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夜、部屋の明かりはすでに落とされていた。外から差し込む街の灯りだけが、カーテンの隙間からぼんやりと床を照らしている。
涼ちゃんは、少しだけ眉を寄せながらも、
若井の胸の中で静かに眠っていた。
浅い呼吸が規則的に聞こえるたび、
若井はその体温の確かさを感じて、胸の奥がやわらかくなっていく。
昼間あんなに強がっていたのに、
今はまるで子どものように無防備な寝顔だった。
「……ほんと、よかった」
思わず小さくつぶやく。
涼ちゃんがちゃんと眠れている、それだけで心からほっとした。
そっと髪を撫でると、涼ちゃんがかすかに身を動かした。
その仕草さえも愛おしく感じて、若井はもう一度、腕の中に抱き寄せる。
冷えた夜気の中、
そのぬくもりだけが確かな現実だった。
やがて若井も、安心したように瞼を閉じる。
ふたりの呼吸が静かに重なり、
夜はゆっくりと、深く、更けていった。