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No.1〜事の発端〜
「よ、」
「あ、おはよ」
俺には幼稚園からずっと一緒の幼なじみが2人いる。
1人は今挨拶したバレー部の東玲(あずまれい)。
玲は小さい頃から運動神経が周りよりも良かった。
足も早いし勉強だってなんでもこなしてしまう。
それからもう1人は_
「2人ともおはよー!」
手芸部の露夜凛海(つゆやりんか)。
凛海もまた手先が器用だ。
でもそれに本人が気づいたのは小学校の家庭科の授業のとき。
それ以来中学、高校とどちらも手芸部に所属している。
ちなみに俺の名前は五月雨瞬(さみだれしゅん)。
部活は玲と同じバレー部。
別に俺は運動神経が特別良い訳でも、反射神経がある訳でもないけど、なんとなく楽しそうで玲に着いて行った。
凛海について行って手芸部に入ると言う手もあったけど俺には向いていないと判断したのだ。
部活でもそれなりに上手くやっているし、人間関係に困った日々ではない。
教室に入れば挨拶をする友達だって居るし、何より2人といる限りは基本的になんでも出来る。
だからこれからも特に変わらない日々を送ると、そう思い込んでしまっていた。
だけど人にはいつか最期と言うものがあって。
俺の最期は2人よりも数年早かったらしい。
「五月雨〜、お前数学係だったよな?」
「はい、」
「じゃあノート職員室に運んどいてくれ」
「了解っす」
3ヶ月に1回ぐらいのペースで頼まれるこの仕事。
別に運ぶだけだから苦ではないけど今日だけはいつもと何か違った。
クラスの人数分積み上がったノートを持ち上げた時だった。
「っ…!?」
突然胸が痛んだのだ。
今までも何度かそういう経験はあったけれど、いつもの比にはならないくらいの痛みだった。
どうしても痛みに耐えられず、持ちかけていた数学ノートがバラバラと落ちる音を聞きながら俺は床に倒れ込んだ。
都合よく傍に玲が居てくれて俺は保健室に運ばれた。
…姫抱きで運ばれたからそこは気に入らないけど。
保健室の先生は俺の状態を見てここでの処置は難しいと判断したらしい。
俺は先生の車に乗せられて病院に連れられた。
診断結果は
「体に以上はありませんでした。」
俺の体に以上はなかったらしい。
でも俺を診た医者はその結果には似合わぬ顔をしていた。
「しかし…」
なんとなく、ドラマや映画でよく見る展開だなと思うほどには俺の中になぜか余裕があった。
「五月雨さん、あなたはもう…長くないかもしれません…」
深刻そうな顔をして医者はそう言った。