい!今行きます!」
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「おお、来たかシャルロット、身体の具合はもういいのか?」
ナシード・メルーデルはこの国の国王だ。
シャルロットへ対する態度の変わりようを思い出しイラつきが抑えられなくて脳内で殴り飛ばしたのは内緒だ。
「……はい、お父様、もう大丈夫です。」
「…っお、兄様も御機嫌よう」
兄はこの物語に必要が無いのであればすぐさま退場願います…!等と思っているとこちらを1度見た兄である シュルト・メルーデルは舌打ちをして目を逸らしたので流石に脳内で殴った。
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書庫_____
「…魔力欠損を治す方法は…」
ロイが来てから入学式が始まる間にロート、母は魔力欠損になる、それがロートの病の原因だからだ。
[魔力欠損
体内で魔力が回らず脚から徐々に動かなくなり最後には命に関わる。治療法は見つかっていない。]
「小説には、治すには聖人による光の治癒と書いていた…俺が光魔法を手に入れたとしても治癒はできない。」
そこからは必死に探した、紙に出来る限り碧の読んだ小説を思い出し書き写し、家中の書庫を探して、王都に出て読んだりもした。
春も夏も秋も冬も、毎日探した。
それでも、見つからず4年がすぎた
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1話 END 11⁄30
シャルロット・ウィル・メルーデル
ループ者。何百回と同じ時間を繰り返し、死ぬ事から逃れられなかった。
処刑以外でも殺されている。
ロートが生きるか、死ぬかがシャルロットにとって重要。ロートが生きていた場合はこんな事にはならなかったかもしれない。
シャルロットが戻ってきた時は、必ず息絶えたロートの手を握っている所から始まり、救える方法が無い。
黒い髪と赤い眼が理由で避けられ、呪いだと言われた。王と王女の血筋は間違いない、だからこそ呪いと言われている。
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