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『赤い夜がやってきました。防衛者を雇ってください。【赤い騎士ジャネット 100ラリ】【青い剣士ジャン 100ラリ】【緑の狼 ルドラ 100ラリ】』
みんなを見送って朝食を食べていると声が聞こえてくる。毎日朝になると住人からの税金が入る。今日、40人になったので400ラリが入った。これで3人を雇う。
心なしかみんな嬉しそうな表情に見える。
「ご機嫌だねムラタ。宴は楽しかったのかい?」
微笑んで食事をしているとルルさんがそんなことを言ってくる。僕は笑顔で答える。
僕は生き返れたんだ……。本当に死んで生き返った。それを喜んでくれる仲間がいる。それが何よりもうれしい。
『赤い夜に勝利しました。報酬が得られます』
「早い……。急いでくれたのかな?」
報酬は【4000ラリ】と【魔法書】。
魔法書……そういえば、トネリコの杖も手に入ったんだっけ。コボルトの死骸を運んでいた時に拾っておいたんだよな。ギルドで寝てしまったけど、ルーザーさん達は回収してくれてたみたいで自室にあった。
「魔法書か」
目の前に置かれる赤い夜の報酬。ペラペラと魔法書をめくる。
『魔法を使うには魔力の操作が必要になる。自分の属性を知り、その属性をあらゆる形にして使うことが出来る。撃ちだすことも出来るが高度な技術になる』
「教科書かな」
魔法書というのは教科書のような物みたいだ。初めて魔法を使う人のための物といった感じか。一応取っておこう。
『村のレベルが上がりました』
「あ、そういえば40人になってたんだよな」
村のレベルが上がった。これで4レベルだ。何か変化はあったのかな?
特に変わった様子はないな。
『村民からお願いがあります』
「お!? イカルスかな?」
『マスターのための装備を作りました。受け取ってください』
「え?」
僕が驚いていると目の前に鉄の小手が置かれる。
「イカルスだよね。僕はもらえるの?」
みんなには何もあげられなくて僕はもらえる。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ほんと何かできることはないかな。
「僕からのお願いはできないのかな」
自室に戻ってきて魔法書を置くとベッドに座って呟く。いつもこっちがしてもらってばかりだ。不公平だよ。僕にも何かさせてほしい。
「ルーザーさんやエクスにもやってもらってばかり。せめてジャネット達には何かしてあげたい」
とりあえず、みんなを呼ぼうかな。無事に復活したことを知らせてあげたい。
「マスター!」
「ワンワン!」
「うわっ!?」
ジャネット達を呼び出す。するとジャネットが押し倒してきて抱きしめる。ルドラは顔を舐めてきた。
「ご無事で! よかった!」
「ははは、ご心配をおかけしました」
心配するジャネットは泣き出してしまう。
感情の起伏の少ない子だと思っていたけど、そんなことはない。僕なんかの為に泣ける子なんだよな。
「ほんと良かったです。マスター」
「ジャンも心配かけたね」
「ワンワン!」
「ああ、ルドラも心配してくれてありがとう」
ジャンが涙を拭って声をかけてくれる。彼もお姉さんと同じで優しい子だ。
魔法はダメだと言っていたのに、僕がやられて魔法を使って仇を取ろうとしてくれた。ルドラもそうだ。必死に戦ってくれてた。僕は恵まれてる。こんなに優しい仲間に囲まれて。
「あ! マスター。レベルが4になって新たに仲間が生まれました。名前は”ルーン”です。光属性の」
「え!? ”ルーン”?」
ジャネットの声に僕は驚愕する。新たな仲間の名前が夢の魔法使いの少女の名で驚いてしまう。
たまたまか……それとも、夢はその影響?
「呼び出してみるか」
僕はそう呟いてルーンを呼び出す。
【金色の魔法使い ルーン】、彼女は輝いて僕らの前に現れた。
「マスターお初にお目にかかります。金色の魔法使いルーンと申します」
「……」
自己紹介をして深くお辞儀をしてくるルーン。夢のあの子そのものだ。服装までそのまま……。
「どうされましたか?」
無言で考え込んでいると疑問に思ったのか聞いてくるルーン。ジャネット達も首を傾げてる。
「君は何も覚えてないのかな?」
「え? 覚えているか? と言われましても。今生まれたばかりで」
「そう……」
僕はこれ以上何かを言うことはしなかった。あの夢のことが本当なら、妹さんのルナちゃんがいるはずだからね。
それを思い出して悲しませるよりは隠しておいた方がいい。妹の為に死を選んだ凄いお姉さん……。
でも、これで少し分かった気がする。ルーザーさんの弟さんとジャンの関係だ。
「どうしたんですかマスター?」
「あ、えっと。何でもないよジャン」
ルーンからジャンへと視線を移すと彼は驚いて首を傾げる。考えていたら彼を凝視してしまった。
ジャンはルーザーさんの弟さんのルティに似てる。ルーザーさんが瓜二つというくらい似ている。
それはルーンも一緒……。ということは僕のこの村スキルは死んだ人を取り込んでいる可能性が出てきた。
防衛者は強い人なら入ってくるのか? まだまだ分からないことばかりだ。でも、確かなことは僕の中に彼ら彼女らの記憶が入ってくるってことだ。夢で彼らの話が見れる……。もしかしたら彼らへの恩はそれで返せるかもしれない。
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