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帰りの電車。揺れに任せて泣いた。
「痛い」とも「怖い」とも言えず、ただ目を閉じて、終点を待った。
彼が近づくたびに、身体が後ずさった。
だけど、止まることも、逃げることも、もうできなかった。
そして、無言のキス。
彼の口づけには何の温度もなかった。
そのとき初めて気づいた。
私は、彼によってもう焼かれていたのだ。
表面は固まり、内側は乾いて、ひび割れ、そこにカビが繁殖していた。
でも、それすらも彼は気にしなかった。
「またね」
彼の最後の言葉。
そして、彼女の最初の別れ。