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───🐤side───
桃『…おはようりうら。』
目が覚めて1番に目にしたのは,ぼんやりと濁った瞳でりうらを見つめるボスの姿だった。
どす黒い闇が垣間見えるその視線に全身の血液が逆流するような感覚を覚える。
赫『…ぼ……す、?』
桃『…。』
生気の抜けた表情からいつもの余裕を感じとることはできず,なんだかこの部屋だけが別世界に取り残されてしまったようだ。
黒い天井に映えるオレンジ色のルームランタンから察するに,恐らくここはボスの自室。
何がどうなってこんなところに寝かされているんだろうか。
赫『……あの…,りうら何でここに…』
『とゆうかいむは…?』
桃『………』
【いむ】の2文字にぴくりと反応した…ように見える。
あれだけ溺愛しているんだから無理もない話なんだろうけど…。
桃『…いむはいない。』
顔を俯かせ,幼児のようにぽつりと呟く。
赫『…………いない?』
『トイレにでも行ってるんですか?』
桃『……(首振』
桃『…昨日の夜から…連絡取れてない。GPSも途切れてる。』
赫『…ぇ、?』
パイプ椅子から静かに立ち上がるボスを眺めながら,上擦れた声を漏らした。
ゆらゆらと頼りない足取り。
普段とは似ても似つかないその雰囲気に喉の奥がひゅっと唸る。
桃『……ねぇりうら。』
『いむはどこ?』
赫『……ズリッ…(後ずさる』
桃『グイッ!!(腕引』
赫『ッ…っ!?』
桃『昨日。』
『あの場所で何があった?』
ずいっと効果音が鳴りそうな勢いで距離を詰めるボスに自然と体が硬直して,あまりの圧に息の仕方を忘れてしまった。
徐々に脳が酸素を欲し始め,脂汗が額に滲む。
カラカラに乾いた喉を潤すように小さく唾を飲み込んだ。
赫『……2人で歩いてたら道に迷って…』
『見たことない裏路地で襲撃されました』
桃『…それで?』
赫『……そ…れで,』
口に出すのもおぞましい。
脳裏に鮮烈に焼き付いたあの光景。
…どこかで生きているとは思ってた。
でも,こんな…なんでこんな急に。。?
赫『…ぅ”…ッ(口抑』
桃『…りうら?』
訝しげな表情を浮かべ,声のトーンに少しだけいつもの調子が戻る。
赫『…ん”…うぅ…ッ』
『……ッは…はぁ…っ(震』
桃『…りう___』
赫『ごめん “ ないくん ” …っ』
桃『…』
赫『りうら…なんにも…なんにもできなかった…,』
『絶対守るって…決めてたのに(ポロッ』
頬に伝う涙をごしっと拭う。
赫『…いむは多分…いや絶対…。』
『___________。』
桃『………は、?、』
───💎side───
水「……………んん…」
「……ん…?(目開」
うっすら開いた眠気まなこに容赦なく朝日が顔を覗かせる。
肩まで掛かった毛布を緩く掴んで,反射的に顔を覆った。
鼻腔を擽るホワイトムスクの香り。
昨晩までとは違う純潔な匂いに,『お手伝いさんが柔軟剤でも変えたのかな…』なんて考えを馳せながら渋々起き上がる。
いつもの癖で首裏に手をやると,肌とは違う,何かざらっとした物体に指先が触れた。
水「…………湿布…?」
鼻の奥をつんと突く刺激臭。
普段なら貼ることも見ることも皆無に近い代物だというのに…なんでまた?
てか僕こんなの貼ったっけ?
水「…??」
真っ白なシーツの上で懸命に頭を働かせるも,
謎は深まるばかりで。
とりあえず下に降りて,りうちゃんかボスに聞いてみようと,両足を床についた。
水「よいしょ…っ」
水「………………ん?」
進行方向とは真逆。
ベッド側に向かって,金属質な音ともに右手首が引っ張られる。
見ると,ズッシリ重たい鋼色の輪っかが,さも始めからあったとでも言うようにぴったりと嵌められていた。
小さな鍵穴と,張力に従って真っ直ぐに伸びたチェーン。
徐々にハッキリしだした視界の中で,ようやくここがいつも寝ているあの部屋ではないことに気づく。
水「…ここどこ、?」
間の抜けたこの問いに,答えてくれる人は居なかった。
じわじわと湧き上がる警戒心と恐怖心。
冷静に考えてみれば,僕の記憶上,昨日はアジトに帰っていないはずだ。
なのにどうして僕はベッドで眠れてるのか?
