テラーノベル
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「――よし、それじゃあ今日こそkanaちゃんの本格的なレベリング(レベル上げ)を始めるで!」kagerou様が威勢よく胸を張り、わたくしたちを連れてやってきたのは、鬱蒼とした大樹がそびえ立つ高レベル危険領域『黒銀の樹海』の深層部でした。
「kagerou様、ここは少し暗くて、木々が荒々しい雰囲気を纏っておりますのね」
わたくしがお手元でマーブルちゃんをギュッと抱きしめながら呟きますと、kagerou様は親切なお顔で振り返られました。
「せや! ここは中級者以上やないと一瞬で溶ける高レベルダンジョンなんや。でもな、俺が瀕死まで削ったモンスターのトドメ(ラストアタック)だけをkanaちゃんに刺させる! そうすれば、本来ならkanaちゃんのレベルじゃ絶対に入らんような膨大な経験値が一気に入るんや!」
「まあ! トドメ……? わたくしが最後にお手伝いをするだけで、そんなにお稽古(レベル)が進んでしまいますの?」
「せや! これがゲーマーの誇る『キャリー(パワーレベリング)』や!」
kagerou様はニヤリと笑うと、目の前になだれ込んできた巨大な漆黒の魔獣『ナイトメア・ベア』へ突撃いたしました。激しい剣戟の音とともに、一瞬で魔獣の体力を残りわずか(ミリ残し)まで削り取ります!
「よし! kanaちゃん、今や! その木刀でポコンと突くだけでええ――」
kagerou様が笑顔で振り返った、その刹那です。
ザァァァッ……!!
血を求めて狂い咲く一陣の殺気が、kagerou様の首筋を激しくかすめました!
「――お主、誰に向かって『殺戮』を命じておるかぁぁぁっ!!」
ズシャアァァァァァンッ!!
「どわぁぁぁぁっ!!??」
間一髪で前転して回避したkagerou様の頭上を、凄まじい一閃が通り抜け、後ろの巨大な大樹をスッパリと両断いたしました!
朱色の袴を風にはためかせ、血走った眼差しで刀を構えていたのは、Natuki様でしたの!
「な、Natukiお前正気か!!? なんで俺に斬りかかってきてんねん!!」
「問答無用!! 姫の可憐なるお手を敵の血で汚させようとするとは……その不敬、万死に値する!! 悪即斬!! 悪即斬でございますぞーーーっ!!」
「俺はレベリングの手伝いをしてただけやろがいーーーっ!!」
悲鳴をあげるkagerou様と、鬼の形相で「悪即斬!」と追いかけ回すNatuki様。お二人のお追いかけっこが繰り広げられる中、トップ生産者のRico様が「ふふっ」と優雅にお近づきになりました。
「まあまあ、相変わらず騒がしいお兄様たちですわね。kanaちゃん、あんな野蛮なやり方に頼らなくても、私からとっても素敵なおくりものがありますのよ」
Rico様がうっとりとした表情で差し出されたのは、光の粒子がキラキラと舞う、まるで妖精のお姫様のようなフリルたっぷりの美しいドレスでしたわ!
