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#シリアス
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ひまりが難関校「聖ルミエール医科進学中学」の制服に袖を通した日。
鏡の前で照れくさそうに笑う娘を見て、俺は事務所の奥で一人、男泣きに暮れとった。
「……和幸。見てみぃ、あの子の凛々しい姿を。…もう『おじさん』なんて呼んどったガキやない。立派なレディや」
「兄貴、早すぎますって。ほら、そろそろ出発しないと入学式に遅れます」
俺は「擬態」の極致として、刺青をサポーターで完璧に隠し、威圧感をゼロにするための伊達眼鏡を装着。
さらには、和幸に命じてレンタルさせた「プリウス」に乗り込んだ。
黒塗りのベンツやセンチュリーは、今日だけは封印や。
学校の正門に着くと、そこは別世界やった。
並んどる親御さんたちは、代々医者の家系や実業家ばかり。
漂う香水の匂いからして、うちの事務所の「タバコと線香の匂い」とは格が違う。
「あ、どうも……黒龍院です……」と、腰を低くして挨拶回りをするが
どうしても隠しきれん「背筋の伸び方」と「鋭い眼光」のせいで、周囲の母親たちが小刻みに距離を取りよる。
「……和幸。ワシ、浮いとらんか?」
「兄貴、最大限努力してますけど…その、歩き方が完全に『若頭の出迎えを待つ親分』になってます」
式典が終わり、教室での自己紹介タイム。俺は教室の後ろで、息を殺して見守った。
「……黒龍院ひまりです。将来は、どんな人でも救えるお医者さんになりたいです。…好きな食べ物は、父の作ったカレーです!」
教室に小さな笑いと拍手が起きる。
だが、その直後。
隣に座っとる派手な身なりの女子生徒が
ひまりの鞄に付いとる「組員手作りの不気味な御守り」を見て、クスクスと笑いおった。
「……何それ、変なクマ。…趣味、悪くない?」
ひまりの顔が少し曇る。
俺の右拳がピクリと動いたが、和幸が必死に俺の裾を引っ張って制止した。
帰り道
ひまりは「大丈夫だよ、パパ」と笑っとったが、俺の腹は煮えくり返っとった。
「……和幸。あのガキの親、どこのどいつや」
「兄貴、またそれっすか! ダメですよ、学校で抗争なんて!」
「……アホか。そんな野蛮なことせんわ。…和幸。あのガキが『可愛い』って言いそうな最新の文房具と、女子中学生の間で流行っとるスイーツ……。それから、ひまりの御守りの『改良版』を、プロのデザイナーに発注せぇ」
「……え、買収するんすか?」
「…『懐柔』や。……ひまりがこの学校で、誰からも後ろ指指されんよう、ワシが裏から完璧な『シマ』を作ったる」
中学生になったひまりと、さらに過保護に拍車がかかる
お嬢様の学び舎を舞台に、極道流の「平和な学校生活」への挑戦が始まる
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