テラーノベル
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訓練場の地平線。
その向こうから、黒い影が現れた。
巨大な四足獣。
鋭い甲殻に覆われた異形の怪物が、地面を軋ませながら迫ってくる。
その後方には、小型のモンスターたちが群れを成していた。
「……アビス」
誰かの呟きと同時に、訓練場の空気が張り詰める。
隊員たちは一斉に武器を構えた。
「全員、戦闘準備!」
公太も前へ出ようとする。
だが――
「待て」
低い声が響いた。
牧田だった。
彼は前方を見据えたまま言う。
「こいつらは俺たちが相手をする敵じゃない」
周囲がざわつく。
「ですが……!」
「ここは武藤に任せる」
迷いのない言葉だった。
教官でも上官でもない。
一人の戦士として、公太を信じていた。
その言葉を聞いた公太は、静かに息を吐く。
そして拳を握った。
「……しゃあねぇな」
瞬間――
轟ッ!!
赤黒い炎が全身を包み込む。
《ネオコード・灼獄》
灼熱の炎が吹き上がり、周囲の空気を歪ませた。
「来いよ、アビス」
次の瞬間。
モンスターたちが一斉に襲いかかる。
だが――
公太は動じなかった。
地面を蹴る。
炎を纏った拳が最前列のモンスターを捉えた。
ドゴォォッ!!
衝撃と共に巨体が吹き飛ぶ。
続けざまに二体目。
三体目。
公太は止まらない。
「す、すげぇ……」
隊員たちは息を呑んだ。
以前の公太なら違った。
怒りのまま突っ込み、力任せに暴れていただろう。
だが今は違う。
敵を見ている。
動きを読んでいる。
冷静に戦っている。
「……行動パターンがあるな」
敵の動きを分析しながら戦う。
隙を見つける。
最適な一撃を叩き込む。
その姿は、かつての猪突猛進な少年ではなかった。
遠くで見守る牧田が小さく笑う。
「……成長したな」
教官も静かに頷いた。
「ええ」
公太は敵を引き連れながら、訓練場から離れた無人地帯へと誘導する。
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ももは
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仲間を巻き込まないためだ。
それもまた、以前にはなかった判断だった。
「こっちだ!」
炎を纏った拳が唸る。
咆哮が響く。
激戦は数分続いた。
そして――
最後の一体が倒れた。
黒煙を上げながら地面へ沈む。
静寂。
公太は肩で息をしながら立っていた。
勝利だった。
完全勝利だった。
丘の上から見守っていた牧田が、ふっと笑う。
「……もう俺が教えることはなさそうだな」
教官も小さく頷いた。
「そうですね」
公太が戻ると、教官が前へ出る。
そして厳粛な声で告げた。
「武藤公太」
公太は姿勢を正す。
「本日をもって、特別訓練を終了とする」
「……え?」
思わず素の声が漏れる。
だが次の瞬間。
「返事!」
鋭い声が飛んだ。
公太は反射的に背筋を伸ばす。
「は、はいっ!」
その姿に隊員たちが笑う。
だが教官の表情は真剣だった。
そして――
「よくやったな」
その一言に、公太は目を見開いた。
厳しい教官から初めてもらった言葉。
胸の奥が熱くなる。
牧田が隣へやって来て肩を叩いた。
「大切なことが分かったみたいだな」
公太は静かに笑った。
「ああ」
喧嘩ばかりだった日々。
失敗の連続だった訓練。
その全てが無駄ではなかった。
その時だった。
数人の隊員たちが近づいてくる。
かつて公太を馬鹿にしていた先輩たちだった。
彼らは立ち止まる。
そして――
頭を下げた。
「悪かった」
「俺たちも大人げなかった」
公太は少し驚いた。
だがすぐに口を開く。
「俺も悪かった」
その言葉だけで十分だった。
確かな和解がそこにあった。
すると太田が駆け寄ってくる。
「武藤君!」
「太田?」
太田は笑顔を浮かべた。
「君は本当にすごいよ」
照れくさそうに頭を掻く公太。
「そうでもねぇよ」
「俺も負けてられないな」
太田は手を差し出した。
「これからも一緒に戦おう」
「世界を守るために」
公太はその手を強く握る。
「ああ」
「任せろ」
太田は嬉しそうに笑った。
その瞬間――
教官の号令が響く。
「全員、敬礼!」
隊員たちが一斉に姿勢を正す。
そして。
武藤公太へ向けて敬礼した。
公太は目を見開く。
かつて認められなかった自分。
居場所を見つけられなかった自分。
そんな自分へ向けられた敬礼だった。
公太もまた、静かに敬礼を返す。
その瞳に、もう迷いはない。
こうして――
武藤公太の特別訓練は幕を閉じた。
だが、それは終わりではない。
仲間との絆。
新たな強さ。
そして守るべきもの。
その全てを胸に、公太は次なる戦いへ歩み出すのだった。
コメント
1件
うわっ、53話……もうそんなに積み重ねてきたんだね。 今回のエピソード、めちゃくちゃ熱かった……! 特に公太が「怒り任せじゃない冷静な戦い方」になってたところに、本当の成長を感じたよ。 最後の敬礼シーン、涙腺にきた。認められてなかったあの頃の自分が報われた感じがして、胸が熱くなった。 たけっちさん、公太の成長をこんなに丁寧に描いてくれてありがとう。次も楽しみにしてるね。