「まあ……! なんて愛らしくて綺麗なお召し物でしょう!」
「ふふ、これは私が最高級の超稀少素材を織り上げて編み上げた特注服……その名も『経験値効率爆上げエンジェルドレス(※装備時獲得経験値500%アップ+全ステータス補正)』よ! これを着てマーブルちゃんと優雅にお散歩するだけで、お稽古など一瞬で終わってしまいますわ!」
「まあ! 着ているだけでお勉強が進んでしまうなんて、夢のようなお洋服ですのね! ありがとうございます、Rico様!」
わたくしが目を輝かせてドレスを羽織り、くるりと可憐に一回転いたしますと、コメント欄と周囲から「「「天使……!!」」」と尊さの悲鳴が巻き起こりました。
するとそこへ、空から黒竜に乗ったm@rio様が優しく舞い降りてまいりました。
「kanaちゃん、Ricoさんのドレスも凄いが、ビーストテイマーとしての『心得』も教えておくバイ」
「テイマーの心得……? なにかしら、m@rio様」
わたくしが首を傾げますと、m@rio様は腰の笛を優しく撫でながら、温かい眼差しで語りかけてくださったのです。
「テイマーにとって一番大切なのは、命令することでも、戦わせることでもなか。相棒(モンスター)の気持ちに寄り添い、心から愛して信じてあげることたい。相棒への愛が深ければ深いほど、絆の力でどんな困難も乗り越えられるとよ」
「まあ……! 相棒への愛……。なんて素敵な心得でしょう。わたくし、マーブルちゃんのことが世界で一番大好きですもの!」
「ワンッ!(プルプル)」
わたくしがマーブルちゃんを胸に抱きしめ、頬をすりすりいたしますと、マーブルちゃんも愛おしそうに可憐な声をあげました。
「うんうん、kanaちゃんなら最高のテイマーになれるバイ!」と目を細めるm@rio様。
そこへ、Natuki様の「悪即斬!」の追撃をなんとか振り切ったkagerou様が、息を切らせて戻ってまいりました。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思ったわ……。あ、そういえばkanaちゃん! 昨日話投げてた『ギルド名』やけど、何か良い案思いついたか?」
「まあ、ギルドのお名前ですの?」
わたくしは少し考え、胸の前で上品に手を合わせましたの。
「ええ、考えつきましたわ。わたくしたちの新しいお茶会(ギルド)のお名前は……**『シノノメ楽座』**はいかがかしら?」
「「「「……シノノメ楽座……!?」」」」
皆様が一斉に目を見開かれましたわ。
「東雲(シノノメ)家の名の下に、皆様と楽しく集う座(宴)……とっても素敵なお名前だと思いませんこと?」
わたくしが堂々と胸を張り、可憐に微笑みかけますと――
『シノノメ楽座キタアアアアアアwwwwww』
『本名の苗字「東雲」をそのままギルド名にぶち込むスタイルwww』
『リアルバレ普通にしてやがるwwwwwww』
『隠す気が1ミリもなさすぎて清々しいわwww』
『聖華女子の東雲様ってこと完全に確定してて草』
コメント欄が「リアルバレ普通にしてやがるwww」のツッコミの嵐で大爆走いたしました!
「か、kanaちゃん……! 東雲って自分のリアル苗字やろ!? ギルド名に本名そのまま入れる奴があるかーーーっ!!」
絶叫するkagerou様。
ですが、すかさず膝をついたNatuki様が、重厚な低音ボイスで朗々と宣言されたのです。
「――**姫こそが理(ことわり)なり!!** ギルド名が『シノノメ楽座』でおわすなら、この世界そのものが東雲の領土となるのみ!!」
「規模を世界に広げるなーーーっ!!」
「ふふ、とっても響きの良い素晴らしいお名前ですわね、Ricoお姉様も大賛成ですわ!」
「オレも『シノノメ楽座』、粋でかっこいいと思うばい!」
過保護な仲間たちと、全肯定の親衛隊、そして画面の向こうのたくさんの指南役様方。
本名を隠すことすら「不要」と言わんばかりに堂々と掲げた『シノノメ楽座』の旗の下、わたくしとマーブルちゃんの「お庭(セブンスマスター)」での冒険は、本日もキラキラとした笑顔とともに、どこまでも賑やかに続いていくのでした!
