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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「そっ。ならとりあえず今日は帰るよ。また出直す」

「ちょっ、しつこいヤツだな・・!」

「もういいよ樹・・」


引き下がらない涼さんに食って掛かろうとする樹を止める。

不思議と自分の気持ちに気付いてしまうと、自然に”樹”と呼んでる自分も存在し始める。

今なら彼女のフリをして名前も自然に呼べるから。


「美咲ちゃん。お会計してくれる?」

「あっ、ハイ・・」


とりあえずそのまま涼さんはお会計をして店を出て行った。


「ビックリした」


抑えつけていた手を放して樹に声をかける。


「何が?」

「いきなり現れてあんなこと言うから」

「こっちこそビックリしたんだけど。 目の前で口説かれてて」

「口説かれてなんか・・」

「同じようなもんでしょ。あの人絶対透子に未練あって何か言おうとしてた」


なんとなく、私もそんな気はしたけど・・・。


「うん・・・。でも私はもう戻る気ないから」

「当然。今透子はオレのモノなんだから。誰にも渡す気ないし」


また・・さっきの続きで話して・・。


「それ。もういいよ。あの人今もういないから」

「あの人?」

「え?涼、さん・・」

「涼さん・・ね。やっぱ嫌だわオレ」

「えっ? 何が?」

「オレ以外の男の存在が透子の中にいるのも、そうやって名前呼ぶのも」

「へっ? って言ってももう今では私は何とも思ってないし・・・。さっきもたまたまで・・・」

「正直言うとさ。オレの前でも、オレのいないところでも、透子が他の男といるのもすげぇ嫌」


なんで、そんな彼氏みたいなキュンとすること言うのさ・・。


「何、彼氏みたいなこと言ってんの・・。あっ、ありがとね。彼氏のフリしてくれて」


今回は樹が助けてくれたおかげで助かった。

だけど、例え彼氏のフリでも、そんな彼氏みたいなこと言われてドキドキしながらも切なくて。


「フリ? ・・何それ。 オレは付き合ってるつもりだけど。だから彼氏としてそのまま思ってること伝えただけ」


すると、平然となんの躊躇いもなく伝えてくる真逆のその言葉。

だけど、なぜかいつもみたいに冗談には思えなくて。


「透子は違うの?」


その言い方も眼差しもやっぱり真剣で。


「だってそんなこと一言も・・・。本気にさせ合うだけって・・・」


わかんないよ。あんなんじゃ。


「キスもして、本気にさせ合うだけって、オレそんないい加減じゃないし。そこまでの話になったら付き合って当然でしょ?」

「ちょっ、聞こえる・・!」


美咲にまだ話してないから、そんな露骨にキスなんて言わないでほしいのに。


「なんで?キスしたこと?オレは誰に聞かれてもいいし逆に聞かせて他の男近づけさせたくないくらいだけど。オレのモノだから手を出すなって」


なんで急にそんな自信満々に戸惑いもなくそんな言葉。

だけどその堂々と言うストレートな言葉に胸のトキメキも止まらない。


「信・・じていいの?」


まだ彼のホントの気持ちがわからなくて、自分の気持ちも曖昧で、正直自分でそうだと認識するには後押しが必要で。


「当たり前じゃん。逆になんで信じないのかがオレはわかんないけど」


明確なそういう言葉がないと、この曖昧な関係は曖昧でしかなくて。

だから自分の気持ちも好きなのかどうかも、自分でわからないほどに曖昧で。

だけど。多分。

この人のこの頼もしい言葉と躊躇ない態度で、私の気持ちも少しずつ素直になっていけて。

そして、そんな自分の気持ちにどんどん自分で気付き始めている。


例えこの人に他に想ってた人がいたとしても、自分に自信がなかったとしても。

今この人は私を受け止めようとしてくれていて、好きになろうとしてくれてるのかもしれない。

全部難しいこと取っ払えば、きっと私はこの人のその言葉が嬉しくて。

そして多分私は、この人が好きだ。


だから、涼さんに聞かれた時。

なんの躊躇もなく好きだという言葉が出て来たのだと思う。

だから、今はもう何も考えずこの人を好きになっていこう。

目の前にいるこの人をこの人の言葉を信じてみよう。


「ホント信じて大丈夫だから」


すると、私の様子がわかったのか、優しく微笑んで私を安心させてくれるように伝えてくれた。


「わかった。信じる」

「よろしい」


こんな風に二人でいると、彼が大人に感じて、たまにどっちが年上なのかがわからなくなる。

だけど、きっとそんなところがまた頼りがいあって、この人といることが心地いいのかもしれない。


「ちゃんと樹って呼べたのもよく出来ました」


ほら。

またこうやって子ども扱いする。


私の方が随分年上なはずなのに、この人は抵抗もなく、こうやって私の心にもスッと自然に入り込んできた。

全然年齢差も気にしてないかのように接してくれる。

きっとこの人のそういうところも好きになってしまう理由の一つなんだと思う。



本気になってはいけない恋

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