テラーノベル
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「やっと着いた……まさかこんなにも早くこの世界にまた足を踏み入れる事になるなんてな」
「うん、けど早くあの二人を助けないと、全てが取り返しのつかない事になってしまう前に‥! 」
「ああ、だな!」
メリオダス率いる七つの大罪ら、それから同胞で裏切りを働き敵対関係になった二人一行はそうしてゴウセルとリーシアを救い出す為に先を急ぐのだが、そんな彼らの前へ行く手を阻む者達が、
「待っていたよ、愚かで哀れな侵入者共」
「単刀直入に言う、二人を返せ…!」
「ふふ、あはははっ!まあそうだろうとは思っていたよ、貴様らが我々の領域に踏み込む理由なんてそれしか有り得ないから、けどそう簡単に引き渡す訳にはいかない、それに我々魔神族の一族騎士団皆、姫様をこの故郷の地へ連れ戻すのは自然な事、封印され…あれから数万年もの時が流れ、呪縛の代償として記憶を喪失されたのだから、忘れられるのも無理はないけど‥ 」
「もう君らの思惑は、これ以上遂行させない、それにあのお方だって、こんなの望んでなんかいない筈だ…! 」とラディリオは彼女らを説得した。
「誰かと思ったら、裏切り者の奴らじゃない、まさか敵襲の連中の中に顔見知りがいるなんて、それに私に隠れて、逃げて行った奴まで、我々の一族の掟を破り、裏切った奴がよくもまあまた私達の前に帰ってこれたものだね」
「全ては、姫様を助ける為、救う為に此処へ戻ってきたんだ…!! 」
「俺はこいつと違って、一族の意志に背いた訳じゃない…ただあの頃の、あの時代の魔神族の在り方を見失い、力に支配されてる現状が気に食わないだけだ」
「そうであっても、あんたもそっち側に居るなら、それは我々を敵と認識し。まさに『反逆者』も同然よ、現状が物語ってるじゃない 」
と、彼女は彼らを睨みつけた。
「此処で喋ってる時間も惜しい、さっさと姫様とあの大罪人を返せ、俺達が此処にもう一度出向いてきた理由が分かった上で、こうして阻んでるんだろ 」
と今度は此方から彼女らへ問い糺した。
「ああ、知ってるさ。貴様らのような侵入者がこの我々の縄張りの領域に踏み込み込んできて邪魔する理由なんざ、一つしかあり得ない、ふふっ…あははははっ…! 」
「何がそんなにおかしい」
「貴方達二人には関係なんて微塵もないけど、そこに居る騎士団の連中には、ある意味とっておきを見せてあげる……」
そう言って、哀れむような微笑を溢し、背後に控えさせていた『とある人物』を前方へ 連れ込んだ。その人物は‥。
「…………!!!?、ゴウセル…!!?」
「どう?お仲間との再会は、連れ戻しに来たんでしょ?ふふっ、まあもう彼は貴方達の知る人じゃなくなってるけど、だからもはや彼は貴方達の事なんて、排除対象としか認識してないでしょうね、ふふっ」
「ゴウセルに何をした!」
「自ら敵に種明かしする程、残念だけど馬鹿じゃないわ。姫様の方ももうすぐ封印の繭の中で夢の中へ沈み、閉ざされた眠っている御自身の記憶の再構築へ向かう事でしょう、彼にはそれまで侵入者の排除と時間稼ぎをして貰うの、まあ姫様の全てを解放し…儀式の最終段階への移行が命じられ次第、彼には生贄の犠牲となって、引き換えに代償として命を貰うけど、それまでは我々の従順なる『奴隷』となっていて貰うわ、ふふっ」
と、彼を手駒にした事で、メリオダスらの動揺を誘い込む作戦に出た。
「姫様と唯一無二の、精神と魂の糸が繋がったそんな存在。姫様が何よりも手早く我々の元へ帰還される事を誘導するには彼を利用する、そんな打って付けの方法があるのなら、使わない訳にはいかないでしょ?」
「くっ…!」
「ふふっ、お仲間が敵となって自分達の前に現れるなんて、想像もしてなかったでしょ?ほんと、なんて滑稽な、手も足も出せない…さあ邪魔な侵入者を排除して」
「了解‥…」
「この感じ、彼奴は完全に奴らの手に堕ちてしまったようだな、記憶も意思も改竄され、あれは紛れもない、まさに操り人形そのものだ…何か怪しい術に嵌まったか」
