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Mrs.短編集

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Mrs.短編集

5 - 第5話

♥

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2025年06月15日

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side藤澤



俺には、好きな人がいる。それは同じバンドメンバーの若井だ。本当は好きになっちゃダメってわかってる、なんでって、若井は元貴と付き合っているから。本当に付き合っているかは確信して言えないけど、前よりも距離がちかくなったし、なんというか、2人に置いてけぼりにされてる感じがする。ほら、今だって。


「だーかーらー!!」


「だってえ〜….!」


何かに怒っている元貴の腰に張り付く若井。若井はあんまり人にボディタッチとかしないタイプだから、絶対付き合ってるよね、でも親友だからってのもあるしな。

….この場にいるのが辛い。だって、だってさ、好きな人が他の人にくっ付いてるんだよ。しかも目の前でさ。


逃げたい。…逃げよう。


「…ちょっと休憩するね」


そう言って水が入ったペットボトルを片手に持ちスタジオを出ようとすると、若井と元貴がこちらに向いて、元貴は


「あ、おっけい、無理しないでね」


若井は


「おあ、、え、あ、行ってらっしゃい、」


「おれ….んごッ….」


何か言おうとする前に元貴が若井の口に手を当てた。小声で若井に何か耳打ちをして、若井が頷く。…やめて、いやだ。

俺はペットボトルを握りしめてスタジオを出た。



気がついたら屋上に向かって歩いていて、ハッとして足を止めた。足を止めたのは一瞬で、俺はまた屋上へと歩き出した。

そのまま屋上に繋がっているドアを開けてみると、生温い風が頬に触れた。


風で靡かれている髪をかきあげて、若井と元貴の事を考える。きっと、ほぼ誰もいないスタジオで好きを話し合っているのかな。愛し合ってるのかな。こんなことを考えていればいつの間にか自分の頬に水がついていた。

雨かと思い空を見上げるも綺麗な空の青と薄紅色の雲が目に入る。こんな天気で雨なんか降っている訳がなく、自分の涙だと察知する。いけないと思ったけど誰も来ないから泣いても別にいいよね。溜め込まない方がいいし、泣きたい時に泣いた方が楽だし。


「んんっ…っはぁっ、、わかいっ…、」


わかい、若井が好き。

さりげない優しさも、かっこいい顔も、少し我儘なところも全部すき。本当に全部だいすき。夢でもいいからここに来てほしい、若井に会いたい….


こんなことを思った途端、屋上のドアがバンッ、と音が鳴るくらいの勢いで開いた。

涙で霞んであんまり見えないから誰かは分からないけど、とりあえず涙を手でゴシゴシと拭った。来たのは若井で、なにか強ばっている顔をしていた。


徐々に近付いてくる若井に俺は咄嗟に来ないで、と言ってしまった。若井は悲しそうな顔をして


「ごめん。でも聞いて欲しい事がある」


聞いて欲しい事ってなに

やだ、聞きたくない。元貴と付き合ったとか、そんなの絶対聞きたくない


「おれ……」


「やだ、いやだ…」


その場で耳を抑えて蹲ると、若井が近付いて俺の背中を摩る。俺が若井の顔を見ると、若井は微笑んで俺の耳にあった手を握った。


「聞いて、俺涼ちゃんの事が好き」


「え…?」


突然の言葉に声が漏れる。咄嗟に立って若井の方を見てしまった。

若井が俺のことを好きなんて、夢みたいだ、いや夢なのかな、と思って自分の頬を抓るとちゃんと痛い。夢じゃない…


「ほ…….んと、?」


「本当。俺と….俺と、

付き合ってくれませんか….?」


若井の言葉に涙が溢れた。嘘だ、本当に夢みたい。泣いてる俺の背中を摩りながら若井がそんなに嫌だった!? と驚きを見せたけど、俺は首を振って


「ちがっ…すきなのっ、嬉しくて…っ!」


「なんだビックリした…俺たち両思いだね

今めっちゃ幸せ…で返事は」


「…おねがいします、」


そう言うと若井は満面の笑みで抱きついてきた。あったかい、落ち着く。

あれ、元貴はどうしたんだろう。俺はハッとして若井から体を離した。すると若井がもうちょっと抱きついてたいんだけど、と呟いた。俺はそれに微笑んでから、若井に話しかけた


「てか、若井って、元貴と付き合ってるんじゃ」


「はい?あの元貴と…?」


「あの元貴って….」


弟みたいな感じだよ、と俺に優しく微笑みかけた。へえ、と相槌を打つと


「…寒いから戻らない?」


沈黙が気まずくなったのか、若井が戻ろうと話した。


「そうだね」


そう言って若井の手を握ると、若井が恋人握りに変えてくれた。

そのまま階段を降りてスタジオに戻ると、チーフがニヤニヤしてこっちを見ていた。一方元貴はというと、ソファに座って黙って若井を見ていた。元貴と目が合うと、


「おかえり、おめでとう2人とも」


そう言ってソファから立ち上がって俺たちの肩に手を置いた。


「ありがとう」


若井と俺の声が揃う。

すると元貴が肩から手を離してもう一度おめでとう、と言った。元貴の表情は悲しそうな顔をして笑っていた。


「よし、付き合ったからお祝いでジュース奢ったげる」


「え、いや、大丈夫だよ」


「いいの。奢らせてよ」


適当に買ってくるねといい元貴はスタジオを出た。

気のせいだろうか、元貴の背中からすすり泣いている声が聞こえたのは。











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久しぶりに更新しました…。すいません

ネタがない。







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