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いつかみたいにまた俺はあの丘に向かう。
毎日居る言うとったし、まあ今日みたいな晴れた夜空やったら殆どの確率で会えるやろ。
この前丘に登った時からは少し間があったけどあいつとは毎日色んなことを喋った。
昨日も丘行ったんか、とかどの科目が好きかとか星のことやったり全然違うことやったり、それくらい俺とあいつは仲良くなっとった。
俺が勝手に思っとるだけかもしれんけど。
早く丘に向かいたくてペダルに力を込める。相変わらず錆びついてこぐ度にキイキイと音が鳴った。
立ちこぎをしたら自然と空が見えて、俺は無意識にスピカを探す。
初めてあいつに教えてもらった時とは違って少し南側に移動しとった。
それを思ったらもう結構日が経っとることに驚いた。
初めて会ってから月日が流れんのが早く感じた。部活でレギュラーになったり金髪のスピードスターとかいう痛い先輩とダブルス組まされたり、思い出したらほんまにきりがなかった。
まあそういうんでも楽しいって思えるようになったんは多分あいつのお陰や。
けたたましいブレーキ音と一緒に丘の下に自転車を置く。
自分でも分かるくらいの急ぎ足で丘を登っていくと、上の方から聞き覚えのある楽しそうな声が聞こえた。いつも1人で居るのに今日は誰かが一緒にいるみたいやった。
それを考えて俺の足は丘を登るのを止めてしまいそうなくらいペースダウンしていた。まあ勘違いかもしれへんからこっそりといつもあいつが居る場所を覗き見する。堂々と彼女のとこに行く勇気は無かった。
よく目を凝らして見たら俺がいつも座る場所には男が座っとって、そいつと仲良さげに楽しそうに話しとった。しかも男のことをよう見たら部活の先輩の謙也さんで、何や無性に苛ついた。
もう会う気はすっかり失せてしまって、苛ついた感情だけがじわりじわりと俺を支配する。
踵を返してさっき来た道を引き返す。丘を下りるときにいつも見えていたスピカは今日は見つけることができへんかった。