静かに眉根を寄せた次の瞬間。
どこからともなく,パタパタとスリッパで駆けてくるような足音が聞こえてきた。
こんな部屋がアジトにあるなんて聞いたことがない。
つまり,ここは僕の知らない誰かのお家だ。
拉致されたと考えるのが自然だろう。
水「…!!」
身構える暇もないまま,勢いよく扉が開く。
相手が誰なのかを確認するより先に,いつも銃をしまっている内ポケットに手を伸ばした。
水「……………ない…,?」
??『…ぁ、』
僕が小さくそう呟いたのとほぼ同時に,妙にふわついた掠れ声が耳へ届く。
ポケットが空である事への驚きを処理しつつ,恐る恐る顔を上げた。
前髪の隙間越しに覗く,肩幅の小さい白髪の男。
水(昨日のあいつじゃん…!!!
そうだ…僕はこいつを追いかけてりうちゃんとはぐれたんだった。
壁の前まで追い詰めて,あとちょっとって所で誰かに首を……。
水「…ねぇ…君だれなの?」
「目的は何?」
空いた左手で守りの姿勢を取りつつ,鋭い眼差しでそう問いかける。
そんな僕をなんでか泣きそうな顔で見据えながら,ソイツは小さく呟いた。
??『……名前はしょう。』
『初めての初に兎の兎で,初兎。』
『苗字は有栖。』
どこか聞き覚えのある響きに軽く首を捻る。
まぁ組にそんな名前の人いないし,気のせいだとは思うけど。
白『…ちょっと待っとって』
水「え…ちょ,」
後者の問いの答えをまだ聞けていない。
ぶっちゃけ名前はどうでもいいからそっちを教えて欲しかったのに。
口調の癖的に関西圏の人っぽかったけど…
って,それはどうでもいいんだった。
水「待てって言われても動けないんだから待つしかないじゃん…」
それから数分後,今度はいくつかの足音が重なって聞こえてきた。
先程と違い遠慮がちに開かれる扉を,今度は至って冷静に見つめる。
先陣を切って中に入ってきたのは,さっきの初兎とか言う人。
そして,その背後から連なるようにして,すらりと背の高い青髪の男と,対照的に小さく,筋肉質な長髪の男が入ってきた。
??『…目,覚めたんやな。』
水「……お陰様で。」
「今度は誰ですか」
ぶっきらぼうに投げかけたその言葉に顔を顰める青髪。
深いため息を吐いた後,おもむろに口を開いた。
碧『威風(イフ)。猫宮威風。』
『皆からはまろって呼ばれてる。』
あだ名にツッコミたい衝動を抑えて黒髪に視線を移した。
水「…」
黒『…獅子王悠佑。まろの従兄弟や。』
水「……ふーん」
揃いも揃って顔が良いのが少々癪に障るが,今はそんな事を気にしている場合では無い。
水「白い人にはさっきも聞いたけど,」
「…僕らの何が目的なの?」
「お金?それとも権力?」
「あとここどこ?」
「てか何で僕なの?」
碧『質問が多い。』
水「…いやしょうがないでしょ。」
「僕拉致られてるんだし。」
碧『…。』
水「…。」←なんだコイツって顔
黒『…。』
白『……ぶふっ…w』
黒『おい』
白『すんません』
水「…。」←なんだコイツって顔((2回目
碧『……ここで話すのもなんやから,』
『一旦これ着て下降りてこい。』
水「…っわ,」
乱雑に投げよこされた白色のパーカー。
青みがかった緑の裏地がアクセントになっているそのデザインは,腹が立つほど僕好みだ。
白『…さすがに着替えは覗けへんから先行っとくな。笑』
『降りて1番左の部屋におるから。』
水「…うん」
「あでもまって。」
白『ん?』
水「……これ除けてくんない?」
「動けないから。」
白『…ぁー,』
水「……僕赤ちゃんじゃないんだけど。。」
白『しゃあないやん』
『外したら僕がしばかれるんやから』
水「…ふん,」
記憶上人生で初めて,ボス以外の誰かに着替えを手伝われた。
抜かりないその監視力に思わず溜息が漏れる。
黒いスリッパを履いて,飼い犬のようにチェーンを引かれながら,無駄に長い廊下をひたすらに進んだ。
