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鬼滅の刃小説

第3話 - 雪原に咲く、ひとひらの想いー続

2025年06月11日

#鬼滅の刃

#二次創作

#冨岡義勇

#竈門炭治郎

#胡蝶しのぶ

#時透無一郎

るな

冨岡義勇ー雪原に咲く、ひとひらの想い

深い雪に覆われた冬の夜、義勇はひとり、山間に佇む小さな村へと向かっていた。降り続く冷たい雪は、かつて人々が抱いた温もりや希望の痕跡をも隠してしまうかのように、村全体を静寂の中に包み込んでいた。村人たちは、夜ごとに聞こえる遠い足跡や、風に紛れる不穏な声に怯えながらも、かすかな灯りを頼りに日々を過ごしていた。義勇は、任務の重さと己の内面に潜む孤独、かつての過去の傷痕を胸に、静かに足を進める。

村に伝わる噂は、一つの悲劇的な伝説を語っていた。かつて、村に愛と信頼を注いだひとりの住民が、鬼の呪いに囚われ、己の深い悲しみから絶望へと堕としてしまったという。その魂が鬼へと変貌し、今もなお村を彷徨い、希望に絶望をもたらしていると。宿屋の薄明かりの中、年老いた長老が震える声で呟くその話は、義勇の心にも忘れがたい影を落としていた。彼は、任務遂行に徹する一方で、かつて自分も失った何かの大切さを思い出させるその言葉に、内心の葛藤を抱かずにはいられなかった。

やがて、月が雪原を青白く照らしだす頃、義勇は村外れに佇む古びた祠へとたどり着いた。そこは、静寂と共に風の囁きだけが響く、時の忘却に包まれた場所だった。薄闇の中、ひとりの影が姿を現す。黒い瞳に、かすかに映るはかつて失われた温もりの記憶。鬼と化したその存在は、穏やかなはずの人間の記憶を、悲哀と絶望の形に変えてしまったかのようだった。鬼は、かすかに震える声で語りかける。

｢かつて、私にも愛する者が…この苦しみは、誰にも理解されぬ孤独の叫び…｣

その言葉は、無情な夜空に溶け込みながらも、義勇の中に秘めた己の過去の痛みと、守るべき命への思いを呼び覚ました。

義勇は己の水の呼吸の型を静かに、そして確固たる技で繰り出す。それは、刃が冷たい夜風を裂き、まるで流れる水のごとく優雅かつ厳しさを帯びていた。戦いは、ただ肉体を交えるものではなく、己の内面の痛みと、鬼に宿る哀しみとが重なり合う、精神の戦いでもあった。斬撃の一つひとつが、義勇にかつて失った仲間たちの面影を想起させ、同時に彼自身が負ってきた責任と誓いをも映し出す。

｢水の呼吸五の型干天の慈雨｣

戦いの末、鬼は、薄れていくかのように静かに消え去った。月光の下、立ち尽くす義勇は、その刹那に、相手が単なる悪ではなく、かつてあった人間の温もりと絶望が混じり合った、複雑な存在であったことを痛感する。彼は呼吸を整え、雪に覆われた大地を見つめながら、心の内でひそかに誓いを立てた。

｢己の孤独と向き合い、守るべき命のために、どうか希望の灯火を絶やさぬように… ｣

その誓いは、静かな決意として、冬の夜空に溶け込んでいった。

義勇の歩みは、再び雪原へと消えていき、彼が刻んだ足跡は、静かでありながらも確かな未来への道しるべとなる。彼はただ一人、冷たくとも美しいこの世界で、守るべき者たちのため、己の心に誓いを託しながら、歩み続けるのであった。