テラーノベル
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◇
この日はどうしてか、頭に血が上っていたのだ 。
勇斗と喧嘩をした。
きっかけは、今となっては思い出せないほど些細なことだった。
でもその時の俺は、どうしようもなく腹が立って、胸の奥からせり上がってくる黒い感情を抑えつけることができなかった。
口論が激化する。
いつもなら俺がどこかで一歩引くのに、その日に限ってどうしても引けなかった。勇斗だって一歩も引かない。
「もういい!」
感情をぶつけることに耐えかねて、俺は家を飛び出した。
「おい、仁人! 待てって!」
後ろから勇斗の焦ったような声が追いかけてくる。 だけど、意地でも振り返らなかった。
だって、今の俺はきっと…自分でも見たことがないくらいひどい顔をしている。
あいつにだけは、こんな醜い顔、絶対に見せたくなかった。
だから、完全に注意力が散漫になっていたのだ。
涙で視界が滲んで、周りへの確認を怠るほどに。
激しいクラクションの音。
気が付いた時には、本当に目の前まで、車のライトが迫っていた。
その瞬間、世界が奇妙なほどスローモーションに感じられた。
迫り来る光の中で、なぜか脳裏をよぎったのは、さっきまでしていた激しい喧嘩の顔じゃない。
俺の頭を真っ白に埋め尽くしたのは、俺が世界で一番大好きな、くしゃっと波打つ勇斗のあの笑顔だった。
『仁人……っ!!』
鼓膜を破らんばかりに響いた、あいつの必死な、引き留めるような叫び声。
――あ、しまっ、
それが、俺の意識の最後だった。
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りゅず
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コメント
1件
うわ、仁人くん……あんな些細な喧嘩からあんなことになるなんて、胸がギュッてなったよ。飛び出す前に一呼吸置けたらよかったのにって思うけど、そういう時って冷静になれないよなあ。最後に勇斗の笑顔がよぎるところ、切なすぎる……。続き、めっちゃ気になる!