テラーノベル
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凄くみたい。
あの下。
あのマスクの下には どんな顔があるのか。
どんな表情が隠されているのか。
S「腹減ったー」
「今から4限目やんけー」
「だるぅぅ」
S「早弁しようかな笑笑」
「耐えろよばかー笑」
「まじでそれなー笑」
S「てか4限目数学じゃね」
「うわ、𓏸𓏸じゃん」
「はげだ、はげはげ」
S「あいつ俺にだけ厳しいのよねー」
「お前が課題やってこないからだろ!」
「1回でもやってきたことあるか?」
S「あるよ、きっと、あるよ、、、」
「絶対ねぇだろ」
「確信犯ー!」
チャイムがなる。
S「あ、」
「またなー」
「じゃ」
S「じゃねー」
今日は数学の授業に集中出来なかった。
いや、いつも集中してないんだけどさ。
今日は特に。
俺は昼休みに大きな作戦を決行するから。
「「ありがとうございましたー」」
S「ふー」
「勇、」
S「ごめん!俺トイレ!!」
「え、おぉ、」
「あんなデカ声で、」
いつも昼休憩の時間。
友達と喋っていると
何処かへ行ってしまっている
吉田さんを好奇心に負けた俺は
こっそりつけていった。
S「吉田さんどこまでいってんの、」
階段を上がっているに連れ
理科準備室。音楽室。美術室。
昼休憩の間人の気配が全く
ない場所を通過していく。
吉田さんの足音がピタッと止まった。
着いた場所は立入禁止の屋上と
4階を繋ぐ薄暗い階段。
カチャ、と箸入れを開ける音が
少し不気味な階段に響いた。
俺は階段の踊り場に身を乗り出して
吉田さんの顔を確認しようとした。
音を立てないように立ち上がろうとするが
上履きが少し傷んだ階段を踏み
ミシミシ、とかなり大きな音が
鳴ってしまった。
俺の顔だけが吉田さんからは
見えてる感じ。
びっくりした吉田さんはお箸を2本とも
落としてしまった。
そして俺の存在に気づいた瞬間
咄嗟に少し大きな制服で口元を隠した。
S「わ、」
思わず声が出てしまった。
だって。
少しだけ見えた顔は
パッチリした目からは想像できない
鼻筋の通った綺麗な鼻。
でもぷっくらした可愛らしい唇。
こんなに整った顔をしているのに
何故マスクなんてしているのか
不思議になって堪らなかった。
Y「な、なんですか、」
いつもクラスで騒いでいる
俺が目の前にいることに
少しオドオドしていた。
S「え、あ、あぁ!ごめんね、急に」
Y「い、いえ、全然、何か
御用でしょうか、、」
S「いやっ、特に用があるわけ
じゃないんだけど」
Y「もしかして、僕邪魔、ですか、?」
S「!、いやいや、ぜんっぜん!
そんなことない」
Y「よかったです、」
少しだけ静寂が階段の空気を呑んだ後
俺は吉田さんの隣に
腰掛けようと階段をのぼった。
Y「えっ、と」
いきなり隣に座ってきた
俺を見てかなり困惑しているようだ。
S「吉田さんっていつも
ここで食ってんの?」
Y「うぇ、まぁ、そうです、ね」
S「ここさー、なんか怖くない?」
Y「そうです、か?僕は好きです、
人は居ないし、 落ち着くし、何より僕、
友達居ないので笑」
笑っているその声の奥に
何処か寂しさを感じてしまった。
S「落ち着く、のか」
Y「佐野さんは、
いつもお友達に囲まれてますよね、」
S「佐野さん、!?」
Y「え、いやでした、か」
S「覚えててくれたの!」
Y「え、は、はい」
S「嬉し、」
Y「ぬはっ、佐野さんって面白いんですね」
S「そ、そう?初めて言われた」
ぬはっなんて笑い方。
初めて聞いた。
S「ね、吉田さん」
Y「はい、?」
また俺から話題を切り出した。
S「もし良かったら、」
Y「はい、、、」
S「その手、除けて見てくれないかな、」
Y「えっと、、」
まだ口元にある手に
少しだけ触れる。
S「俺さ、吉田さんのマスクしてない姿が
