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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第83話 〚同じ朝なのに、違う目覚め〛
― 澪視点 ―
目を開けた瞬間、
一番最初に見えたのは——
海翔だった。
目の前。
思っていたより、近い。
(……近)
一瞬、
心臓が跳ねる。
でも、
寝ている顔は
いつもと変わらなくて、
変に安心した。
澪は、
小さく声をかける。
「……海翔」
反応なし。
もう一回。
「海翔、朝だよ」
次の瞬間、
ぱっと目が開いた。
「ん。起きてる」
(速っ)
澪は、
ちょっとだけ笑ってしまった。
「ほんとに寝てた?」
「寝てた。
でも、呼ばれたら起きる」
よく分からない理屈だけど、
それ以上聞かなかった。
澪は、
隣の布団を見る。
えまは、
完全に熟睡。
「えま、起きて」
「……あと五分」
「もう三日目だよ」
「……修学旅行、
一生続けばいいのに……」
寝言みたいな返事に、
澪は苦笑しながら
肩を揺らした。
その頃、
海翔は反対側に向かっていた。
「真壁、起きろ」
……反応なし。
「朝だぞ」
……無音。
ちょっと強めに。
「集合ある」
それでも、
全く起きない。
(……?)
澪は、
その様子を見て、
少しだけ嫌な予感がした。
ゆっくり近づいて、
距離を保ったまま言う。
「……真壁くん。
起きて」
その瞬間。
「おはよう!!」
勢いよく、
体を起こした。
あまりにも速くて、
澪は一歩下がる。
「……おはよ」
返事をしながら、
胸の奥が
きゅっとなる。
(……なんで)
同じ「起きて」なのに。
海翔の声では、
起きなかったのに。
澪の声では、
すぐに起きた。
その事実が、
はっきり残る。
海翔は、
何も言わなかった。
ただ、
少しだけ前に立つ。
澪は、
それを見て、
何も言えなくなった。
三日目の朝は、
ちゃんと始まった。
でも、
同じ朝なのに、
同じ目覚めじゃない。
その違いが、
澪の中に
静かに残ったままだった。