「それにそれは恐らく姫様も、本来姫様のような上級階級以上の存在の地位に値するお方に手を出すなんて行為は命知らずな侮辱行為に相当する、魔神様の逆鱗に触れる事になっても知らないよ!」
「そんなの分かってる、けど今の姫様はまだ未完成の段階に過ぎない、本当の我々の慕う姫様はまだ永い記憶の夢に眠ったまま、数万前の姫様のお姿を取り戻す為…!」
「まさか、リーシアまで、完全に支配されてしまってたとはな、ゴウセルが人質に取られちゃ、そうなっちうのも頷けるか」
「さて、戯言を長々と言ってても時間の無駄、姫様の記憶の再構築…そして速やかに次なる儀式の段階へ移行出来るまで、くれぐれもこの邪魔な侵入者をこれ以上我々の領域に踏み込ませるのを阻止しなくては。じゃあ、後の殲滅は頼んだよ」
「記憶の調教ついでに仕込んだ力でなら、ほぼ一瞬で侵入者なんて木っ端微塵に滅ぼせる…」
そう指示されると、操り人形となったゴウセルが、メリオダスらに牙を向く。と思われたが、彼は命じられ、実行する…その素振りさえピタリと止まった。
「何やってるの?、さあ早く殲滅を……、ってまさか拒絶を起こしている…」
と思わぬ事態に困惑しているところに、次なる思いもよらない状況が更に連鎖しゆく。
「緊急事態が起きた!、封印の繭に抑留していた筈の姫様が目覚めて、突然あの繭から脱走し出した!、恐らくこの世界からの脱走も考えておられるつもりだ! 」との声に益々困惑状況が悪化し、計画の遂行どころではなくなった。
「くっ…!、まさかこんな事態になろうとは…!」
「あの二人はお前達が思っているよりも遥かに、そう簡単には屈する事など有り得ない、どうやらお前達はあの二人を甘く見過ぎていたようだな、同じ同胞、同族の者だからと言って安易に事を運べると思っていたようだが… 」
マーリンがそう言っていると、封印の繭から脱走し、逃げ出したリーシアが合流。
「……‥ゴウセル‥‥、会えた…」
「姫様…!!!?、何故、何故ですか、あの繭は塞いでいた筈!何故…それに悪夢で心も支配して、心酔状態になっていた、記憶も意識も…何で…」
「見くびっていたようね、ふふふっ…知っての通り、私は『魔神族の最高者』よ?確かに私
私とゴウセルは『洗脳』されてたわ、精神魔法があそこまで強大な影響を及ぼすものだったなんて、けど残念…私や彼はそう簡単に闇に堕落する程、弱くはないわ…!」
「そんな……何故…………」
「くっ…!こんな事が起こるなんて想定外だった、こんな事起こる筈じゃ…」
「お前達は、二人の『深き絆』の強さを侮っていた…これはお前達が我々を舐めていた結果が招いた誤算と言えるだろう」
「くっ…!!、だとしてもここまで来て諦める訳にはいかない!封印されし姫様との再会をずっと願い、望み続け…あの数万前の姫様のお姿の復活を果たす、その為に何千年もの時を大いなる再会、ただ一つ を夢に見て、その為にこの計画をこの数百年を費やしてきたんだから」
「もうこれ以上はやめるんだ!それに姫様だって、犠牲や代償を経なければ、本当の自分になれないならこんな事は望んじゃいない…!!」
と、説得を試みるも、それでも彼女らは自分達が『切望する目的』の為に、そしてその一方で、メリオダスらも、二人を救う為に此処へ再度足を踏み入れた。
「煩い、我々は永年の切望を抱いて此処まで生きてきた、過去の過ちの払拭を果たす為に……」
「姫様が数万年前の封印の眠りについてしまった、あれは我々の過ちでもある、それに加えて妙な連中と同盟を組み、いつしか…いや、魔神族は力と支配に縛られ、強さと力に囚われ…少なくとも姫様は、平穏を願ってる筈、こんな事…この先に待ってる未来…終焉 を迎えるなんてそんな最期みたいな事……望んじゃいない…!」
