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大森視点
スタッフの悪意のある噂を聞いてしまい、
どうしても星崎が心配になる。
引き返せばまだ間に合うだろうか?
それとももう帰ってしまったのだろうか?
でもーーーー
(今さら戻って、
なんて声をかければいい?
気持ちはすぐにでも会いたいのに、
体は動かないまま会いたくないと叫んでいた。
自分でさえこの渦巻く感情をどう扱えばいいのか、
飲み込まれそうで足がすくむ。
俺と星崎に足りないのは会話だ。
ちゃんと向き合いたい。
俺は僅かな可能性にかけて走り出した。
もし困っていることがあるなら、
話してほしい。
万全な解決方法なんてわからなくても、
一緒に悩むことは出来る。
廊下を小走りで移動しながら星崎を探す。
(どこだ?)
奥から楽しそうに談笑する話し声が聞こえた。
まだ距離があるため誰か分からず、
目を凝らしていると、
その中に星崎の姿を見つけた。
見つけたと思った次の瞬間、
その隣には深瀬さんがいた。
思わず腕時計を確認すると、
リハーサルから2時間以上も経っていた。
つまりその間ずっと一緒にいたと言うことだ。
何で俺には時間をつくってくれないのか。
「ちょっと話せる?」
自分でも空気がピリピリと張り詰めていると感じるほど、
深瀬さんへの嫉妬を隠せない。
そんな態度に俺が怒っていると思ったのか、
さりげなく一番近くにいた、
深瀬さんの腕に縋った。
(やっぱり俺を頼ることはないのか。
でも何で?)
分からない。
星崎もどう返答したらいいのか、
表情が不安そうに揺れ、
深瀬さんが星崎に声をかけた。
「大丈夫?
無理そうなら日を改めてもらう?」
「で⋯⋯れ、ば⋯⋯⋯⋯⋯い」
上手く喋れない星崎に対して、
深瀬さんが「出来れば後日にしてほしい」と、
通訳してくれた。
そのこと自体は有難いが、
これほどまでに聞き取りにくい声でも、
深瀬さんは星崎の言葉をきちんと理解できていた。
俺はまだ十分に分からないのに。
俺も星崎の言葉を理解したいと強く思った。
「それなら連絡先を教えて」
誘いを断られることなど、
最初から分かっていた。
これはそのための対策だった。
星崎は俺に食い下がられるとは、
思っていなかったようで、
案の定オロオロと狼狽えていた。
「し、ご⋯⋯す、か?⋯こ⋯ん⋯⋯⋯⋯か?」
「仕事?個人的なこと?って聞いてるよ」
深瀬さんは星崎の緊張をほぐすためなのか、
ゆっくりとした優しい手つきで、
そっと星崎の頭を撫でた。
(そういえば⋯)
いつだったか忘れたが、
読んでいた雑誌でボディタッチは、
接触する部位によって、
意味が変わると言う記事を見たことを思い出した。
確か頭や髪は、
「庇護欲」
明らかにそれは、
先輩がただの後輩に向けている感情ではない。
恋愛感情を匂わせるには十分だった。
どうやら星崎はそのことに気付いてはいなさそうだ。
「仕事関係だよ」
完全に嘘だ。
しかし星崎は仕事の鬼というほど、
ストイックな真面目気質だ。
仕事を引き合いに出されると、
多少気が乗らずとも頷くはずだ。
それに断ろうにもそれなりの理由がいる。
そのことも踏まえていた。
狡いやり方ではあるが、
そうでもしないとまともに話せそうにもなかった。
だからこれそ、
これは一つの賭けであった。
静かにポケットからスマホを出した星崎に対して、
深瀬さんが心配そうに問いかける。
「無理してない?」
「大丈夫⋯です」
画面を操作してLINEを開くと、
星崎は自分のIDを俺に見せた。
「こ、れ」
手早く登録すると自分のIDを教えて
連絡先を交換することになった。
話の内容が気になるのか、
その場で用件を聞かれたが、
また後で連絡するとはぐらかした。
すぐに答えては連絡先を交換した意味がない。
「じゃあ、
途中まで一緒に帰ろう」
「はい。
あ⋯かれ、⋯⋯まです」
俺にオズオズと会釈を返して、
深瀬さんらと共に帰宅していく背中を見つめていた。
雫騎の雑談コーナー
はい、
ついに来ました?
でいいのかな。
TASUKUは深瀬さんを世話焼きな先輩としか思っていない。
でも肝心の深瀬さんの方はガッツリ好意があるんですね。
もちろん恋愛の意味で!
そして大森さんはTASUKUの連絡先を入手し、
SNSでようやく繋がることに成功。
果たしてこれから何を仕掛けていくのやら。
ここからさらに不穏な空気が流れてくる⋯⋯⋯⋯予定です。
多分。
TASUKUに悪意はないけど、
なんならもう一波乱ぐらい犯しますかな。
その方が盛り上がるだろうかなんて、
悪どいことを考えたり考えてなかったりしてます。
にしても次で18話?
意外と続いてるな。
俺飽きっぽいから途中でやめそうかと思ったけど、
意外と順調かも?
ちなみに頭・髪=庇護欲以外にも接触ネタを書く予定です。
たまにセンシティブも出ますよー。