【閲覧注意⚠︎】この小説はnmmnです。
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又、この小説は作者の妄想・フィクションです。ご本人様(キャラクター等)には一切の関係・関連はありません。
ご迷惑がかからぬよう皆で自衛をしていきましょう!
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※その他 4ネタ 弱シリアス
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🏺『』その他「」無線「”○○○”」
目を開いたら、むかし懐かしい田舎の風景が広がっていた。
照りつける日差しと、軋むベンチの音と、それからゆっくりとバスが一台通り過ぎて行く。
『…………、…゙あ?』
「あーあ。乗り遅れた」
突然現れた人の気配に肩を跳ねらせて、つぼ浦匠はそちらへと目を向ける。
当たり前のように拳一個分を開けたその隣に深々と座り込み、普段見ることの無い童顔なその横顔がフルオープンであった。
青い髪がふわりとなびいて、向けられた瞳も青くて深い。
「…?、なに?」
『あぁ、いや…?、つーかよ』
「うん」
『ここ何処だ?』
「はは(笑)、俺もわかんない」
困ったように頬を軽く引っ掻いて、青井はのそりと立ち上がる。
途端に背中からぶわりと吹いたその風は麦畑特有の独特な香りを運び込んでいて、振り返ってみればガードレールを挟んだその奥に…言葉では言い表せない程の黄金色がきらきらと広がっていた。
『お〜。すげぇなこりゃ』
「ね。見た感じずっと奥まで畑だし、バスもまたいつ来るか分からないし…。ちょっと道沿いに歩いてみない?」
バスが向かった方向に指を差して、青井は小首を傾げる。
つぼ浦も一応でバス停の時刻表を確認したものの、どうやら雨風に負けたその表記はぐちゃぐちゃと掠れて解読すらできやしなかった。
『ンだこの時刻表、マジで見えねぇじゃねぇか』
「だから言ってるじゃん。ほら、諦めて歩くよ」
『まぁ仕方ねぇな。お供してやりますよ』
「はいはいどーも(笑)」
つぼ浦が内側、青井がその隣を歩いて、二人はしばらく無言で歩みを進める。
蝉の音と照りつける太陽と、そして真っ白な入道雲が二人の視界にずっと居座り続ける…署員たちがよく言うところのチルいやらエモいやらの一つだろうと思った。
『あんまし景色変わらねぇな』
「そうだねぇ。森と道路と畑だね」
『いやいやアオセン。大事なガードレールを忘れてるぜ』
「あぁ(笑)…、んーっと…じゃあ、森と道路とガードレールと畑ね?」
『おう。森と道路とガードレールと畑だ』
右から順に指を差して、青井とつぼ浦は生産性のない会話をだらだらと続ける。
そうしていれば、特段気にも止めていなかった不思議な感覚がひょこりと顔を出してきた。
「…、ねぇつぼ浦」
『あ?、なんすか』
「…んー…、、つぼ浦さ。いま暑い?」
『?、あー…いや。暑くはねぇな』
「だよね。こんなに真夏っぽいのに。俺も全然暑くない」
照りつけているという感覚は肌で感じるものの、特段汗が吹き出るとか、喉が異常に渇いたとかの人体的な危機管理能力が皆無である。
「……なんか不思議だね。試しに殴ってもいい?」
『ダメに決まってんだろ。包帯切らしてるぜ』
パンパンに詰め込んでいたはずの包帯やIFAKSは全て品切れ。
どうやら青井も手持ちにそれらが無かったらしく、ぴくりと眉間に皺を寄せてから長々と息を吐いた。
『アンタもなかったのか?』
「ふぅー…。ないね。なんならアーマーとか武器とかも無い。食べ物とお金だけはあるわ」
『あるじゃねぇか』
