新たな力の影響が表面化して、変貌したリーシア…、その事を察した魔神族の同胞らは、「あの妙な力と、魔力反応は何なんだ……」
「あの色欲の大罪人との、深き深愛と絆が結び、創り出した結晶の力……余程姫様は、あの大罪人に想いを寄せていらっしゃるようだ」
「絆の運命が、新たなる力を手繰り寄せ、その結晶の証として生じた賜物…か、道理で呪縛の侵蝕と支配力自体の効力を此方で強制的に向上させているのにも関わらず、抵抗の意思が消えない訳だ、呪縛の主の意識には逆らえない筈だが、そういう事か…………あのお方の精神と意識を完全に支配するのが、現状困難になっている訳か」
「しかし、寧ろこれは好都合だ、それを上手く利用すればあの大罪人を儀式の奴隷として仕えさせる事が出来る、そしてそれが成功し、あの大罪人が犠牲になる瞬間を見れば、大いなるあの姫様であっても正気では居られなくなる筈……」
「だが、呪縛の支配力にまで打ち勝つ程の抵抗力が芽生えてしまった以上、そう安易には事を運べなくなってしまったのも事実、さてこの事を主様と、リオネス王国の聖騎士長様方にお伝えしなければ……」
と、同胞らは、ひっそりと監視の目を張りながら情報共有もし合って居た。
「…………はあ………はあ……… 」
「どうだ?痛みの具合は」
「うん…良くなった気がする、私達が知らず知らずのうちに築いていた互いの感情が作用して、導き、結んで生み出してくれた力のお陰で、それにしても『奇跡の運命』に私達って案外恵まれてるのかもね、私は……私は、ただの穢れ…蔑まされる呪われた存在の種族の、そんな種族の頂点者、ただの邪悪な存在でしかないって思ってたけど…そうじゃないんだって事が、やっと確信付けた気がする……貴方と出会えた、巡り会えた運命がそう気付かせてくれたお陰でね…」
リーシアは、そう言ってゴウセルにまた抱擁を求めた。
依存的感情が、初めて発覚したあの時から、リーシアは彼に甘えたいという意欲がそれ以前よりも増した事で、躊躇する事もなくなって、一層ゴウセルに対して抱く感情が大きくなり、重度とも言える程に、彼女は特定の人物に対しての依存現象も高まっている模様。
「………あの時みたいな悪夢が、また起きなくて良かった」
「ああ」
そうして、リーシアはゴウセルに自身の気持ちが満たされ、求めるがままに彼に甘える。この異世界に永久的に囚われる事になってしまう事、そんな現実を突きつけられているのに、それなのに彼女は、彼に捧心する意思が何よりも優先されていて、思わずこの行動には彼でさえも、不思議さを感じずにはいられなかった。
「さて、早く団長達と合流でもしたいところだが、先ずはこの世界からどうやって抜け出すかが問題な訳だが……」
「う、うん…、けどどうやって出口を探せば良いのかな、此処は完全な異空間で魔神族の為に創造された異世界、出口も光もない、ただただ闇だけが広がる世界…逃げ道なんてきっと存在すらしない……」
「ああ、だが何か方法がある可能性もある」
「………うん」
二人は、かけられた潜む呪縛の術と苦闘、強い精神力で抗いながら屈しないという意思を保ってメリオダス達との合流を目指して、この世界から脱する為の糸口を探す。
と、その時、「……あ、あれ?急に痛まなくなった…侵蝕が止まってる…? 」と急に鎮まった呪いの侵蝕に少し違和感を感じたリーシア。
ちょっと前までなら、無理矢理呪縛の侵蝕を強められ、侵蝕の進度もそれによって引き起こされる苦痛も激痛だった、流れ込んでくる封印された記憶が呼び起こされる事で、より悶絶していたリーシアだったのだが、途端にそれが治ったのだという。
「恐らく、これもあの力の恩恵なのかもしれないな、察するに、その力は邪悪な闇に対抗する…ある意味俺達にとっては、かなり強力な希望の力と今後なり得る可能性があるだろう」
