「っていうことがあって…」
研磨と来たカフェで俺はアイスティーを啜りながらこの前のことを話していた。
目の前に座る研磨はアップルパイを頬張っている。
「それで結局、そのウワサってなんだったの?」
「たまたま隣の席になってよく話してたら噂好きな友達に見られたんだって」
「ふーん、良かったね」
対して興味もなさそうに返された。
「うん。木兎さんとも仲直り出来て、木葉さんも前より俺のこと見てくれるし結果オーライって感じ」
「…木葉さんなら、まあいいけど。京治、変な男引っ掛けちゃだめだよ?」
「心配してくれてる?」
「もちろん。おれ京治のこと好きだから。」
「ありがとう、研磨。俺も好き。」
ニコッと笑いかけたら恥ずかしそうに目をそらされた。
「でも 俺自分がここまで木兎さんのこと好きだと思ってなかったんだ。勿論、好きだけど…それは俺に対して愛情を持ってるっていう前提だから、浮気されたら直ぐに諦めるつもりだった。」
っていうか今までもそうだったし…
「来る者拒まず去るもの追わずって感じだもんね」
まるで今までも見てきたかのようにいう研磨。
一体いつからこの事気づいてたんだろう…
「来る者は選んでるつもりだよ。」
「っていうかなんで木葉さんなの?木兎さんとかクロとか月島とかおれもだけど、タイプに統一性ないよね。京治ってストライクゾーンどうなってるの?」
「俺の周りって木兎さんとか月島とか研磨とか世話してあげたくなるタイプのが多くてさ、黒尾さんみたいに俺のこと甘やかしてくれる人材を探してたっていうのが一番の理由かな。」
黒尾さんみたいなっていうのに反応して研磨は
「おれだって京治のこと甘やかしてあげれる。」
って張り合ってきた。
「あと俺、面食いだから。」
納得いかなそうな研磨は皿の上に残ったアップルパイの破片を集めて口に入れた。
「そろそろ行こうか。」
会計を済ませ店を出る。
ものすごく弾むという訳では無いけど気まずい沈黙という訳でもない少しの会話をしながら歩いた。
別れ際に気になっていたことを聞いてみる。
「研磨は俺のこんな話聞いてて楽しい?」
「こんなって?」
わかってて聞い来てるんだろうな。
どんな言い方をしても自分が酷いことをしているような表現になりそうで言葉にするのは難しい。
実際、俺のしてる事が酷くないとは言いきれない後ろめたさもあるけど。
「1人じゃ満足出来ない京治の話のこと?」
「…その言い方やめてよ。」
「事実でしょ。」
情けない事に言い返せない。
「楽しいかっていうことについてだけど、楽しいよ。でも京治が自分のこと好きなの前提でみんな大好きっていうのと同じようにおれも京治のこと好きだから楽しいって感じかな。」
その2つが同じようにで括れるのかわからないけど楽しいならよかった。
「それに、攻略ゲームを第三者の視点で見てるみたいで楽しいかも。」
「そっか。でも忘れないで、攻略対象は研磨も含まれてるから。それじゃあ俺こっちだから。」
「うん。またね。」
研磨と別れ1人家までの道を歩いていた。
研磨は本当の俺のこと知ってる唯一の存在だからついつい話を聞いてもらいたくなっちゃうんだよな。
でもそんな研磨にも話してないことがある。
それはあの噂について、木兎さんから聞いたこと。
実はあの後───
「赤葦のこと連れ戻しに来たに決まってんじゃん。」
「ふっざけんなよ、お前。赤葦をこんなに不安にさせときながら…」
自信満々な木兎さんに木葉さんが少し呆れながら返した。
「っていうか木葉。赤葦から早く離れて。赤葦も早くこっち来てよ。」
「嫌だね。お前が今までのこと説明して仲直りするまで赤葦は渡さないからな!」
という木葉さんの前で木兎さんから事情を聞き無事に仲直りした。
そこまで確認すると木葉さんは「あとはおふたりでどーぞ」と言って部室から出ていった。
「本当にごめんね、赤葦?俺ホントに赤葦一筋だし、他のやつに興味無いから!」
必死に俺の機嫌を伺う木兎さん。
説明に嘘があったとは思わないけど、今まで何も言ってこなかったことや連絡が急に無くなったことについては少し気になる。
「でもなんで連絡もくれないんですか。俺、すごい寂しかったです…」
すると木兎さんは意味ありげに笑うと耳元で囁くように言った。
「いっつも俺だけ心配してフェアじゃないと思って。」
「え?」
「赤葦も俺のこと心配してくれるのかな〜って思っちゃったんだもん。」
つまり俺は、
試されてたのか。
「心配するに決まってるでしょう。…木兎さんのバカ」
「ごめんごめん!もうしないから!」
全然俺の思惑通りじゃないし、予想以上にめんどくさい人。
この木兎さんは俺だけが知ってればいいかな。
「ターゲット」 end.
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連載ブクマ失礼します