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「はぁー、なんか気分変わっちゃった」
そう言ったあと、わざとらしくミコ棒を覗き込むふりをすると、尊さんが「朱里さんのエッチ!」と某国民的漫画の女の子のセリフを真似する。
「んひひひひひ」
私はひとしきり笑ったあと、尊さんの手を握って言った。
「じゃあ……、来週……、道場破りしますからね」
「ははっ、道場破りかよ。一晩耐久セックスするなら、受けて立つけど?」
「……なんだっけ、エマネグラ?」
「おま……っ、それ、アレだろ。尿道に入れる奴。すげぇの知ってるな」
「いやぁ、恵と二人でネットにある体験レポ漫画とか読んでまして。……っていうか、バレた。やばい恥ずかしい。精力剤のなんだっけ?」
「バイアグラだろ。ED治療薬な」
エッチなものに興味津々だとバレてしまい、私は赤面して大人しくなる。
「どうせここまで『やるぞ』ってなってるなら、朱里にもセクシーランジェリー着てほしいな。あそこにパールがついてる奴とか」
「ええっ? 攻めますね?」
そういうランジェリーがあるのは知っているので、私は自分がオープンクロッチショーツとかを着けている姿を想像して「おぉう……」と声を漏らす。
「ま、そろそろ味変しても、いいんじゃないか? まだ全然マンネリはしてないけど、たまに変わった事をすると、刺激があっていいと思う。道具を使うとか」
「……味変は大事ですけど……」
私は通販サイトで見た、エッチな道具の数々を思い出し、両頬に手を当てる。
「せっかくだから、楽しもうぜ」
ポンポンと背中を叩かれ、私は溜め息をついて彼を見る。
「尊さんって、結構オープンスケベですよね。むっつりかと思ってましたけど」
「……どっちかというと、むっつりの方だと思うけど、パートナーを相手にする時は、ちゃんと意見をすりあわさないと駄目だろ。俺がやりたいと思っても、朱里がNGだったら悲惨な事になる。恥ずかしいの分かるけど、朱里もNGがあったら教えてくれ」
「……ス、スカトロ……」
「やんねぇって! 結構エロの知識がヘビーだな!?」
「エッチな漫画とか読むと、色んな性癖ドラゴンがいて、日々学びになります」
「そういうトコだけ勤勉にならなくていいって」
「ん? 俺色に染めたいミコですか?」
「こら、減らず口を叩く口は、この口か!」
尊さんはそう言うと、私にちゅーっ、とキスをしてくる。
「んふふふふふ」
「……そろそろ出るか。逆上せる」
「はい」
私たちはバスルームから出たあとに体を拭き、あえてアメニティではなく、いつものフェイスケア、ボディケア用品で整えていく。
(恵は今頃どうしてるかな。満を持してハラペコ狼にパクリされてても、おかしくないけど……)
親友に思いを馳せた私は、上からドッタンバッタン聞こえても、聞こえなかったふりをしようと決めたのだった。
**
「???」
部屋に戻ったあと、涼さんは私――中村恵の浴衣を脱がせ、「肌襦袢を脱いだら持ってきて。畳むから」と言って、自分は別の場所で浴衣からルームウェアに着替え始めた。
そして「汗掻いてるだろうから、お風呂入っておいで」と言われ、ありがたく汗を流している途中、乱入してくるものと思っていたけれど彼は来ず、ホカホカになった私が「お先にいただきました」と言うと、「俺も入ってくるね」と一人でバスルームに向かった。
それから飲み物を飲んでクールダウンしたあと、「じゃあ、明日も予定があるから寝ようか」と、二人でベッドに入っての今だ。
――これでいいの?
豪華なお食事に高級ホテル、お座敷体験までさせてもらって、特等席で花火を見させてもらった。
高級映画館も体験したし、アクセサリーも買ってもらったし。
それならこの身を差しだすしかないと思っていたのに、涼さんは何もせずに寝ようとしている。
(そりゃあ、確かに『お金を出したから、〝抱かせろ〟って言う男だと思わないでほしい』とは言っていたけど……)
それにしても、こんなに何もないと逆に不安になってしまう。
しかも涼さんは私に背中を向けて寝ていて、なんだか寂しい。
モソリと身じろぎした私は、躊躇しながらも、そっと彼の背中に手を当ててみる。