見たくてさ、今日ここに来たんだよね、、」
Y「あ、だから、こんなに、
誰も好まない場所に、」
S「そう、引いたらごめん」
Y「べ、別に引かないですよ、」
そう言うと思ったよりすんなり
手を除けた。
S「綺麗だよね、やっぱり」
Y「え、そ、そんなこと、」
S「綺麗だよ、吉田さんは」
Y「えぇ、ありがとうございます。」
S「なんでいつもマスク付けてるの、?」
Y「特に深い理由は無いんですけど、
一番の理由はやっぱり落ち着く。
からですかね」
S「勿体ないよ、綺麗な顔なのに」
Y「誰かに見せる
必要なんてないと思ってます」
S「どうして、吉田さんはそう思うの」
Y「本当の僕は僕にとって特別な人だけが
知っていればいいのになーとか、
ちょっとだけ拗らせてるんですよ僕」
S「急に、ロマンチックな事言うね」
Y「厨二病くさいですかね、笑、
高一なのに」
S「そんなことないよ、でも」
Y「でも、?」
S「俺が特別な人になっちゃった、笑」
Y「わ、確かにそうなりますね、」
S「一瞬にして矛盾したじゃんかー笑」
Y「でも、なんだか、僕佐野さんが
特別な人になる予感がします」
S「え、何それー、プロポーズ?」
Y「えー笑まだ初めて
話して3分くらいですよ!」
S「ふはは、冗談だよ!笑」
Y「一つだけ言っていいですか、?」
S「ん?、なに?」
Y「佐野さんってもう
少し怖いイメージがありました」
S「え、おれそんな厳つい、?」
Y「いえ、これは僕の偏見なんですけど
陽キャって怖いんですよね、」
S「なんで怖いの、?」
Y「急に重い話になるんですけど、大丈夫ですか?」
S「ぅん、大丈夫」
Y「僕中学で虐められてて、あ、でも、
からかいがエスカレートした、みたいな
仲が良かったんですよ、その人達とは
遊びに行った時に昆虫食があって、
僕虫が大嫌いで、それを知ってて無理やり、
みたいな、?だから、
怖いんですよねー、笑」
S「そっ、か」
Y「そこから、虫がもっと苦手に
なりました笑」
初めて話してから少ししか経っていないのに
こんなに俺に過去を話して
心を開いてくれている。
なのに、何も言えない俺が無力に
思えてきて、、、。
Y「ぅえっ、」
気づけば少し小さくてふわふわした
体を包み込んでいた。
Y「佐野さ、」
抱きしめる力が強くなったのを
感じた吉田さんは俺の肩に顎を乗せてきた。
Y「これ、秘密ですよ」
その時俺はチャイムなんて全く
聞こえていなかった。
ここでの話は俺たち2人だけの秘密。
「勇斗〜、昨日のトイレ長すぎだろ」
「いや、それな?
トイレ以外にどっか行ってた?」
S「いやいや、俺の腹が
限界を迎えてたんだわ」
「なんだ、ただの腹痛かよ」
「俺らのこと急に
避けだしたかとおもってビビったわ」
S「お前らの事を避ける?あほか」
「俺たちはニコイチだもんねー♡」
そう言いながら抱きついてくる
友達を愛想笑いしながら引き剥がした。
朝のホームルームが始まった。
ここの地域での騒音被害があるとか、
授業の入れ替わりだとか、
くだらない話を聞き流した。
吉田さんの方を見る。
靡くカーテンに隠れて眠っている。
あんなに真面目なイメージの吉田さんが。
昨夜は眠れなかったのだろうか
俺があんなことをしてしまったから。
俺の中で膨らんでいく不安はやがて
大きな風船となり
クラス全員の挨拶でパンッと破裂した。
S「吉田さんっ」
Y「あ、佐野さん」
弁当を持って吉田さんの隣に腰かける。
S「一緒いい?」
Y「もちろん」
吉田さんの弁当よりも
大きい自分の弁当を開ける。
Y「わ、卵焼き美味しそう」
S「でしょ?俺の自信作」
Y「自分でつくってるんですか、!」
S「ふふん、凄いだろ」
Y「はい、とても!」
S「いざ言われると、照れるな」
Y「いっぱい照れてくださいっ」
S「なんだよそれー笑」
しばらく2人で食べているとふと、