「………この力って、私…てっきり魔神族だから、穢れた嫌われ者でしかない…そう思ってた、けどこの力…不思議に芽生えたこの力は…闇とは違う…寧ろ希望の光へと導いてくれるような…そんなエネルギーを感じる‥……ふふ、だけどそれもこれも全部、貴方と巡り逢えた『奇跡』が導いてくれたに違いない、私……本当は運命に気に入られてるのかもね、それとも遊ばれてるだけかな」
「ああ、だが君は少なくとも魔神族という恐れられる種族に在っても、報われるべきだ。君は、感情という概念があるが、しかしマイナスなものばかりを背負い過ぎているように思える、まるで望まれもしないのに誕生した存在、どんな種族になろうが生きる命があるのは同等の理なのだからな」
「………………ゴウセル、魔神族なんかじゃなかったら…こんな憎まれるような、穢れた呪いなんか受けてなかったら……誰かに愛されていたのかな、けど……もう良いの、この呪縛は私が終焉を迎えない限り残り続ける、それにどのみち…呪縛から楽になる過程で…私は……」
「…………やはりそうか、君の呪縛の根源は心臓部に存在する…つまりは…今は深くあまり考えたくはないが、そうだったか…そうなると以前キャメロットの王宮で読んだ書物を読んだものに書いてあったが、それは限りなく真実という事になるのか」
「こんな厄介な呪縛さえ、なかったらそんな未来が訪れる事も…なかったのに、そうなりたくないよ……」
彼女はポロポロと涙を流して、彼に抱擁して貰った。リーシアの、ゴウセルに対する想いの膨らみは誰もが想像したものよりも、遥かに大きくなっているようだ。
「結末がどうなるかなど、止められるかも分からないものだ、だが……俺は、君の事を守りたい、そう思っているのは今も変わらない……」
「うん……、ゴウセル…、ありがとう 」
そうして、二人はこの禍々しい魔神族の世界から、抜け出す為の道を模索する。
……ゴウセル達が、今も尚魔神族の世界で彷徨ってる最中、その頃メリオダス達は、ゴウセルとリーシアを助け出す為に重要な協力者探しをしていた訳だが、『魔神族の裏切り者』とされ、魔神族と血族関係が裏でまだ続いているという人物が、実はラディリオ以外に未だ居るとの情報を手に入れ、その人物を探しまわってみる事に。
「手遅れになっちまう前に、早いとこそいつを探し出すとするか、もう迷ってる時間も立ち止まってる時間もねえーからな!」
メリオダスらは、随分停滞してしまっていたが、やっとの思いで先へ一歩を歩み出せる。更にはアーサーの協力もあり、思った以上に迅速的にその人物と会う事が、出来メリオダスらは先を急いでる、だから会って早々に事情を説明し、協力を要請した。
「‥………って事なんだが、協力してくれないか?お前も魔神族の血族で、それにお前も言ったら裏切った立場の奴なんだろ?」
「………正確に言えば、俺は彼奴と違って反逆行為もしてないし、皆んなを敵に回すようなそんな侮辱行為だって、やってない…ただ、俺は遥か昔の…まだ姫様が封印される以前の頃のあの世界が良かった、だが……姫様が封印されて、そして挙句の果てにはリオネス王国とかいう国の、聖騎士長と手を組むようになった途端に、魔神族の世界は、一変し力に支配されるようになった、それが単に気に入らなくなった、だから離れる事にしたんだ」
「だからと言って、同族を完全に見放した訳でもない…」と語る彼。
あくまで、種族としての生き方や在り方などの方向性が合わなくなった事で、嫌気がさした為に同胞の中から離れたという。
それに、それ程リーシアを信頼していたとも言える。だから、メリオダス達の行動に賛同し、協力もしてくれるらしい。