「……どうあんたらのお咎めを受けようが、何だろうが我々の目的は変わらない、この先に訪れる終焉の未来……それは姫様が数万年ものにも渡る永き眠りからお目覚めになられた時から既に始まっていたの、それに完全体の姫様をお目にかかるには、大いなる儀式の元…犠牲と代償を差し出す必要がある、それは魔神族の血縁者のみが選ばれる……だから、我々は早々にそこに居る『色欲の罪ゴウセル』と姫様が巡り合い、パーツが揃うのを覗ってたの」
「同じ魔神族なら知ってる筈でしょ?それにこれは、封印とこれまでの我々の行為を償う、懺悔を込めた重要なこと、膨大なエネルギーに耐えられなくなって、自身の力を抑制する為の期間としてもう一度、あの繭へ籠られる事になった……だけど、力を制御する力が備わった代わりに、貴女様は過去の記憶の一切を失った、記憶喪失状態なった今、今一度全ては我々が慕っていたあの頃の姫様を取り戻す為に…!」
「戻らない……私はもう戻らない、彼が代償として儀式の犠牲になって死んじゃう事になるくらいなら、私はもう以前の、本当の自分なんて要らない…!!!、悲しみに満ちた運命になるくらいなら、私は何も知らないままで良い…例え呪縛に蝕まれ続ける事になったって……私……私は……」
リーシアは悪夢に呑まれ、心さえも闇へと堕ちてしまったかと思っていたが、大切な彼に抱く思いや、彼と過ごしてきた記憶が糧となり、誘う闇に抗える精神力を得たようだ。
「薄々予感はしてましたが、やはりあの程度の魔術では、そう易々とはいきませんか、ならば仕方ないですね、では貴女様にこのような事をするのは、心苦しいですが……次こそはもっと卑劣で、悲劇的な悪夢の幻術を貴女様にはお与えしましょう」
「姫様、もう苦しい思いをしたくないであれば、我々の元へご帰還願います」
「っ…!!」
「こうなるとは予想外だったけど、はあしょうがない…また振り出しに戻った…早く連れ戻すとしよう」
「そんな事させるかよ!」
こうして、互いの其々の想いや目的を胸に抱き、魔力がぶつかり合う。「もう姫様の弱点は握ってる、後はそれを実行に移すだけ、そろそろ次の段階へ儀式を進めないと、あの聖騎士長様方と頭主様が痺れを切らして、お怒りなされるでしょう。まさか、あれだけ厳重な防壁……封印の術で封鎖されたらもう出てこられなくなる筈の『封印の繭』から脱 出したなんて」
「ああ、ほんとに理解の範疇を超えた想定外の事が起きたもんだね、けどだからと言って此処から簡単に逃す訳にはいかない、悪いが手加減などしない……同族の『お前』にもね」
「最初からそのつもりだ。俺には感情という概念が存在しない、人形…だが、彼女を守りたい、いや何があっても一緒に居ると、守ると誓った。 よってお前達の思う壺には、もうならない」
「感情を失った、ただの人形がいつの間にやらそんな感情を持つようになった…………、君はほんとに不思議だよ、我々の一員で私達からすれば、子孫と言っても過言じゃないあの『十戒』の者が君を創造し、我々にとっては孫のような存在、そんな君も、姫様だってそっち側に居るなんてね」
「…………ああ、人形の器に魂を宿し、生命を彼は刻んだ、お前達が言う通り、俺に正体は紛れもない『人形』……だからと言って、お前達の言いなりに何時迄も、なるつもりはない、俺は彼女を破滅の運命から救い出す、その為にも彼女を守る。それが今の俺の役目だ」
「姫様も、君もほんとに変わってしまったね、それなら仕方ない‥こんな横暴な手段を使うなんてやりたくなかったけど、力尽くで私達の支配下に引き摺り戻すまで…!」
「そんな事はさせない…決して彼女には触れさせない、彼女にこれ以上痛みという苦痛を与えさせない」
完全に洗脳、意識と記憶操作による支配から抜け出し、元の正気を取り戻したリーシアとゴウセルは自らの同胞に刃向かい、反逆する。
「そう、そっちがその気ならやってやろうじゃない、ふふっ…けど姫様と君は我々の計画上、排除対象外だ、間違えて消滅させないように…」
「こいつら、やたらしぶといくらい生命力が凄まじい連中と流れてきてるし、完膚なきまで捻り潰すには、少々時間がかかりそうだ」
「絶対に私は……私は…呪縛の闇なんかに屈したりしない!」
