騎恋「ッ…!!…、、、??」
おわっ、、、、た、??
叫びは止んだ。どうやら検査は終わったようだ。
膝を丸めた状態から迎えに行こうと立ち上がったが、よく磨かれたタイルに自身の酷い顔が写っていて、辞めた。
汗だくで不安気な、威厳ある顔つきではなかった。
制服のポケットからハンカチを取り出して、、、
…この汗をどうにかするには、ハンカチではとてもじゃないが足りなかった。
仕方なくインナーのシャツで拭う事にした。
胸元のポケットから手鏡を取り出して、笑顔の練習。
…よし、大丈夫。
意を決して分厚い扉を開いた時…
モブ「桃源副隊長ッ゛゛!!!!」
ッ!
騎恋「、ぇ、なに、?どしたの???笑」
俺が扉から一歩踏み出すと同時に、医療班の子が血相変えて飛び出してきた。
モブ「大変です!!大変なんですっ!!!!(汗)」
そのまま半ば引きずられる様にトイレへ連れ込まれ、一つの個室の前に来た。
モブ「こん中に新入りが居て、、っ!!でも、鍵掛かってて俺じゃ開けらんなくてっ!!!」
何があったか検討も付かないが、微かに香る血の香りと、入り口付近に落ちていた薄藍色のハンカチ。
恐らくまろのだ。
騎恋「…報告ありがと、危ないから、ちょっと下がってて。」
ポケットから飴玉を取り出し、舐める時間は無いのでガリッと噛み砕く。
この場合は、、、、
集中して選び抜いた能力は‘‘酸液分泌’’高濃度の塩酸を指先から分泌する能力だ。人の皮膚には効果を及ぼさないので、戦闘向きじゃない。
てか、コレ服だけ溶かす的なエロ同人誌みたいな事出来るんじゃ…
って思った皆さん!!その通り!!この能力は性犯罪者さんから貰った(奪った)能力だよ!!
強力な分負担も大きい。飴玉一つで体力が持つか…、、。
ジュワァァァア…
騎恋「…よし、、」
トイレの戸がゆっくりと溶けていく。
経済管理の子達には申し訳ないけど…緊急だからしょうがないよね。
大体マンホールくらいの大きさの穴が開いて、力無く項垂れたまろの長い足が目に入る。
騎恋「ッ、まろ!!!!まろぉ!!」
堪らず駆け出しまろを個室から引きずり出す。
頬をペチペチと叩いてみるが反応はなし。揺さぶっても青白い顔にうす青みがかったまつげが少し揺れるだけ。
シャツが赤い、出血…はしてないみたいだ。
…と言うか、見渡す限り無傷だ。
モブ「…栄養失調、??」
彼が倒れていた個室の便座を覗きこむと、恐らく…というか絶対、まろが吐いたであろう嘔吐物が残ったままだった。
モブ君も動揺している。それもその筈、今までにまろの様な体質の患者には出会った事が無いだろうから。
このままじゃ不味い…!!
そう思った俺は、念のために常備している小型のナイフでまろの手首を少し切った。
ピッ、と音が鳴って少量の血飛沫が飛ぶ。
モブ「ちょっ、、、なにして…!?」
申し訳ないが、説明している時間はない。
騎恋「ねぇ君。医療班だよね、ビタミン剤持ってる??」
モブ「え、あっ、はい!!!ぇっと…ビタミン、、ビタミン、、、」
嘔吐が酷く失神しているのならばまず間違いなく栄養不足だ。
モブ君が制服の内ポケットから取り出したエピペン型のビタミン剤をまろの太ももに打ち込む。
…不味い。手首の傷が塞がってきてる。
死ぬ…、、のか、???
威風「ぁ゛、ん゛ん、、???」
動いて…
傷を残したままという事は、
彼はまだ、‘‘死んでいない’’!
