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夜の街を走る車内。静かなエンジン音だけが二人の間に響いている。
若井は少しハンドルを握る手を緩めて、恐る恐る口を開いた。
「……涼ちゃん、俺のこと、どう思ってる? ……好き?」
涼ちゃんは一瞬、目を伏せた。
頬がほんのり熱くなって、言葉が出ない。
胸の奥がむずむずして、心臓が早くなる。
「……そ、そんなの……」
思わず言いかけて、声が震え、言葉を飲み込む。
口をつぐみ、視線をそらして外の景色を見つめる。
若井はその反応をじっと見つめ、そっと声を続ける。
「無理に答えなくていいけど。……でも、知りたいんだ」そう言ったあと
「好き……..けど若井は元貴と仲良かったから……付き合ってるのかなって」
そうだ。僕が病み始めたのは若井が好きになってからだ。でも普段あまり僕と一緒にいないから。毎晩若井の姿を思い出して、、、少しでも触れさせて欲しい。
だから、好きだって気持ちはあるのに、
素直に言葉にできなかった。
「あの時……どうしていいかわからなかったんだ」
自分にだけわかる小さな後悔が、胸に重く残る。
夜の車内は、街灯の光が少しずつ揺れるだけの静かな空間。
若井はハンドルを握ったまま、深く息を吐いた。
「……涼ちゃん、俺……」
言葉を選びながら、視線をそらさずに続ける。
「……俺は、ずっと……涼ちゃんのことが好きだった」
その一言に、涼ちゃんの胸が跳ねた。
心臓が早くなる。
頭の中は真っ白で、言葉が出てこない。
「……え……」
小さく漏れる声。
「……ずっと、好きだった……」
若井はもう一度だけ、確かめるように言った。
涼ちゃんは目を伏せ、拳を握ったまま息を整える。
「……ごめん、僕……うまく言葉で返せない」
けれど、心の奥では確かに「好き」という想いが大きく膨らんでいる。
「いいんだよ……言葉じゃなくても、伝わってるから」
若井の声には、焦りもなく、ただ真っ直ぐな想いだけがあった。
静かな車内で、二人の心が初めて同じ方向を向いた。
触れなくても、言葉だけで、距離は少しずつ縮まっていく――そんな夜だった。