「いやいやいや、この異常事態に武器ないのは心細いでしょ。どう考えたって」
『あーそうか。まぁでもあるぜ?、俺には相棒のバットがある。いざという時は任せな』
「使い物になるかぁ?」
『なるなるなる!、任せろ本当に舐めんなよ』
“しまいにはキレるぜ?”と余裕たっぷりに宣言をして、つぼ浦はサンダルを擦りながら道路を闊歩する。
「うーん(笑)…そっかぁ。ちなみにさ、バット以外に持ち物は確認した?」
『゙あ?、んーっと…あぁ。俺のスタッシュには全部あるぜ?』
「全部?」
『おう。応急処置以外のものは全部ある。金も食い物もハンドガンも。…あ、余計な物まで残ってんな』
恐らく押収品を捨て忘れているらしいつぼ浦の発言には一度だけ目を瞑ってやり、青井は気だるげに頷いた。
「なら良かったかもね。?、あ。」
『?、なんだ?』
突然ぴたりと立ち止まった青井の視線を追いかけて、つぼ浦もきょろりと周囲を見渡す。
「ねぇあれ。駄菓子屋さん…じゃない?」
『んー…ん?、゙ん?!、おわっ。マジの駄菓子屋じゃねぇか』
「行ってみる?」
『いこーぜこれ!、』
途端に現れたかのような不思議さと疑問を頭の隅に蹴り飛ばして、つぼ浦は道路をパタパタと横断する。
「あ〜こらこら。走らないよー」
『どうせ車なんか通らねぇだろ。早く行こうぜ』
「ン。まぁそれもそうか…」
なかば大型犬にリードを引っ張られるかのようにズンズンと腕を引かれて、駄菓子屋の前に到着をすれば…もう危機感も何も無く間髪入れずに店内へと足を踏み入れた。
『ぉお〜!、すげぇぜアオセン、マジで駄菓子屋だ!、』
静まり返る店内は昔懐かしい駄菓子とおもちゃ、それから古ぼけた学習帳と鉛筆一本が一緒に卓へと転がっているのみ。
本来であればそこにレジでも置いてあったのだろうが、何故だかそこにはそれしか置かれていないらしいと二人で納得する。
『まぁ〜あれだな。金は取らねぇけど、感謝は書き記しとけよってことだろ』
「それ商売上がったりじゃない?」
『気持ちが大事ってことだ。おっ、これ懐かしいなァ、アオセンもいるか?』
小さなビニール袋にお菓子を詰め込んで、つぼ浦は満足気におもちゃも物色する。
『シャボン玉?、あっ、こっちの面の丸いヤツなんだっけなァ、ここまで答え出てんだけどなァ、』
「いやメンコでしょ(笑)」
『だぁ言ったなアオセン!、あとちょっとで分かったのによぉッ!、』
「はいはいじゃあそっちのやつは?」
『ん。これはだなァ…、』
つぼ浦が一人で昔のおもちゃなんだろなクイズをしている合間に、青井は古ぼけたノートをサッと開いて鉛筆を握る。
「………、」
つらつらといくつも並べられた正の字の一つに目を向けて、青井は一本だけ新たに線を付け足してからパタリとノートを閉じた。
『?、何かあったか?、』
「んー?、あぁ。えっとねぇ。ここに訪れた人が感謝の言葉書いてたり…、あとはあれだね。何人目の人ですよって分かるように正の字書かれてたりしてたよ」
『へぇ〜。なんかマジで田舎っぽいよな』
「つぼ浦もなんか書く?。消しゴムないから修正効かないけど」
『ん〜、気持ちだけ残しとくぜ。どうせアオセンが書いてくれたんだろ?』
「まぁね(笑)、うちの後輩がガキみたいに沢山駄菓子取っていきましたってね。感謝の文も添えたよ」
ふくりと頬に空気を溜め込んでから、まぁでも間違っては無いなと秒でゴチて背筋を伸ばす。
『大人ぶりやがってよォ…』
「実際大人ですぅ〜…゙ぅッ、っ(笑)、」
胸元に押し付けられた袋を強制的に受け取って、青井は仕方なさげに苦笑した。
「なにこれ(笑)、俺のお菓子も詰めてくれたの?」
『全部甘いもんにしてやったぜ。虫歯になっても知らねぇからな』
