TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する




〓〓〓〓〓〓〓あらすじ〓〓〓〓〓〓〓

この世界で死ぬと、精錬された魂は上位者の元へと向かう。この地球がある宇宙は、上位者に管理された世界なのだ。

その上位者の世界も、さらに上の上位者が管理している。

この宇宙は、無限に続く上位者が管理する、末端の世界だったのだ。

そんな世界では、その生により精錬されなかった魂は行き場を見失う。

行き場を失った魂は、同位格の別の上位者が管理する、別の世界へと転生することになる。

それは、神が行う慈悲深いモノでも、閻魔が行う断罪というモノでもない。

ただ機械的に弾かれた魂が、機械的に選ばれた世界へと向かうのである。

それは人が流れ作業を行うことと、どこか似ている作業であった。


そんな上位者による流れ作業という名の選別で、今日も弾かれた魂が別の世界へと向かっていく。

特に選ばれたわけでも、優れた能力があるわけでもない魂は、一体どんな生を送るのか。

地球でありふれた日常が造った怪物が、別の世界で目を覚ました。


〓〓〓〓〓あらすじはここまで〓〓〓〓〓





「うわぁぁあ」

ギャリンッザシュッ


静かなはずの街道に、男の悲鳴と争いの音が木霊した。

争っているのは商人の護衛。悲鳴を上げたのは馬車を操っている商人その人である。

「何でこんな所に灰色熊が出るんだよっ!」

「口を動かさずに手を動かせっ!」

灰色熊と呼ばれた魔物は、その腕の一振りで木々を薙ぎ倒す。

護衛の魔物狩りの年齢は若く、その線も細い。とても熊を倒せるとは思えない風貌だ。

「ぐぎゃっ!?」

灰色熊の剛腕をその身で受けた魔物狩りが、臓物を撒き散らしながら吹き飛んでいく。

それを見た商人は何とか馬車を動かそうと試みるが、馬が怯えて言うことを聞かない。

「や、やめ…」

商人にとって最後の砦。つまりは最後の魔物狩りの少年。その幻想の砦は呆気なく崩さっていった。


殆どの魔物はその習性上、生きている者に襲いかかる。

ここで生きているのは、商人とその商人が操る馬のみ。

「た、たすけて…」

灰色熊は商人に向かい、ゆっくりと近づく。

商人がその間合いに入ると、熊はゆっくりと立ち上がり、その巨大な両腕を天高く掲げ、絶命した。

「は…い?」

プシャーーッ

灰色熊の首は地面に転げ落ち、落ちたのと同時に熊の残された体から噴き出た血が、商人に降りかかる。

獣の臭い血を浴びているにも関わらず、商人は惚ける。

「ど、どうして…?生きてる?」

ドーンッ

けたたましい音を立て、熊がその巨大な身体を地面に放った。

そして、それまでその巨大に隠れていたモノが、商人の視界に入る。

「だ、だれ?」

男は銀…いや、燻んだ灰色のボサボサ髪をしており、小柄ではないが大柄でもない。少年でもなく、青年でもない。

酷く特徴のない男が悠然と立っていた。

唯一の特徴は、その黒い瞳に何の感情も現れていないことだろうか。

「その格好は…魔物狩りか?そうだな!?」

商人は歓喜する。この様な魔物が出た街道で、何の力も持たない自分一人が、無事に街まで辿り着けるなどとは考えていなかったからだ。

そこに救世主が現れた。

この世界での行商人の身分は高くはない。もちろん低くもないが。

そんな行商人でも魔物狩りよりは、世間の評価は圧倒的に高い。

魔物狩りは身体を張るしか能のない者がなる職業といわれており、実際に軍人や騎士になれなかった者達が行き着く場所でもあった。

軍人や騎士、兵士は馬鹿にはなれないのだ。

そんな魔物狩りの男に、商人は強気に出る。

「か、金は払うぞ!相場の三倍払おう!街まで護衛しろ!」

元々商人には護衛が三人付いていた。死んだ魔物狩りに払うものなどなく、それをそのまま男に払うと言っているのだ。

「ど、どうした?!なにをしている!?」

商人がいくら呼びかけようとも、その男は反応を示さない。

商人を無視した男は倒れた熊に近寄り、腰からナイフを抜き、熊の胸にナイフを突き立てた。

手際よく胸から魔石と呼ばれる物を剥ぎ取る。

魔石とは魔物が体内に保有しているものであり、様々な材料、燃料として使用できる為、物によっては高額で取引されることもある代物。

その魔石を熊から抜き取り、天に翳すと、男は舌打ちをした。

「おい!どうした!返事をしろ!行くぞ!」

尚も商人は男に命じる。

「ぅ…ぇ…な」

「ん?なんだ?金か?」


商人の命は散った。









「この依頼を受ける」

灰色の髪を無造作に伸ばした男が、愛想無く受付に伝える。

ここは魔物狩り組合。

様々な依頼を魔物狩りに仲介する組織だ。

男はカウンターに、依頼が書かれた羊皮紙と銀色のプレートを置いた。

「はい。シルバーランクのレインさんですね。受理しました」

その言葉を聞くと、男は無言で組合を後にした。


「何アイツ…キモ」

「普通は一言二言交わすよね」

ありがとう。こんにちは。さようなら。

この世界でも、挨拶は基本だ。

「アイツなんの依頼を受けたのよ?」

「えっと…灰色熊の討伐だって。凄いね」

受付嬢達の世間話は続いていく。






「…ぃた」

レインと呼ばれた男が街を出て二時間。街道をひたすら進むと、目的である魔物を見つけた。

魔物はどうやら荷馬車を襲っている様だ。

どんな生き物であれ、何かに夢中になっている時は隙が多い。

灰色熊は極上の餌にありつく為に必死になっている。


一人また一人と死んでいく様を、レインは感情の籠っていない瞳で見つめる。

そして、最後の一人。灰色熊が勝ちを確信し、一番油断しているところを背後から一閃。

長さ二メートル厚み数センチ、重さ50キロはある長剣を、まるでペンのように軽く扱ったレイン。

その刃は熊の首を、豆腐を切るかのように無抵抗で通り過ぎた。



レインが討伐証明部位と魔石を剥ぎ取っていると、頭上から男の声が邪魔をする。

感情を揺るがさないレインが、唯一揺らぐモノ。それは自分の邪魔をするというもの。それでさえ、対して揺らがないが。


剥ぎ取りを終え、商人の方を向いたレイン。

「おい!どうした!返事をしろ!」

「うるせぇな」

「ん?なんだ?金か?」

レインは商人に向け、手に持つナイフを投げつけた。

ビュンッ

ナイフは風を切り裂き、商人の首を貫通し、何処かへと飛んでいってしまう。

生き絶えた商人は馭者席から転げ落ち、地面を赤く染めた。

日常が造った怪物

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

18

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