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海の紅月くらげさん
終業式が終わり、和葉が待つ駅前に向かうと既に彼は到着していた。
目立つのは好きじゃないらしいけれど、すごく目立ってるなぁ。女の子達がちらちらと見ているのがわかる。
「和葉」
周りの目を気にしながら声をかけると、和葉は小さなため息を吐いて私の頭の上に手をのせた。
「いくぞ」
「え……!?」
行く場所を言われないまま、和葉が歩いていってしまう。その背中を慌てて追いかける。
ちゃんと私がついてきているか時々振り返って確かめてくる優しさに少し笑ってしまいそうになった。
「……隣歩けよ」
「だって和葉、歩くの速いよ」
何故だか和葉は驚いた様子で目を丸くしている。私なにかおかしいこと言ったっけ?
「……速かったのか」
「うん、少し」
「気をつける」
和葉は速度を落として隣を歩いてくれた。
歩いていると、突然和葉が立ち止まったので追い抜いてしまった。
振り返ると和葉が難しそうな顔をして花屋さんに並んでいるミニブーケを眺めている。
「花、どれがいいと思う」
これを一緒に選んでほしかったのかな。
和葉が花を贈りたいと思う相手は、どんな人なんだろう。
「きっと私が選ぶよりも、和葉が選んだ方が相手は嬉しいと思うよ」
見ず知らずの人が選んだ花よりも、和葉が一生懸命選んだ花をもらった方がきっと想いも伝わる。
「……俺じゃわかんねぇからお前連れてきたんだぞ」
「じゃあ、渡す相手の人に似合いそうなのはどれだと思う?」
真剣な面持ちで和葉は色とりどりのブーケを一つひとつ見ると、小さな向日葵のミニブーケを手に取った。
「……これが似合う」
和葉は優しげな表情で、相手がすごく大事な人なのだとわかった。
向日葵が似合う人。きっと明るくて笑顔が素敵な人なんだろうな。
お会計を済ませた和葉に「じゃあ、またね」と言うと、腕を掴まれた。
「お前もこいよ」
「え?」
「紹介する」
いいのかな。彼女とか片想いの相手じゃないの? 頭の中でぐるぐると考えていると、私の手首を掴んでいた和葉の手が離れた。
そして、そのまま先に歩いていっていく。
慌てて和葉を追うと、和葉は先ほどのように歩調を私に合わせてくれた。
連れてこられたのは病院だった。階段を上がり、和葉の後ろを黙ってついていく。
和葉が花を渡したい相手、病院、この二つでわかってしまう。
きっと相手はここの患者なんだ。
……緊張してきた。私が会ってもいいのかな。
和葉は病室のドアの前で立ち止まると、小さな声で言った。
「あんまり大きな声だすと怖がるから気をつけろよ」
「え……う、うん」
どんな子なんだろう。そんなことを考えていると、合図なくドアが開かれた。
「……っ!」
視界に入った光景に思わず息を飲む。白いカーテンが風に靡き、その隙間から木漏れ日が差し込んでいる。
高い位置で二つに結ばれた薄茶色の長い髪に潤んだ大きな瞳。人形のように可愛らしい女の子。
初対面のはずなのに、どこかで会ったことあるような気がする。