全くもって可愛くない言葉を並べて、つぼ浦は駄菓子屋に一礼をしてから青井を外で待つ。
「っふ(笑)、…あ〜もう、かわいくない」
駄菓子屋の外でぷかぷかとシャボン玉を飛ばし始めたその姿を眺めて、青井はそう一言呟いた。
風にさらわれるシャボン玉を眺めながら、つぼ浦と青井は元来た道をゆっくりと歩く。
相変わらず天気は良くて、森はさわさわと心地よい音を奏でていて、もちろん麦畑は海のように黄金色を煌めかせていた。
『ふ〜…ッ、たは(笑)、見ろよアオセン、めっちゃデカいのできたぜ?』
「ん、どれ?」
『あれだあれッ。あ、割れた』
ふわりと頭上を通り過ぎたシャボン玉を追いかけるかのように、半身だけを後ろに向けて確認をする。
「あー残念。見逃したわ」
『過去一デカかったのになァ。…?、つーかよアオセン』
「今度はなーに?」
『なんか後ろから軽トラ来てるぞ』
ガコンっと盛り上がった道路を元気よく走るそのトラックが、二人を横切った後にすぐさま停車する。
『、アオセン?』
「俺が話すから静かにね」
チカチカとハザードをたいているトラックを横切るその前に、青井はつぼ浦の手を軽く握ってから社交的な笑みを浮かべた。
「こんにちは〜…」
覗いた車内には人の良さそうなお爺さんが一人運転席に座っていて、つぼ浦は青井の言う通りに口を噤んでからぺこりと軽く会釈をする。
「あ〜あ〜青井さん(笑)、…あぁ〜(笑)、また来てしまったんかぁ。全く難儀なことやねぇ。すぐそこのバス停やろ?、乗せてったろか?」
「いやいや(笑)、お気になさらず行ってください」
互いに労いの言葉を軽く交わしてから、トラックはまたカタカタと小さく音を立てて出発をする。
しばらくその車が視界から遠くなるのを眺めて、青井はまたゆっくりと歩き出した。
『、アオセン、』
「ん…なぁに?」
ゆるゆると手を引かれながら、つぼ浦はシャボン玉をスタッシュへとしまい込む。
「もうやめちゃうの?、それ」
『…あぁ。よく分かんねぇけど、アンタと真面目に話した方がいい気がしてな』
「真面目にねぇ〜…。…何が聞きたいの?」
その問いかけにつぼ浦はぴくりと眉を寄せて、“わかんねぇこと全部だ”と告げる。
「全部かぁ(笑)、それはちょっと難しいかもなぁ」
『、じゃあ大前提に、ここはどこなんだ?』
「それは俺にも分からないよ。…でも、何回も、何十回も、俺はこうやってお前と田舎道を歩く夢を見てる」
『?、これは夢なのか?』
「お前にとっては夢だね。俺にとっては現実だけど…まぁ、どうせ全部忘れちゃうからさ」
ぎゅっと握られた手の平には熱が無く、確かに現実だと言うには何となく曖昧で、そして随分と自分にとって都合が良すぎる穏やかな世界観だと気がついた。
「お前が毎度毎度こっちの世界に来るから、俺は毎回お見送りをしてる訳」
『お見送りっつー事は…、アンタは一緒に、来ないのか?』
ぴたりと止まったその足に動悸がして、つぼ浦は一歩後ろに後ずさる。
「…、うん。ごめんねぇつぼ浦、一緒には行けないんだよ。…あとさ、もう後ろには引き返せないから。それ以上は下がっちゃダメね」
ひんやりと背中を撫でられるような空気が一瞬だけ背中を押して、つぼ浦はまた歩き出す。
「行きはよいよい帰りは怖いってね。よく言うでしょ?」
『聞いたこともねぇぜ』
「ないかぁ(笑)」
青井はクスクスと仕方なさげに笑って、やっと見えてきたバス停にほっと息を吐いた。
「よーし。ここまで来ればもう安心安全…」
時刻表にはしっかりとバスが来る時間が記されており、反対側のバス停とは打って変わって掠れた文字は無い。
ほどなくすれば遠くからバスがやって来て、二人の目の前でゆっくりと停車をした。
タイミングよく現れたそのバスに、青井は気だるげに指を差す。
「乗りな?、つぼ浦」
