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騒がしいたこやきパーティーが終わり、みんなで片付けタイム。
やっぱり潤と歩くんがせっせと片付けをしてくれていて、武蔵先輩は泡のついたスポンジを振り回して逆に汚している。ここ私の家なんだけどな……。武蔵先輩大人しくする方法ないのかな。
「俺がすべてをピカピカにしてやる!」
「ちょっと! 泡ついたんだけど! 馬鹿!」
泡が跳ねた実里くんが怒りだして言い合いになっている。けれど、武蔵先輩はお構いなしにお皿を洗っていた。
ああ、もう喧嘩はじまっちゃってるよ。……あれ? そういえば和葉はどこだろう。
狭い部屋だからすぐに見つかるはずなのに見当たらない。
「あ……」
ゆらゆらと波打つカーテン。
いつの間にか窓が開いてるようだった。
まるで引き寄せられるように足を進め、そうっと花柄のカーテンを捲った。
そこは部屋の中とは別世界のように閑散としていて、ベランダで一人佇む金色の髪の人物に目を奪われる。
どこか儚げに見える横顔を淡い月の光がなぞる。
「……なんだよ」
私がいることに気づくと和葉の顔が歪んだ。
「さぼり発見」
「人が多すぎても邪魔だろ」
そりゃそうだけど。和葉の場合そんなことよりも面倒くさいからなんだろうな。いっつも無気力なんだから。
「なぁ、女が貰って喜ぶ花ってなんだ」
「花……?」
和葉の口から出てきた言葉に耳を疑う。和葉と花ってかなり意外な組み合わせだなぁ。
「花屋さんにミニブーケとか今可愛いのたくさんあるよね」
「ミニブーケ……」
呟くように小声で言う和葉は渡す相手のことを考えているのだろうか。どことなく優しい表情になっている。
「誰かにあげるの?」
もしかして和葉の彼女とか?
すると、にやりと意地悪く微笑みだす和葉。私を見下しながら、囁く。
「俺の秘密、知りたいわけ?」
耳の奥が痺れそうなくらいの低音で甘い声。
「……っ」
和葉の声ってすごく色気があって私には刺激が強すぎる。
「まぁ……お前になら教えてやってもいいけど?」
「え、」
「明日、終業式が終わったら駅前集合」
な、なんか勝手に決められてるけど……!
「どうせ暇だろ」
「……暇だけど」
全く詳細がわからないんだけど、駅前集合ってどこに行くつもりなんだろう。でも今は話す気なさそうだ。
「じゃあ、明日のお前の時間は俺のもの」
強引な言葉を残して、和葉は私を横切って部屋に入っていく。
その瞬間――――ふわり、甘ったるい香りがした気がした。
彼がいつも食べているキャラメルみたいな香りが。
大事なことは何一つ言わずに、伝えられたのは待ち合わせ場所だけ。
「勝手なんだから……」
海の紅月くらげさん