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#シリアス
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ついに入試本番を終えた。
ひまりは「全力を出したよ」と晴れやかな顔で言うとったが、俺の心臓はあの日以来
アイドリングに失敗したボロ車のようにガタガタと震えっぱなしや。
そして迎えた、合格発表の朝
午前9時50分。
合格発表はWebサイトで10時に行われる。
事務所の応接間には、大型モニターが設置され、その前には俺、和幸
そしてなぜか正装をした長治たちが、組の襲撃を待つ時より殺気立った顔で並んどった。
1分おきに眼鏡を外し、ネクタイを締め直し、タバコを逆さまにくわえようとして和幸に止められる。
「回線が混み合って落ちたら承知せんぞ!」という俺の一言で、和幸が事務所に最強の光回線を三本引き込み
専用のサーバーを立てるという暴挙に出た。
「……和幸、あと何分や」
「兄貴、さっき聞いたばかりっすよ。あと5分っす」
◆◇◆◇
「……アカン。ワシには無理や」
9時58分。
あんなに威勢の良かった俺が、突然モニターから背を向け、部屋の隅っこで膝を抱えて蹲りおった。
「兄貴!? 何してんすか、しっかりしてください!」
「……もし、番号がなかったら…ワシ……和幸、お前がボタンを押せ。…ワシは、ひまりの部屋の掃除に行ってくる」
「ちょ、兄貴が押さなきゃ意味ないでしょ!」
和幸に引きずり戻されたその時、時計の針が10時を指した。
「……出たっ! 兄貴、サイト繋がりましたッ!!」
和幸の叫び。俺は恐る恐る、片目だけを開けて画面を覗き込んだ。
受験番号順に並んだ数字。
ひまりの番号は……『1089』。
「1080……1085……1088……」
俺の心臓が止まりかけたその次、画面に鮮やかな桜のイラストと共に、その数字が踊っとった。
【1089】
「……あ、あった……。……あったぞ、和幸ォ!!」
「兄貴ッ!お嬢、お嬢合格したんすねッ!!」
「「「うおおおおおおおっ!!!」」」
事務所中に、男たちの野太い咆哮が響き渡った。
長治は号泣しながら万歳三唱し、他の若い衆も抱き合って泣いとる。
俺は膝の力が抜け、その場にヘナヘナと座り込んだ。
そこへ、学校から戻ってきたひまりが、息を切らして駆け込んできた。
モニターの数字を見た瞬間、ひまりの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「……パパ……! 私…私、受かったよ!」
俺はひまりを、今までの人生で一番強く、そして一番優しく抱きしめた。
「おう!ほんまようやった!!ひまり。……お前は、ワシの誇りやで!」
眼鏡が曇って、ひまりの顔がよく見えん。
やが、あの子の温もりと、震える肩の感触でわかった。
ワシらが戦ってきたこの数年間は、間違いやなかったんや。
「兄貴! 今日は街中の赤飯、全部買い占めてきますッ!!」
「ほんなら病院建設の土地、今から探しとけ」
「それはまだ早すぎますって!」