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第8章:双子の牙と揺れる絆
星の封印――第二の地は、宙に浮かぶ“失われた浮遊都市”。
かつて高度な文明を持った星が滅んだ後、空中に残された幻の遺跡だった。
セレナは星図を手に、祈るような表情をしていた。
「この場所の封印を解かないと、ルシフェルの力の波動がさらに広がってしまうわ……」
ゲズは頷いた。
「分かってる。ここで止める」
しかし、祠の扉を目前にして、突如空が裂けた。
出現したのは、ルシフェルの尖兵――双子の暗殺者・ゼルとナスカ。
ゼルは冷酷な眼差しの少年。
ナスカは無邪気に笑う少女。
だがその実力は、歴代尖兵の中でも群を抜いていた。
「お前らにはここで、終わってもらうよ」
「ねえゲズくん、雷の人だよね? 壊しちゃうね」
戦闘が始まる。
ゲズは雷の神速を使い、ゼルと一進一退の攻防を繰り広げる。
セレナは後方で回復とバリアを展開し、支援する。
だが、双子の連携は完璧だった。
ゼルの刃がゲズの脇腹を裂き、ナスカの呪縛術がセレナの足を封じる。
「くそっ、セレナッ、動けるか!?」
「……ごめん……っ、動けない……!」
焦燥と怒りがゲズの胸を支配する。
そのとき――またしても、雷の力が暴走を始める。
目の色が変わり、空が裂けるような稲妻が空間を切り裂いた。
「ゲズ、やめて!! それ以上は自分を壊すだけ!!」
だがゲズにはもう届いていない。
雷がゼルとナスカを吹き飛ばし、遺跡の一部が崩れ始める。
その瞬間――セレナはゲズの前に立ち、自ら雷を受け止める。
「――ゲズ!! 私は、あなたの“盾”なの!!」
爆音のあと、ゲズの暴走は止まり、彼は崩れ落ちるセレナを抱きとめた。
「……なんで、そこまで……!」
「あなたが、希望だから……リオン兄さんの……願いだから……」
⸻
ゼルとナスカは重傷を負いながらも撤退した。
だが戦闘の代償は大きかった。
セレナは、雷の暴走の直撃を受け、身体のバランスを崩してしまう。
回復に時間が必要――
「……だから、しばらく私、ここに残るわ」
「何言ってるんだよ、セレナ。お前がいないと、俺……また暴走するかもしれない!」
セレナは微笑んだ。
「それでも、あなたは前に進める人よ。
私が信じてる。
……ゲズ、お願い。次の封印も、あなたの手で守って」
⸻
ふたりは短い別れを告げ、ゲズは単身、次の封印の地へと旅立った。
彼の目には、もう“迷い”はなかった。
雷の紋章は静かに輝き、
その胸にあるのは――リオンとセレナ、ふたりの想いだった。
⸻
一方、ルシフェルは静かに笑っていた。
「ふむ……仲間を失うたび、力を深める。
面白い。
では次は……“彼”を送ろうか。
ゲズの心を砕く、最もふさわしい者を――」
虚空の闇が、別の影を生み出し始めていた。