テラーノベル
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——実は少し前、ひよりの理性は限界ギリギリだった。
三月の激務。それが大きな引き金となった。私は、ストレスが溜まったり、寝不足が続いたりすると、その反動で「性欲」が暴走するタイプだ。
いつもならジムで筋トレして発散させているが、ここ二週間はジムに行く暇すらなかった。つまり今の私は、リミッターが外れかけた「飢えた野獣」の状態なのだ。
そんな状態で、目の前には、熱で弱りきった無防備な彼氏がいる。
(あ、陽一さん……うなされてる……ハアハア言ってる……)
苦しげな呼吸音。熱で上気した頬。汗で額に張り付いた前髪。なにより——パジャマの襟元から覗く、じわりと汗ばんだ鎖骨と、喉仏。
「……っ」
ゴクリ、と喉が鳴った。看病しなきゃ。頭では分かっている。でも、本能が叫ぶのだ。『弱っているオスほど、簡単に落ちる(食べられる)』と。
「……心配だけど、かわいい……」
私は吸い寄せられるように、そっと陽一さんの頬に触れた。熱い。
指の腹から伝わるその熱は、私の理性を甘く、深く溶かしていくようだった。 無防備な寝顔。今の彼なら、私がどんな悪いことをしても、抗う術を持たない。
「今なら……ちょっとくらい襲っても、夢だと思って……」
顔が、自然と彼の首筋へと近づいていく。その汗を舐め取りたい衝動に駆られる。理性の堤防は決壊寸前だ。
(——いや待て私!!)
脳内の天使がストップをかけた。相手は38度の熱がある病人。看病しに来たのに、襲ってトドメを刺してどうする!それは愛じゃなくて犯罪だ!
「……ふーっ」
私は深呼吸をして息を整え、全力で理性を総動員した。変なことを考えるなんて絶対ダメ。今の私はナイチンゲール。慈愛の天使。
「……ごめんね、陽一さん。邪な目で見て」
私はタオルを絞り、彼の額と魅惑的すぎる首筋の汗をササッと拭いた。そして、封印のお札を貼るような気持ちで、額に冷えピタを貼り付けたのだった。
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