今朝のことを聞きたくなってしまった。
S「吉田さん寝てたけど、
寝れなかったの?」
Y「え?笑見てたの?」
S「見させて頂きました、」
Y「新しいクエストがあってさー」
S「え!?ゲームすんの、吉田さん」
Y「あれ?真面目なイメージ?」
S「てっきり、ガリ勉君かと、、」
Y「全然!テストの点数も悪いし」
S「うっそ、」
Y「幻滅した?笑笑」
S「い、いえ、とんでもない」
良かった。
昨日の俺が原因じゃないのか。
その後
2人で楽しく雑談しながら昼休みを終えた。
テスト返すぞー
「おれ、74点ー」
「俺40点ー、まぁまぁ」
「俺の勝ちー!」
「くそー、勇斗は?」
S「60」
「60?いいやん」
S「だろ」
数学以外はまぁ、
できるんだよな
Y「はぁぁぁ、」
S「どうした?そんな大きな溜息ついて」
Y「いや、実はテストの点数が悪くて」
S「えー、何点だったの?」
吉田さんの悪いの基準って
40.50位かな〜。
Y「4、でした」
S「40点かー大丈夫だよ」
Y「あ、いや、その」
S「ん?」
Y「よん、てん」
S「うぇ、」
Y「昨日言ったじゃないですか、悪いって」
気まずそうに上目遣いをしてくる
吉田さんがどちゃクソに
可愛く思った。
S「良かったら今週の日曜
俺ん家で勉強しない?」
これは、下心が見え見えすぎたか。
Y「え!いいんですか?」
S「全然!俺も一緒に勉強したいし」
Y「ありがとうございます、」
少しだけ口角を上げながら
弁当を食べる吉田さんを
俺は内心ニヤニヤしながら
ずっと見つめていた。
「テスト終わったし席替えするぞー」
「よっしゃぁぁぁ」
「先生神すぎなんだがー!」
S「席替えかー」
この席から吉田さんを
見れなくなると思うと、、、。
「おい佐野早くくじを引きに来い」
S「あ、さーせん」
「勇斗しっかりしろよー笑」
変わらず1番後ろの席。
隣は,,,。
Y「あ、佐野さん」
S「吉田さんじゃん!よろしく」
Y「いえ、こちらこそ
よろしくお願いします」
ラッキー。先生やっぱり神だわ。
Y「隣佐野さ、」
「じゃあ授業始めるぞー」
担任の声で遮られてしまった。
なんていったんだろう。
英語の時間
外国の映画を見る。
皆が画面へ近づくという言い訳を持って
友達の近くへと椅子を運ぶ。
なので後ろの席はガラガラ。
皆が前で真剣に映画を見ている中
俺たちは1番後ろの席で
ボーッとする。
S「ねぇ吉田さん」
Y「どうしたんですか?」
S「さっきの席替えんとき
なんて言ってたの?」
Y「あぁ、あの時ですか」
S「そうそうよく聞こえなかったんだよ」
Y「隣が佐野さんで良かったなーっと」
S「そんなこと言ってたんだ、」
Y「隣が一軍の陽キャ女子だったら
絶対話のネタにされてましたからね、、」
S「ネガティブすぎんだろ笑」
俺たちにしか聞こえない程の
小声で俺と吉田さんはコソコソと
会話を続ける。
教室では相変わらずマスク姿の
吉田さん。目元しか見えず
表情が分からない。
俺の好奇心がふつふつと
湧き上がってくる。
このマスクに俺が唇を
重ねたら吉田さんはどんな
反応をするのだろう。
やはり好奇心には抗えない。
いや、これは好奇心では
ないのかもしれない。
好奇心では無いとしたらなんだろう。
欲
吉田さんに触れたいという欲。
なのかもしれない。
S「ねぇ、吉田さん?」
Y「どうしたんです、k、」
マスク越しに唇を当てる。
Y「、!」
吉田さんは固まっていて、
少しして唇を離すと
少し暗くなった教室でも
わかるほどに顔が真っ赤になっていた。
それに気づいた教師が
ゆっくり立ち上がって
俺たちに近づいてきた。
「どうした、体調でも悪いか」
S「俺、保健室に連れて行ってきます」
「おう、頼んだぞ」
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