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サイド ルネ
「わざわざお時間取ってしまってすみません」
「いや、大切な息子のためだ。こちらこそ、ご協力感謝する」
……大切な息子、ねぇ。
ユメちゃんのことは何とも思っていないくせに。いや、邪魔に思っているくせに。
本当、反吐が出る。
けれども、そんなことを顔に出さないように口角を上げて見せた。
「……しかし、ご両親の許可はあるのか?」
「大丈夫ですよー。俺の両親小難しい契約書なんて、全然読んでませんから。……大人って、本当に単純ですよね♪」
ペラリと契約書を捲って見せた。その署名欄には、明らかに違う筆跡の二人のフルネームがある。
「……ま、そのかわりと言ってはなんなんですが、俺からちょーっとお願いがあるんです」
「…………可能な限り、力になろう」
少しの間、横山さんは考え込んでそう言ってくれた。録音もしたし、その言質が取れれば充分だ。
「横山さんって、警備会社の社長ですよねー?少しの間、この人の護衛をお願いしたいんです」
俺はそう言って、ユズちゃんの写真を手渡す。
きっと、あのモンダイジ団ならユズちゃんを追い詰めた大人をコテンパンにするだろう。
だとしたら、その後恨みを買わないように、もう二度と手を出されないように。先に手を打っておく必要がある。
「出来れば、その周りの人達も……」
「いいだろう」
よかった。交渉成立だ。
「……本当に、俺に臓器を渡すつもりなのか?」
帰ろうとした俺に、声を掛けたのは先輩だった。その顔は険しい表情をしている。
「もちろんですよ。事が終わるまでここに泊まるので、安心してください」
対照的に、俺はニッコリ笑ってみせた。「そうじゃなくて!」と先輩が詰め寄る。ダンッ!と壁叩いて叫んだ。
「どうして!こんな赤の他人に対してそこまで出来るんだ!!」
「いやだなぁ、先輩。俺は生徒会長ですよ?生徒全員が過ごしやすい学校生活を送るよう、努力する義務があるんです」
……というのは建前で、本当は先輩のお父さん、横山さんに用があったんだよね。
「……そんな理由で自分を売るなんて、正気じゃない。もっと、命を大切にしないと」
「命を大切に、ねぇ……」
化け物扱いして、自殺まで追い込んだのは、誰だった?綺麗事はもううんざりだ。
「その言葉、ユメちゃんの前でも言えますか?」
「────!!」
ああ、やっぱりあの団を抜けてよかった。
笑いながらこんなこと言うなんて、アイツらが見たら怒られる。