バスの中に視線を向ければ、幼い子どもや中年の大人まで…少しだけ困惑した様子でまばらに座っている。
しかし、早く乗れと催促をする人間は一人もおらず、ただぼーっと外の景色を眺めていた。
『…、このバスは、どこに行くんだ?』
「……お前が生きる正しい場所に。戻してくれるんだよ」
青井はつぼ浦の両肩を後ろからそっと撫でて、ゆるゆるとドアの前まで誘導する。
『正しい場所って?、アオセンは此処が正しくて、俺には間違った場所なのか?。アオセンだって、俺と一緒の場所じゃなきゃ…、…あれ…、、?、ダメ…だよな?』
頭の中が急激に冷えて行く。
「俺は此処で正解なんだよ。じゃなきゃお前、またふらっと現れて本当に帰れなくなるからね?」
『っ、俺のせいで残るのか?、』
「違うちがう(笑)、これはついでだよ。…お前が此処に戻ってこないと確信できたら、俺も別のバスに乗るからね」
文字も掠れていた反対側のバス停を思い出して、つぼ浦はくるりと青井に身体を向ける。
『反対側のバス停は、どこに行くんだ?』
「…それも。あるべき場所に帰る為のものかな」
“そろそろ安心したい気持ちもあるけど…”とどこか他人事のように呟いて、それでも青井は薄く笑みを浮かべる。
「まぁこれはこれで楽しいからさ。…でも、もう来ちゃダメだよ?。約束できる?」
『……できねぇ約束はしないぜ』
「はー…(笑)、だよね。そうそう、お前はそういう奴だよ」
向けた小指は意味を無くして、クスクスと笑いながら仕方なしにつぼ浦の胸をゆるく押す。
トンッ…と軽く押された身体はバスの中へと押し込まれ、体勢を崩しながらもつぼ浦はコケることなく乗車した。
『っ、ッ…、』
乗った途端に穏やかな気持ちがぶわりと胸の内から溢れ出し、外で手を振る青井は“座りな”と一言助言をする。
ガチャンと閉じられたドアに焦る気持ちすら持ち合わせず、つぼ浦は言う通りに席に着いてぼーっと窓の外を見つめていた。
「じゃーね〜つぼ浦。もう来るなよ〜」
まるで犯罪者を刑務所に転送する時のような軽い言葉と挨拶だった。
次第にウトウトと目元が微睡んで、つぼ浦の意識がプツリと途切れる。
青井はバスの行く末をしばらく見届けてから、また反対側のバス停に戻って深々とベンチに腰掛けた。
「、、…うん。いい天気…、、ね。つぼ浦」
相変わらず景色は穏やかで、青井はただひたすらに空を見上げていた。
ぱちりと目を覚ませばグラグラと身体を揺すられていた。
途端に感じる冷たさと、身体から抜けていく血の感覚。
「匠っ、たくみ!、」
「“意識が戻りました。最北端の森林です。お時間ある救急隊の方はいらっしゃいますか?”」
身体を揺するオルカと、無線で会話をするまるんと、致命傷の傷を負ったつぼ浦匠。
周囲をぐるりと視線だけで見渡せば、陽の光が差し込まないほどの暗い森の中で…どうやら怪我を負っていたらしい。
「包帯包帯…、あった!、」
急いで取り出したその布を見た途端、つぼ浦の手がパシリとその包帯をはじき飛ばす。
「オルカ…、」
「ぁ、そうだった…、えっと…、そうだな!、うん。このままでもいいぞ。大丈夫、だいじょうぶだ」
自分でも何をしているのかとつぼ浦は眉間に皺を寄せるが、だんだんと引き戻されてきた記憶に眼光をこれでもかと見開く。
『ッ、けほけほっ、ッ、゙っ、』
それは数ヶ月前の記憶だ。
別の州からやってきた小規模のテロ組織に、警察は本物の命を懸けて戦った。
登録のされていない外部の武器と、戦力と、本気で街を守ろうと戦っていた。
最終的には全ての犯罪者をのして永久追放…はたまた戦闘中に命を落としたその亡骸を自国に送り返す作業を行ったが…全てが上手くいくほど、この世は優しく出来ていない。
