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「ねぇ君、なんでここにいるの?」
私はそんな声も聞かずに彼の青い瞳に見惚れてしまっていた。
まるで海のような綺麗な青い瞳に。
本当に本当に綺麗だ。
「おーい、大丈夫?」
彼のその言葉でやっと目がさめたように気がついた。
「だっ大丈夫…」
「それならいいんだけど、なんでここにいるの?」
「逆に聞くけど、あなたもなんでここにいるの?」
「俺は…言いたくない」
何か、嫌なことがあったのかな?
彼が嫌と言うなら聞かないことにしよう。
「君は?」
そう聞かれて、ドキッとしてしまった。
このドキッはいわゆる恋愛とかではない。
決してない。
ただ、彼の細くきれいな声が急に来るとびっくりしてしまう。
今まで聞いたことないような綺麗な声で。
「私は…別に来たかっただけ」
「嘘つき。来たかっただけで、この堤防に上るやつがどこにいる」
以外に勘が鋭い。
「…海が見たかったから」
「っ…!へぇー好きなんだ」
「うん、好き、大好き。どんなものよりもずっと、ずっと大好き。」
これを言ったあと、私はやってしまったと思った。
どうも、海の話になると自分が制御できなくなる。
…あの日からやめようと思ってたのに。
「俺もさ、好きなんだ〜!」
「知ってる」
「えっなんでわかったの?」
「海が好きでもないのに堤防に上るやつなんてどこのいる」
これはさっきのお返しみたいなもん。
彼の真似をしてやった。
「ははっ、やっぱそうかー」
「まぁ、あとはその瞳かな」
「えっ?俺の瞳?」
「…大好きな海の色をしてたから」
ちょっと、その瞳を欲しくなった。
だから、ずるいなって思ってしまった。
「俺の瞳は、家系だよ。俺のご先祖様もこの瞳」
「いいなぁ」
そんな話をされて、思わずでてしまった。
こんな間抜けた声で。
「…ははっ!さっきの君とは思えないぐらいの間抜けた声!」
「っ…!うるさいなぁ、別にいいでしょう」
あっ私、今、会話してる。
人と。
こんなにしっかり笑えたのは何年ぶりだろう。
こんなに少し照れながら怒るのは何年ぶりだろう。
こんなに人と話すのが楽しいと思ったのは何年ぶりだろう。
嬉しい。
「ねぇ、あなたの名前は?」
また、彼と会いたいという気持ちから聞いてしまった、いや、聞いた。
もう、一生会えなくても名前だけは知っときたい。
「おぉ急だな!俺の名前は天水(てんすい) 海里(かいり)。君は?」
「私は青島 海」
「すごい!大好きな海と一緒の名前なんだね!」
「そっちこそ、海がついてんじゃん」
「…そうだね」
海里は少し悲しそうな顔をした。
この人は謎しかない。
「あっそうだ。海は綺麗な海が大好きなんでしょ?
俺がその中に連れてってあげる!」
そう言いながら、海里は私の手を引いて海へ飛び込んだ。
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