テラーノベル
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出逢いのシナリオはこうだ私と和香那が会っている時に、雅弥が偶然を装って私に声をかける
以前、財布を拾って追いかけてくれた
そういう設定で。
そして、今時そんな懸命に追ってくれる人も珍しいと
私の名前なんかを聞いて、和香那の前で私に出逢いがあったと思わせる。
和香那はきっと動く。
雅弥は、ルックスがいい。
しかも、彼の勤務先は名前を聞けば殆どの人がCMや購入した商品で知ってるほどの大手商社。
和香那が食いつくには格好の相手だろう。
――
息を切らせた雅弥が駆け寄ってきた
「あ、あなたは三日前にカフェドールで財布を拾って外まで追いかけてくれた……方ですよね?」
わざと考えるふりをして
「……ああ、あの時の?」
「あの日は急いでいて連絡先も聞けずで……自分の愚かさに呆れてました。
あれから君にまた会いたくてカフェの近くで探してたんですよ!
まさかこんなところで会えるなんて!!あぁ……よかった!是非お礼をさせてください!」
「翔音?」
和香那が私を肘でつついた
「あ、和香那ごめん。
いえ、お礼なんて大げさですよ。では、失礼します」
雅弥に頭を下げてその場を後にしようとした。
「す、すいません。僕怪しい者じゃないんです……なんて、言うのが怪しいか。実はあの財布には祖父の形見の大事なコインが入っていて、誰かに財布をくすねられて捨てられてたらと思うと……本当に助かったんです!ですからお礼させて欲しいです!」
雅弥が私の一歩前に出て道を塞ぐ。
必死な演技が上手い。
「翔音、お礼してもらえば?」
和香那が私の腕を掴む
「……なら、お茶でもいいですか?」
そのまま、三人でカフェに入った。
「あらためて、あの日はありがとうございました。」
「そんな、大げさですよ」
「いえいえ。あ、僕は小塚雅弥と言います。」
「藤田翔音です。彼女は親友の
本田和香那です。」
―――
そして、巧みに話を和香那の関心がある方へ
誘導した
「へぇ、マイナーな映画なのにご存知だったんですね」
雅弥も感心する演技を重ねる
和香那の趣味は雅弥に教え込んでいた
好きな食べ物、好きな音楽、好むブランド
和香那としては話が弾む相手だろう。
だけど、わざと雅弥は話は和香那と弾ませて熱い視線は私に向けさせた
「それで藤田さんは、どんな映画が好きなんですか?」
和香那は分かりやすく目の色をかえた
さっきから、和香那には顔を向けるけど
雅弥の身体は私に向いたまま。
私といる時、男性に必死にアプローチされるのは和香那が定番だった。
その逆パターンはきっと彼女を苛立たせる。
「あ、ちょっとお手洗いに……」
私は頃合いを見計らって席を立った
――雅弥、お願いね
この計画は雅弥にかかっている。
席に戻ると、和香那と雅弥は楽しげに会話を弾ませていた。
「和香那、ごめん。仕事ミスって、呼び出された。30分で終わるから会社に行って戻るまで一時間ほどどこかで待っててくれる?」
今まで和香那と楽しそうに話していた雅弥がはっきりとがっかりした顔をした
「藤田さん……」
そこへ和香那が雅弥に声をかけた
「小塚さん、あの……一時間私といてもらってもいいですか?」
「え、和香那そんなの迷惑だよ」
「いえ。藤田さん、僕も彼女とお話ししてますので、お仕事いってらしてください。共通の趣味が多くてもっとお話がしたいし」
「じゃ、すみませんが……和香那ごめんね」
「ううん。早く帰ってきてね」
私が店を出るまで、雅弥は私を目で追う。
振り返ると、和香那はそんな雅弥を見ていた。
上手く行きそう。
私は、この絶対失敗できない最初の関門を上手く抜けたと判断した。
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