テラーノベル
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あれから、あっという間に一週間と過ぎた
あの後はすぐに解散、
二人に自分たちのことは話さないでいてくれと頼まれ
結局、本当に誰も言えずじまいで時だけが過ぎていった
俺とそろもんさんは、はるさんとうたくんから無茶をするなと説教を食らい
絶賛書類仕事中
D国からもすぐに謝罪と終戦交渉の手紙が送られてきた
開戦時も思ったが、相変わらず足の早い手紙だ
コレじゃ戦争というよりまるで抗争だなとうたくんがぼやいているのを聞いて
きっと、短すぎる戦争として教科書に載っちまいますねと返し
二人してクツクツと小さく笑ったのは記憶に新しい
そんな日の夕方だった
ごんざが言い始めた
ごん「戦地行ってみない?」
それっぽっちの一言にみんな乗り気になって
今晩みんなで出かけることが決まった
勿論、はるさんとうたくんには内緒でだ
約束の時間だ
みんなほぼ着の身着のままで外に飛び出す
とりとめのない話をしながらまだ血と火薬が染み込む土を踏みしめる
あたりはあの時と打って変わって静かだ
上がりきった月を眺めながら歩く寒空の下
先は冷えているものの、体の芯は温かい
人数も多いおかげか、気持ちだけはぽかぽかと暖かかった
そろ「ん〜?」
あす「どうしたの?そろもん」
二人が話し始めてその普通じゃない反応に皆が気を向ける
ごん「どうしました?」
そろ「いや〜あそこ…誰か居ない?」
そう言ってそろもんさんが指した先には確かにうっすらだが人影が見えた
本当に淡いが夜だからよく見える、ランタンの明かりもあった
つき「残党兵っすかね」
じお「遺留品目当ての盗賊かもしれませんね、最近増えてましたし」
どちらにせよ、近づいて確認する他ない
ここは国境も近いんだ、一般市民が襲われたりしたらたまったもんじゃない
恐る恐る、息を殺して近づいていく
近づくたびに見えてくる、集団は多くても5人、皆シャベルか何かを持っていて
どうやら盗賊ではなさそうだ
ただ嫌に静かな集団
少し怖くなってきた
近くの岩場まで近づき隠れて様子をうかがう
すると、不意にあすたが声を上げた
あす「うぇッッ!?」
あすたが出した悲鳴で集団はこちらに気づいたようでのそのそと近づいてくるのがわかった
勢いよく振り返りあすたさんを襲った相手を黙らせようとナイフを突きつけようとした
その時だ、気づいたのは
ねむ「拓人さん…!?」
みんなも気づいたようで驚いたような顔をしていた
じゃああの集団は…!とまた見回すと、
ゆっくりと近づいて来る最中だっただがよく見ると、想さん、麗さん、義盟さんなど見慣れた人たちばっかり
安心して岩陰から出る、
ぎめ「よぉ〜なんやお前らか」
たく「ごめん、驚かせるつもりはなかった」
せい「で?何しに来たん?」
一週間、たった一週間しか離れてなかったのに
なんでこうも懐かしく感じるんだろう
みんなそれぞれ握手と挨拶を交わし
本題に入った
じお「ところで皆さん何を‥?」
ぎめ「あ〜それは、」
ゆう「みてもらったほうが早い、ですね」
そう言って、俺達をランタンで照らされた空間に手招きした
あすたside
吸い込まれてしまいそうな程の紺碧の空
土を掘る乾いた音が、静かな跡に響く
誰も何も喋らない、ただただ大きくも小さくもない音がずっと虚空を埋めているだけ
ざく、ザク、ザクッ
大きめの穴ができると、皆思い思いに手に持っていたものを投げ入れ始めた
義盟さんはベレー帽
清太さんは紺の上着
拓人さんは黒の上着
優真さんはキャスケット帽
麗さんは星のピン
想さんは灰色のパーカー
それぞれ入れ終わると、また土の音がしだす
色んな色で埋まった穴が、段々と土にうずめられて侵食されていく
もう見えなくなったあの物達は、これから先もずっとここの土の中なんだろうか
少し小高い丘になったその土の上に、即興で作った十字架が建てられた
すべてうめおわった清太さんが腰に手を当てて明るく言い放つ
せい「よしッ、コレで山田清太は死んだ」
と言った
ごん「死んだ…?皆さん…生きてます、よね?」
ごんざが不思議そうに聞いてる
ゆう「はい、僕達は生きてますよ?」
さも当然そうに言う優真さんにもはや恐怖すら感じる
意味がわからなくて皆おどおどとしていると
少し笑いながら拓人さんが
たく「肉体的には死んでないよ?でもメメリ国幹部の柳瀬拓人はもう居ない」
肩を少しすくめながら十字架にもたれかかり言う
ねむ「…だからって‥」
皆生きてるのだから、そう続けるねむろの軽くたしなめながら義盟さんが言う