「ですが……封印を解けば、記憶と本来の力が貴女様に還ってくるのですよ?それに今貴女様のお身体を苦しめる呪縛に蝕まれなくて済むのですから」
「呪縛の鎖で眠ってる魔神を覚醒させる‥‥、でも‥でも…!!そんな未来私はもう望んでない……!」
「何故そこまでして、運命を受け入れられないのでしょうか、魔神族を統治する…頂点に立っているお方が……偉大なる地位に君臨している存在であろうお方が…」
「姫様、我々と再びまた永久なる魔神族のこの世界で生きようでは有りませんか、大いなる儀式を経て眠りし本来の御姿の貴女様に、姫様にお会いしたいのです、貴女様は其方側に居るべきお方ではないでしょう」
彼女を慕い、讃えている同胞らは何がなんでも、リーシアを自分達の元へ戻ってほしいと願っているようだが、この世界に存在する種族の中で最も恐れられていて脅威の象徴ともいえる種族。それが呼び寄せた不運、彼女は生まれ持って呪いを受け、穢れた魔神族の頂点として創造された。
「もう私は……呪いなんかに蝕められるだけの呪われた器として生きていくのでは嫌……!貴女達の都合の良いようには絶対にならない…!!」
「魔神の呪いに逆らおうとするようになられるなんて本当に姫様、貴女様というお方は不思議なお方だ、おっと……お喋りが過ぎた、あまり時間稼ぎに費やしてしまうと、痺れを切られそうだから、早いとこ、さっさと目的の遂行に移らせてもらおうかな」
そうして、同胞達は一斉にリーシアへ狙いを定め、臨戦体制に入った。
「絶対にこれ以上お前らの思惑通りなんかにさせてたまるかよ……!」
「ふふっ……」
魔神族が蔓延るこの世界で闘っている間にも、外では彼女らが振り撒いた術で人々が次々に魔神へと変貌し、見境なしに無実の人々を襲っていた。
それをアーサー率いるキャメロット国の聖騎士達が必死になって止めていた。「メリオダス殿達、まだ帰ってこられていない、それまで持ち堪えられると良いが…」
まさに混沌……地獄同然の光景が広がっていた。
のだが、何故か急に、その連鎖が止まった。まあ依然として魔神へと豹変してしまった人間達は居るままだが‥。
「魔神化の感染が止まった‥…これは一体……」
「あの騎士団殿方達が、あの世界に侵入した事で此方に視野を回す余裕が出来なくなったのでしょう、とにかく我々は引き続き彼らの対処を優先しましょう…!」
「ああ…!」
「アアアアアアアアアアアアアアっ!!」
其々が、苦戦を強いられている事になってしまった。魔神族の脅威はメリオダスやアーサー達が思っていたよりも、ずっと手強いものになりそうだ。
「あの人達の事だ、簡単に死にはしないって事を理解していても、やはり心配になる…メリオダス殿方、どうかご無事で……」
アーサーはメリオダス達の身の無事を暗示ながら、魔神の脅威に立ち向かう。キャメロットに襲いかかっている魔神族のこの脅威はリオネス王国や、他の領域にまで直に届く事になるだろう。そうして、禍々しい影は少しずつ、混沌と破滅の終焉の渦へと進みゆく。
アーサーが悪戦苦闘を強いられている間、もう片方では……深淵と常闇の世界にいるメリオダスらは未だ互いに譲れない思いを抱きながら、激闘が巻き起こり続けていた。
「はあ……はあ…………」
「ふふっ、さて下手にこれ以上無意味な戦闘を続けても時間の無駄…何より時間というのは有限だ、姫様がどうしてもお戻りになられないというのであれば、記憶と本性を取り戻す事に抵抗を示されるというなら、強引な手にはなるけど……」
そう言って、リーシアにそっと近寄る。
「させるか………!!!」
「我々が思っていたよりも、姫様が抵抗なされるとは……余程その連中に惹かれてしまわれたようですね、ですが、貴女が居るべき場所は其方側ではない、貴女様は我々の生きる全ての理由であり、何より……種族における最高者、姫様……我々には、姫様…貴女様という存在が必要不可欠なのですよ 」
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