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そして次の日、1本の電話が家にかかってきた。榎煉に、病気が見つかったらしい。
「…冗談じゃないの?」
一方的にやられるだけの喧嘩をした日の夜、榎煉の体調が悪くなったらしい。そして、検査をしたところ。
「白血病…、」
『芽依ちゃん、学校が終わったら○✕病院の417号室に来て。』
「…うん。」
学校に行く前の朝8時、突然電話で伝えられたこと。白血病は高校生までがなる病気。榎煉はまだ成人していないから生存率は約70%とかなり高い。けど、残りの30%は。
「じゃあ、行ってきます。」
悲しいムードが私の周りを囲んでいく。もしも榎煉がいなくなったら?私は一人になってしまう。それに、榎煉は、榎煉は…。
「芽依!おっはよー!」
「…。」
私は、折角榎煉とカレカノになれたのに。
「芽依?聞こえてる?」
大事な人がこの世界から消えちゃったら、私はきっと生きるのが辛くなる。
「芽依…?」
「私っ、ほんとに、どうしたら…?」
「本当にどうしたの?」
自然と涙が溢れてきた。通学中に突然なくものだから通行人や友達が慰めたりしてくれた。どうして泣いているのかまでは聞いてこなかったからよかった。
「鈴木さん,どうしたの?」
「…。」
教室に着いたころにはもう声を出すのもつらくなっていた。きっと,この今の私を榎煉がみたら「俺はまだ死んでないぞ。」とかいうんだろうけど,その言葉さえもしんどい。
そして一時間目が始まる前,私に用があると言って保健室の先生が訪ねてきた。
「芽依ちゃん,今日の学校が嫌なら,今すぐに黒川の元へ行ってあげて。」
「…はい。」
今日はさぼろう。きっと,いつものように授業を受けても内容が入らないと思うから。
「芽依!?」
「鈴木は休みだって言っておいて!」
そして,私は病院に向かった。
「榎煉…。」
「よっ。」
病院の食事を食べている榎煉がそこにいた。
「なんで,言ってくれなかったの。」
「なんでって,俺だって重大な病気って知ったのは昨日なんだから。」
「…。」
何も言えない。
「いや,俺さ,このあざ,喧嘩で付いたものだと思ってたんだよ。検査したら違ったっぽい。」
「白血病の症状だよ。昨日,めまいがして倒れたって本当?」
「うん。」
榎煉が元気で良かった。このまま,抗がん剤治療を進めていけば榎煉は助かる。
まずいなと言いながらもおいしそうに食べる榎煉の笑顔は可愛いままだ。昔も,今も変わらない。
「治療は,いつ終わるの?」
そのことを聞くと榎煉は黙った。
「どうしたの。」
「俺,治療受けないんだ。」
私はなぜか何も思わなかった。