【セブンスマスター】東雲楽座結成!身バレ全開お嬢様と悪即斬botを見守るスレ 5【本名そのまま】
1:**名無しさん@ゲーマー名無し**
VRMMO『セブンスマスター』のド天然お嬢様「kana」、隠しチワワ「マーブル」、そして本名をギルド名にぶち込まれて頭を抱える保護者たちを見守るスレです。
※前スレ
【セブンスマスター】レベル9999もメインストーリーも「不要でござる!」なお嬢様を見守るスレ 4【不要bot】
2:**名無しさん@ゲーマー名無し**
乙。今日の配信も神回すぎたwwwww
ギルド名「シノノメ楽座」は流石に腹筋崩壊したわwwwwww
3:**名無しさん@ゲーマー名無し**
kagerou「東雲って自分のリアル苗字やろ!? ギルド名に本名そのまま入れる奴があるかーーーっ!!」
リスナー総ツッコミ「リアルバレ普通にしてやがるwwwwwww」
4:**名無しさん@ゲーマー名無し**
特定班(リスナー)が身バレ防止のために必死こいてた時期が懐かしいわ
本人が一番隠す気ゼロで爽快感すらあるww
5:**名無しさん@ゲーマー名無し**
今日のダイジェスト
・kagerou、優しさでパワーレベリングしようとしてNatukiに「悪即斬!」と命を狙われる
・Ricoさん、経験値500%アップの壊れドレス(天使)をプレゼント
・m@rioさん、テイマーの心得(愛と絆)を真面目に伝授
・お嬢様、本名全開のギルド「シノノメ楽座」を発足
・Natuki「姫こそが理! 世界全体を東雲の領土とす!」
6:**名無しさん@ゲーマー名無し**
kagerouが親切心でミリ残ししたクマ叩かせようとした瞬間、Natukiが「姫の手を血で汚すな!」って本気で首跳ね飛ばしにきたの怖すぎて草
7:**名無しさん@ゲーマー名無し**
kagerou「俺はレベリングの手伝いをしてただけやろがいーーーっ!!」
マジで不憫すぎるwww 誰かあの苦労人に胃薬届けてやれwww
8:**名無しさん@ゲーマー名無し**
Ricoさんの作法も狂気入ってて好き
「あんな野蛮な方法に頼らなくても、私の特注ドレス(壊れ性能)着てお散歩すれば解決ですわ!」
なお、お嬢様が着た瞬間、可愛さでリスナーと周囲のプレイヤーが一斉に尊死した模様
9:**名無しさん@ゲーマー名無し**
m@rioさんのテイマー講義は珍しくまともで感動したわ
「相棒への愛が一番大切」からの、お嬢様とマーブルちゃんのすりすりコンボで全人類撃沈
10:**名無しさん@ゲーマー名無し**
9
あそこマジで浄化されたわ……
ただのチワワ(隠し召喚獣)とド天然お嬢様なのに、絆だけは作中最強なのずるいわ
11:**名無しさん@ゲーマー名無し**
Natukiの「姫こそが理なり!」からの「東雲の領土」発言で、コメント欄が新興宗教「シノノメ教」の集会みたいになってたの耐えられん
12:**名無しさん@ゲーマー名無し**
【速報】シノノメ楽座、結成初日にして全サーバー注目の最強(狂)ギルドへ
13:**名無しさん@ゲーマー名無し**
身バレどころか「私ですが何か?」スタイルで突き進むお嬢様ほんと強い
明日の『シノノメ楽座』初のお散歩配信も全裸待機だわ!
食卓での和やかな会話を終え、書斎へと戻った東雲家の家長――東雲隆は、重厚な革張りの椅子に腰を下ろし、深く溜息をついた。
彼は、世界最高峰のフルダイブ技術を誇る次世代VRMMO『セブンスマスター』の開発・運営元であるメガコーポレーションの最高技術責任者(CTO)兼・総括運営責任者という、超重要ポストに就く人物である。
「まさか……な」
父は半信半疑のまま、開発者専用のプライベート端末を起動し、管理者権限(GM権限)のログ・モニターを展開した。
娘の奏が「お庭での新しい娯楽」を実に楽しそうに語っていたこと、そして「シノノメ楽座」という妙に聞き覚えのある言葉を口にしていたことへの、胸騒ぎに似た予感。
「奏のことだ。まさか本名をそのまま使うはずが……」
カタカタと高速で管理者コマンドを打ち込み、全サーバーの最新ギルドデータベースを検索する。