螺旋状の階段を下って,リビングのようなだだっ広い空間に案内される。
大型のテレビに面したL字型のソファーには既に先程の2人が腰掛けていた。
白『連れてきたでー』
碧『んー…』
黒『着替えありがとな初兎』
白『うぃ』
『この椅子使ってええから,君もこっちおいで。』
水「…ん,」
言われた通りに,クッションのような形をした背の低い椅子に腰掛ける。
黒い人の肩にもたれるようにして座る青い人と,その隣にちょこんと体を預ける白い人。
やっぱり身長差すごいなぁなんて思いながら煩わしい手鎖に目をやった。
水「いい加減教えて欲しいんだけどさ,」
「…ここどこなの?」
一瞬の沈黙。
3人がまばらに目配せしたことは空気で分かった。
碧『…俺らの家。』
水「ここに連れてきた目的は?」
碧『……それはまだ言えん。』
水「…なにそれ」
「まだもったいぶるつもり?」
白『……まあまあ,ちゃんと説明したるから。な?』
水「…」
ここまで話を逸らす理由が分からない。
見たところお金に困ってるって訳でもなさそうだし。。
人質にとられてるのは確かなんだけど,これが無差別かって言われたら……それはそれで違う気がする。
水「じゃあ話してよ。なるだけ詳しく。」
白『……わかった。』
『せやけどその前に1つだけ質問がある。』
ぎぃっと音を立てて立ち上がり,僕の足元に膝をつく。
流れるように僕の手をとり,壊れ物を扱うような手つきで握りしめてきた。
振り払おうにも手枷が邪魔で上手く体が動かない。
水「…なに?」
白『……君と一緒にあそこにおったのは,大神りうらで合うてるか?』
───🐇side───
何年ぶりだろうか。
この名前を口から発したのは。
水「…りうちゃんのこと知ってるの,?」
元から丸い大きな瞳を更に見開いて,動揺したような素振りを見せる。
そりゃびっくりするよな。
…僕やって驚いた。
こんなにも近くに,ずっと探してた宝物が眠ってたんやから。
白『…(チラッ』
碧/黒『…(頷』
碧『……俺らはお前を攫った訳やない。』
『あるべき場所に返したんや。』
水「…どうゆうこと?」
黒『……初兎。』
『もうええよ。好きに話しや。』
白『…うん』
ようやく…この時が来た。
白『……僕は君の全部を知ってる。』
水「…?」
白『昔から器量が良くて,教えたことはなんでも吸収して自分のものにしてた。』
『特に射撃が得意で,射程範囲の物ならなんでも撃ち抜けるぐらいの実力者。』
『殺しの仕事だけやなくて,家事とか洗濯とか,自分の身の回りの事も全部器用にこなしててん。』
水「…なんの話?」
白『せやけど,やっぱし子供らしいとこは少なからずあった。』
『片付けがとにかく苦手で熱しやすく冷めやすい。思ってることがすぐ顔に出る。』
『それでようまろちゃんに怒られてたよな。』
水「…ちょっと,」
白『ごっつ世話が焼ける坊ちゃんやってんよ?君は。』
『悠くんの言うことだけはむかつくくらい聞いてたけどな 笑』
水「…だからなんの話,?」
分かりやすく苛立った表情を見せる君。
…やっぱりなんも変わってへんわ。
白『…血反吐が出るくらい探し回った。』
『君を…いや, “ 有栖ほとけ ” を。』
水「……え?」
白『…今から話すのは, “ いむくん ” の過去の話。』
『僕らがまだまだ子供やった頃の話や。』
待ち焦がれていたこの瞬間。
もう二度と,絶対に離さへんよ。
早う全部…思い出してな。
──────ᴛᴏ ʙᴇᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ──────
コメント
4件
投稿ありがとうございます!!! やっぱり関西組さんか~🥲︎🥲︎ これからの展開どうなっていくのかが楽しみすぎます!!