ぎめ「せやな、まぁいらんけど…俺等も決別したいって意味?なんやようわからんが、少なくとも義盟はもう死んだ」
れい「僕達はこの国から去った、それが事実なんだ」
そう「ま、僕達はもうあの時のまんまじゃないってことっすよ」
みんなその言葉に同調する
つき「…じゃあなんか残してくださいよ。先輩たちがこの国で頑張ってた。それもまた事実じゃないですか」
じお「そうですね、過去の記録は未来のためにあるんです。書庫にこんな物がありました」
そう言ってじおるが胸元のポケットから1枚の写真を取り出した
おもむろにその写真を裏返し、裏に書かれた字を俺等に見せる
そこには丁寧な字で
『また逢えますように』
ゆう「…あ」
心当たりがあるように優真さんが声を上げる
じお「また逢いたい…そう思うことを塞ぐのは良くないと僕は思いますけどね」
胸を突かれたように少しどもりだす面々
あす「お、俺ッ‥!義盟さんのバンダナとか…もらっても…い、いいですかね…?」
思ったよりも素頓狂な声が出てしまい、尻すぼみになってしまう
なんでと言われたらどうしよう、否定されたら
そう思う前に声が出てた。俺にしては結構珍しい
あす「いや、その…皆さんの意思を継ぐ?っていうかその‥これなら、誰も忘れないかなって…」
人が本当に死ぬときは誰かに忘れられた時
そう昔本で読んだ気がする
たどたどしいが、ちゃんと言いたいことが伝えられた
静寂が耳に痛い
せい「…ええんちゃう?な、こむぎ」
その静寂を破り、優しい声か書けてくれたのは清太さんだった
ぎめ「おん、俺は全然ええで」
はい、そう言って俺の手に置かれた深い水色のバンダナ
少しくたびれてるけど、温かい、優しい色をしていた
ぎめ「メメリ国のこと、頼んだで」
そうやって声をかけてくれた義盟さんをみて、清太さんが動いた
ねむろside
せい「じゃあ山田はお前にコレあげるわ。今後とも気張れや」
そういってそろもんに差し出したのは自分がつけていた金色のピアス
そろ「え!いいんっすか?もらっちゃって〜」
あいも変わらず空気が読めていない明るさ
もはや通常運転過ぎて、笑えてきた
れい「じゃあ僕は君に!これからも頑張ってね!」
つき「わぁ!ありがとうございます!」
そう言ってつきのに手渡したのは埋めた星のピンとは別のピンが付いた紺色のベレー帽
どちらかと言うと女の子らしいアイテムに顔を歪めることなく
嬉しそうに受け取る精神力は正直すごい
ゆう「じゃあ僕はあなたに」
そう言ってじおるに大きな編笠を差し出す
ゆう「写真、処分しといてくださいね、恥ずかしいので…無茶しないで、マイペースにがんばってください」
肩に手をおいて、励ますかのように言う
じおるさんはまるで前半の話を聞いていないようにありがとうございますとだけ言って笠を受け取っていた
そう「じゃあ君にはコレを贈ります、そーちゃんの甲冑頭〜は重たいので頭の上のヒレっす。これからもがんばってくださいっす」
ちょけながらそう言ってバキと大きな音をたてて一枚、剥がしてごんざに渡していた
ごん「わ〜い…ありがたいんですけど、これどうすればいいですか?」
そう「僕にもちょっとわかんないっすね…」
ふたり揃って何も考えていないらしい
なんだからしいなと、少し笑えてきてしまった
嗚呼、なんていつも通りな仲間たちなんだろう
せい「ゴミドリはよ」
たく「わぁってるって…」
自らの首のヘッドフォンをとりながら、彼は口を開いた
「諦めようとしても、離してくれない奴もいる……二人を頼んだよ、後輩」
そうやって渡された深緑色のヘッドフォン
手を伸ばそうとしても動かない、ただ見つめてしまう
コレを受け取ったら、もう二度とこの人たちに会えない気がして、たまらなく怖い
嗚呼、この人は射撃も上手かったな、もっと教わったりとか、できればよかったのに
短い間だったけど、確かにこの人たちに俺等は惹かれた
もっと話したいって、思ってた
でも、”二人を頼んだよ”、そんな事言われたら____
ねむ「受け取るしかッ…ないじゃないですか…w」
誰にも聞こえない声で呟く
震える手を叱咤して拓人さんの手からヘッドフォンを奪うようにしてとり首にかけた
バトンをなくしてしまわないように
そんな俺の暴挙に、誰も言及しない、きっと気づいてる
ねむ「任せてください…先輩」
冬の終わりを告げる淡雪が
しんしんと降りしきる戦場の後
僕達は、6人の死体を見送った
あの二人にも言えない
大切な先輩たちだった
次回『エピローグ』
コメント
2件
いやもう.....良すぎる(語彙力消滅) なんでこんな神なんすか??? やっぱひびさんのこと尊敬しますわ 天才すぎるっすよ。 ♡500失礼しました!