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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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旧時代の堅牢な銀行の金庫室。
分厚い鉄扉で外の狂気から隔離されたそのセーフハウスは、外界を吹き荒れる冷たい夜風も、ルナティックたちの不気味な徘徊音も一切届かない、完全な静寂に満ちていた。
床に置かれた簡易式のLEDランタンが、コンクリートの壁に2人の影を大きく歪んで映し出している。
ピザガイは無言のまま、愛用のショットガンのボルトを滑らかに引き、機関部のメンテナンスを行っていた。
銀髪の隙間から覗く黒い瞳は、国家最暗部の特殊部隊にいた頃と変わらぬ冷徹さで、鉄の部品を一つ一つ見つめている。
「……ん」
背後から、衣擦れの音と共に、思いがけない「質量」が突如として降ってきた。
線の細い、しかし死線を潜り抜けてしなやかに引き締まった身体が、ピザガイの岩のように頑強な背中へと、隙間なくぴったりと押し付けられる。
ぶかぶかの袖から伸びた細い腕が、ピザガイの分厚い胸板を囲むようにして、お腹の前でぎゅっと固く結ばれた。
エリオットだった。
「……おい。何をしている、エリオット」
ピザガイは銃を弄る手を止め、地鳴りのような低い声を絞り出した。
昼間の戦場では、アサルトライフルをペパロニのように正確に掃射し、誰よりも冷徹な笑みで敵の包囲網を切り裂く、前線の特攻隊長。
生存者たちにとっての「頼れる英雄」であるはずの青年が、今、この2人きりの檻の中では、その仮面を跡形もなく剥ぎ取っていた。
エリオットは頭の赤いバイザーを床に放り出し、長い金髪をピザガイの背中にサラサラと擦り付けながら、まるで大きな獣の毛並みに甘える猫のように、何度もその無骨な肩口に顔を埋めた。
「いいじゃん、ピザガイ……。今はオーダーも入ってないし、デリバリーのシフトも休みだよ。……ちょっとだけ、こうさせて」
吐息を混ぜるようにして囁かれる、いつもより高い、掠れた甘い声音。
エリオットの着ている赤い制服シャツは襟元が大きくはだけており、そこから立ち上る硝煙とトマトソース、そして彼自身の生々しく甘やかな体臭が、ピザガイの鼻腔をダイレクトに焦がしていく。
「離れろ。銃の手入れの邪魔だ。お前は……加減というものを知らんのか」
ピザガイはぶっきらぼうに毒づき、引き離そうと身じろぎした。
だが、エリオットはそれを見越していたかのように、さらに細い太ももをピザガイの腰に絡めるようにして、その巨大な背中へと文字通り一体化するようにしがみついた。
「やだ。絶対に離れないよ」
エリオットはクスクスと喉を鳴らし、潤んだ青い瞳を少しだけ上向かせて、ピザガイの横顔を覗き込んだ。
その薄い唇に浮かんでいるのは、誰にも見せたことのない、独占欲と愛おしさに蕩けきった剥き出しの微笑みだった。
「だってさ……ピザガイの身体って、規格外に大きくて、驚くほど温かいんだもん。この背中にこうしているだけで、身体の芯までドロドロに『仕込まれて』いっちゃいそうになる。……こんな特等席、世界の終わりが来たって、他の誰にも譲ってあげない」
「…………っ」
その瞬間、ピザガイの岩のような肉体が、目に見えて硬直した。
いつもならどれほど甘く挑発されても、「うるさい、寝ろ」と力任せにねじ伏せる男が、今夜ばかりは完全に言葉を失っていた。
背中からダイレクトに伝わってくる、エリオットの華奢な肋骨の奥のドク、ドク、ドク、ドクという激しい脈動。
そして、自分の存在のすべてを肯定し、全幅の信頼を寄せて甘えてくる恋人の言葉の熱量。
その破壊力は、ルナティックの放つどんな重火器よりも、不器用な男の理性を内側から激しく乱打した。
薄暗い金庫室の光の中、ピザガイの銀髪の隙間から覗く「耳の付け根」から首筋にかけてが、みるみるうちに沸騰したかのように、ドス黒い赤色へと染まり上がっていく。
顔を背けているためエリオットからは見えないが、男の黒い瞳は激しく泳ぎ、大きな、ザラついた手の甲には、羞恥と湧き上がる愛おしさを堪えるようにピキピキと青筋が浮かんでいた。
完全に形勢は逆転していた。
いつも豪快にエリオットを組み伏せる巨躯のシェフが、背後からの「甘えん坊な金髪」の一撃によって、文字通り耳まで真っ赤にして茹で上がっている。
エリオットは、男の耳が真っ赤に染まっていくのを見逃さなかった。
青い瞳にドロドロとした深い執着と愉悦の光を漲らせ、わざとピザガイの赤くなった耳たぶへと唇を寄せ、小さく歯を立てて甘噛みする。
「あはは……ねえ、ピザガイ。君の耳、僕の特製タバスコを塗ったみたいに真っ赤だよ? ……ピザを作る時以外は、本当に可愛い反応をするんだね」
「……ッ、黙れと言っている……!」
理性の防壁が完全に決壊した。
ピザガイは手にしていたショットガンを床へ無造作に投げ捨てると、凄まじい質量と共に、背後のエリオットを抱え込んだまま床の毛布へと反転した。
「っ、うあ……ッ!?」
今度はエリオットが下になり、コンクリートの床に押し潰される。
上から覆い被さるピザガイの胸板の圧倒的な質量と、尋常ではないレベルで爆発しそうなほど高鳴る心音が、2人の重ね合わせた肋骨を通じてダイレクトに反響し合う。
ピザガイは耳を赤くしたまま、しかしその黒い瞳に飢えた獣のような獰猛な欲情を漲らせ、エリオットの細い両手首を床へとガシリと組み伏せた。
「お前が……俺の火力を上げたんだ、エリオット。……もう、冷めるまで絶対に離さんからな」
「うん……っ、いいよ、ピザガイ……! 君のその熱いトッピングで、僕を、骨の髄まで焦がし尽くして……っ!」
エリオットが蕩けるような微笑みでその太い首筋に脚を絡めた瞬間、2人の赤い制服シャツは激しく擦れ合い、薄暗い金庫室の中に、互いの命を貪り合うための熱気だけが、永遠に反響し続けるのだった。