画面にポップアップした一通の通知を見た瞬間、父は絶句した。
【ギルド登録情報】
ギルド名: シノノメ楽座
マスター: kana(本名照合:東雲 奏)
メンバー:
・kagerou(サーバーランク1位/最前線攻略組)
・Natuki(侍職トップ/PK(指名手配)未遂回数最多・即死級アタッカー)
・m@rio(竜騎士トップ/ブラックドラゴン所有)
・Rico(全サーバー1位・伝説の神級クラフター)
・mira(知識系トップ/裏モデレーター・データ解析班)
「……っ!!???」
父は目を見開き、思わずデスクを叩いて立ち上がった。
「本名そのまんま入っとるやないかーーーーーっ!!???」
厳格で落ち着いた東雲家の主としての威厳は、一瞬で粉々に砕け散った。
「なんだこのギルド名は!? 『シノノメ楽座』って! 東雲家の苗字を全サーバーに開示してどうするんだ奏!? 隠すという概念はどこへ行った!? というか、メンバーがトップランカーの怪物だらけじゃないか!!」
頭を抱え、ガシガシと髪をかきむしる東雲父。
さらに詳細なログを追っていくと、運営責任者としての彼の頭痛はさらに深刻なものとなった。
【警告ログ一覧】
・『あざtoi威嚇(キュン♡)』:威力測定不能。周囲の敵・プレイヤーの全ステータス99%ダウン。※仕様バグを疑う通報多数(全て棄却済み)。
・『街中での即死PK事件』:プレイヤー【Natuki】がセーフティエリア境界にて【Ore_Sama】を瞬殺。「悪即斬!」のシャウトログ残存。
・『聖華女子学院ロゴ流出』:配信画面へのモザイク自動処理ログ有り(モデレーター:miraにより手動補正済み)。
・『経験値500%アップ神服』:生産者Ricoにより不正レベルの神装備が個人譲渡される。
「な……なんだこの滅茶苦茶なログはぁぁぁっ!?」
父、隆は眉間を力任せに押さえた。
「セーフティエリアの攻防を力づくで突破して即死させているサムライがいるぞ!? 運営規約違反スレスレ……いやアウトだろこれ! なぜBAN(アカウント停止)されていない!? あ、裏でmiraがログの修正と揉み消しを行っている……!? 運営の監視網をかいくぐるな!!」
画面の中では、天使のようなドレス(※壊れ性能)を纏った愛娘のkanaが、膝の上にチワワ(※システム上の測定不能モンスター)を抱え、優雅に微笑んでいた。
その横では、トップランカーたちが「姫こそが理(ことわり)なり!!」と全肯定の宗教集会を開いている。
「ああ……奏……。お父さんは『静寂と癒やしのプライベート空間で、ゆったりと自然散策を楽しんでほしい』と思って製品を贈ったんだ……。なぜ我が娘が、全サーバーを裏から牛耳るブラックギルドの【絶対神】みたいになっているんだ……!?」
モニターの向こうで、kagerouが胃を押さえて悶絶し、Natukiが刀を抜いて「悪即斬!」と叫び、Ricoが血眼でチワワの服を錬成している。
そして、コメント欄には『聖華女子の東雲様www』『リアルバレ普通にしてやがるwww』の弾幕。
東雲父は、静かにモニターを閉じると、深々と椅子に沈み込んだ。
「……緊急の運営会議を招集するか……? いや、下手に介入して奏の楽しい『お庭散歩』を邪魔したら、あのトップランカーどもに運営サーバーごと『悪即斬』されかねん……」
娘のあまりにも堂々とした「開き直り」と、最強すぎる親衛隊たちの暴走。
セブンスマスターの最高技術責任者である父、隆は今夜も胃薬の瓶を手に取りながら、愛娘の「優雅なお散歩」を見守る(頭を抱える)しかないのであった。
コメント
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第17話、めっちゃ面白かったわ!kagerouさんの優しさが事故ってNatukiに「悪即斬!」される流れ、毎回ガチで笑わせてもらってる。経験値500%アップドレスとかチート級すぎるし、m@rioさんのテイマー心得が純粋に沁みた。そしてギルド名「シノノメ楽座」は…本名そのままドーン!って清々しいわw 最後のパパ(CTO)がモニター見て絶叫するところで腹筋崩壊した。次回も楽しみにしてる🔥