「傷だけでも押さえさせてくれ…、な?、匠、」
今にも泣き出しそうなオルカの顔を見つめて、つぼ浦はまた一つ思い出す。
『……、あぁ、そうだった…、、』
“ 青井らだおは、俺を庇って死んだ ”
激しい戦闘で、応急処置すらも意味が無く、ただこうしてオルカのように傍に居ることしか出来なかった。
生暖かい血が抜けていく感覚と、最後までゆるく笑みを浮かべるその表情が脳裏にこびりついて…今でもずっと、覚えている。
『おれ、゙っ、(泣)、おれが、、』
フラッシュバックした記憶がつぼ浦の頭をボコボコと殴り、オルカとまるんは記憶を取り戻したのだと察する。
毎週ふらっとどこかに消えては、本気で青井の後を追おうとつぼ浦は自死を繰り返していた。
包帯もIFAKSも持たず、なるべく人が近寄ることの無い場所で、何度も何度も死を選ぶ。
『おれが、゙っ(泣)、俺の事を庇って、アオセンは、っ、(泣)、くっそ…(泣)、』
何度生き返りたくないと望んでも、何故だか意識が浮上してしまう。
生きたいという希望が胸になければ、ロスサントスの救急隊とて救えないはずなのに。
「…つぼ浦、……俺たちは、それでもお前が生きてくれて、、嬉しいよ」
大切な同期の死に顔なんて一生拝みたくなどない。
「たくみ…(泣)、ごめんなぁ匠、オルカもまるんと同じだ、…匠がどこに行ったって、絶対オルカたちが見つけるからな、」
ボロボロと泣くつぼ浦と、顔を歪めるオルカと、その背中をそっと静かに撫でるまるんが救急隊のヘリを待つ。
誰も何も救えない、救われない、冷たい風が三人の頬を柔く撫でていった。
気がつけば、むかし懐かしい田舎の風景が広がっていた。
照りつける日差しと、軋むベンチの音と、それからゆっくりとバスが一台通り過ぎて行く。
『………、……゙ぁ?』
「ふふ(笑)…、あーあ。乗り遅れた」
もはや定型文のようにその言葉を漏らす青井らだおは、突然現れたつぼ浦の姿に目を細めて、ゆるく柔く笑みを漏らす。
『?、アオセン?』
「うん。なーに?」
“ここはどこだ?”とつぼ浦が問いかければ、青井は“どこだろうねぇ”と言葉を返す。
何度でも帰ってきてしまうつぼ浦匠という男がこんなにも情けなくて、愛らしくて、仕方がない。
「はいはい歩くよ」
『仕方ねぇなァ…、』
重い腰を上げて道路を歩き出したつぼ浦の肩を軽く小突いて、青井は長々とため息を漏らす。
『なんだよアオセン、やんのか?』
「やらないやらない。(笑)、お前は本当に…、本当にねぇ〜…」
その先を言わない青井にカチンときたつぼ浦が、ぎゅっと青井の腕を掴む。
その腕はひんやりと冷たくて、自身にも熱がない事に気がついた。
『?、なんだ?、なんかつめてぇな』
まるで生気がない青井の身体にぺたぺたと触れて、つぼ浦は首を傾げる。
「おぉ〜…気が付くの早いねぇ…」
いつもなら帰りのバス停付近で知ることになる感覚だ。
「まぁまぁ、まだ先は長そうだからね?、行ってみようよ」
疑問を抱くつぼ浦を引き連れながら、いつも通りのルートを歩く。
駄菓子を買って、おもちゃで遊んで、そしてまたつぼ浦を無理やり現世に戻すのだ。
「お前は本当に俺のことが好きね」
『なにいってんだか(笑)、こっちのセリフですよ』
「あぁそう(笑)?、ふふ(笑)…、まぁそうかもね」
売り言葉に買い言葉…意味の無い会話をだらだらと繰り返して、二人はまた黄金色の景色を眺める。
そんな日々が少しだけ嬉しい青井と、誰も幸せになれないつぼ浦の行動がまた一つ…今日も青井の手によって、古ぼけた学習帳に記されていた。
夏は巡る[完]
コメント
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話作るの上手すぎる、、、天才ですね