…なんや、、痛いし、気持ち悪いし、…気分サイアクや、、、。
気がつくとそこは橋の様な場所で、俺から見て前は真っ暗。後ろはピカピカ。
手すりを持って橋の下を見れば、サラサラと美しい川が流れている。
…三途の川、ってやつ?
なんやねん今更…今までずっと容赦無く真っ黒やったやろ、
、、いや、意識無いだけで渡っとったかもしらんけど、。
威風「あのぉ!俺普通に目ェ覚ましたいんやけどぉ!!これって後ろ戻ってもええやつかなぁ!!?」
ダメ元で交渉(誰にやねん)する為、この何処かわからない場所で声を張ってみるがー、、
、、、
返事はない。
代わりに、追い風に強風が吹いた。
「前に進め」と言う意味だろう。
威風「チッ、…はぁぁあああああーーー……、、、」
はいはい分かりました。大人しく死にゃあええんやろ大人しく!
てか死後の世界ってなんかもっとあったかくて良い場所じゃないん!?天国とか!
…
あは、、、、
俺には無理か、、笑、、。
~~~だし!笑。
さ!!暗闇への片道切符!じゃあなクソ川!!青凪威風はもう二度と此処にはきません!!
ー×きません!ー
ー○来たくありません。ー
威風「よし、」
覚悟を決めて暗闇へと一歩足を進めようとしたその時…
ひゅんっ!!
威風「ぉ、」
何か…ツタの様な物で足首を捕まれたような感覚がした。
威風「ぇ、なに?笑💦」
ぎゅっ
結びが強くなった。
ぐっぐっ、と微弱ながらも後ろ向きに引っ張られている気がする。
…
助走、、、を、とっている、、、??
ぇまってまってまって
…ぐ、
威風「まっtー!!」
ぐいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいいいいいい!!!!!
威風「ですよねぇぇぇええええええええええええええ!!!!!!(涙)」
嫌な予感がしたが案の定後ろに思いっきり引っ張られた。
半ば引きずる様な形で明るい方へ進んでいく。
て言うかもう浮いてる。五センチくらい浮いてる!!!
いや俺フリーフォールとかこーゆー系むりやねん!!!
威風「ぅぉおおおおおおおおおおおお!!、、、、?、、ぉお??」
あれ?イケる??
スピードや運びかたは全然優しくない癖に、なんだか暖かい気持ちになる。
今まで無音だった身体からドクドクと心臓の鼓動が聞こえる。
それに気付いた瞬間、ふわりと身体が宙に舞った。
その時、もう大丈夫だとでも言うように、ツタは光の方を指した。
威風「な゛ぃ…こ???」
起きた…!!!
ってまだ安心するには早い!!!
俺はまろの手首を急いで掴み、傷を確認した。
威風「ッ゛!!」
塞ぎかかってはいたものの、ちゃんと残っているし、まろは痛みに顔を歪ませた。
騎恋「よかった…、、、」
ごく小さな、絞り出す様な声だったけど、まろには聞こえたみたいだ。
威風「なぁにが「よかったぁ…」やねん!!人の傷開いておいて!!」
何やら文句を言っているが聞き取れない。
今はただ、ただ彼が生きている事が嬉しくて、
威風「おーい聞いとんのか???何嬉しそうに人の血眺めとんねん。サイコか???」
ガバッ!!!
威風「ぅおっ!?!?」
騎恋「…た、ッ!、、、。よかったッ…、、、、、まろぉっ…!!!(涙)」
威風「あぁ?…、ないこ、?」
場所は便所やし、腕は痛いし、大の大人がまるで子供みたいに泣きじゃくっとるし、なんやねん…。
でもま、
威風「心配掛けたな。ごめん。」
騎恋「馬鹿…、、っ、ばかぁ!!!」
うりうりと頭を押し付けられて少し痛いけど、ピンクで丸っこい頭の撫で心地はまあまあ良いし、暇潰しに今はこうさせてやる事にした。
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